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本編
第014話 お金の管理はしっかりと(血涙)①
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「うん? これは……どうやらツグナ。お前宛のようだぞ?」
リビングに設置された大人数用の木製テーブルの端。そこにさりげなく置かれた白い封筒の存在に気づいたリリアが、表に記載された宛名を確認すると、スッとツグナの前に差し出して手渡す。
「うん? 俺宛の手紙? もしかして……」
なんとなくではあるが、この封書の差出人に予想がついたツグナは、彼女から渡された封筒の口を切って中に入っていた手紙を徐に引き抜く。
そして、封筒から引き抜いた手紙を開くと、その差出人はツグナの予想通りの人物からのものであった。彼は内心「やっぱりか……」と思いつつも、その手紙に記された内容に目を通していく。
『――やぁ。この手紙を読んでいるということは、無事に目的地に着いたようだね。とりあえずは問題無さそうで一安心だよ。うん、ホントに。まぁ失敗してたら次元と次元の隙間に閉じ込められて、二度と戻っては来られないんだけどね!
さて、話を本筋に戻そう。既に分かってるとは思うけど、この手紙のある家がここでのキミたちの拠点となる。必要な家具や家電、その他の道具類は一通り揃えているはずだから念のため確認しておいてね。なお、食材は対象外なのであしからず。
併せて、もう気付いていると思うけど、ここに来る際に潜った門を起点に、キミたちの容姿及び年齢は変わっているはずだ。前もってステータスが減少することは説明しているけれど、その幅については個人差がある。もし気になるようであればその目で視てあげてね! 『異界の鑑定眼』は嘘をつかないから。
あと、これからキミたちが通うことになる学校についてだけれど、既に手続きは完了しているよ。キリよく1カ月後の4/7が登校開始日となるように調整しておいたから、よろしくね。通う先の学校については、別の紙に記してあるから、そちらを確認のこと。こっちにおけるキミの仲間の「経歴」も事前に話し合った内容を記載しているので、間違いがないか目を通しておいてね。
最後に。これから新しい環境で、新たなスタートを切ることになるけれど、いつも見守っているから。ではでは、月イチの報告を楽しみに待ってるよ。 誰も見ていなくてもソツのない仕事をする神様・ディエヴスより』
(……って、オイ。やっぱり、失敗する可能性があったのかよ! しかも失敗したら戻ることもできないってリスク高過ぎるだろ……神様だろうが何だろうが、仕事をするなら「ホウ・レン・ソウ」は基本じゃないのかよあんニャロウ……)
ディエヴスからの手紙を読み終えたツグナは、当人がその場にいたら小一時間ほど膝を突き合わせて問い詰めたい思いに駆られつつも、それをぐっと抑え込んで続く2枚目以降に目を移す。そこにはこれから通うこととなる学校名とその場所を記した地図やリリアたち仲間の地球での経歴などが併せて記載されていた。
「ふぅん……通う学校はそれほど離れてはいないみたいだな」
ツグナは手紙と併せて記載されていた地図を確認し、大まかな位置を把握する。電車と徒歩でおよそ4,50分ぐらいかかるらしく、「学校が始まるみんなで電車の乗り方教えとく必要があるな」と頭の片隅に入れておいた。
また、経歴の方はおおよそツグナとディエヴスが話し合った通りのことが記載されており、問題のない旨を確認する。
「へぇ~そうなの? まぁ、近いのはありがたいよね~……って、アレっ?」
「うん? どうした?」
スッと横から手紙の内容を見ていたソアラが、手紙の最後に小さく何かが記されていることに気づく。ツグナが訊ねると、ソアラは該当の箇所を指差しながら「ここ見て」と示す。
「なになに……」
『追伸。そうそう、この家だけど、名義はツグナになってるからね。ただし、この地球では未成年だから、勝手ながら後見人としてキミの師匠の名前を拝借させてもらったので、あしからず。
あと、この家や諸々の家具・家電・その他道具一式を購入した資金についてもツグナのサイフをちょろっと借りて購入したものだから。その辺りは気兼ねなく使ってね! いやぁ~、さすがSランク冒険者だね! 家とか備品類だけじゃなく、太陽光発電設備に蓄電池システム、外壁補強及び外断熱仕様など、諸々の設備投資にかかった費用を含めても余裕で賄えちゃったよ。
一応お金は日本の通貨に変換してあるから、後で残高を確認してね。それじゃあねぇ~』
記載された文面を読み終えた瞬間、ツグナの脳内にはにこやかな笑顔を湛えながら手を振るディエヴスの姿がチラつく。だが、彼の心情的にはそんな浮かんだ顔と同じ笑顔を向けるよりも、むしろ力強く握った拳をその顔面に叩きつけたい衝動に駆られていた。
「喧嘩売ってんのかあのヤロウ……」
珍しくビキビキと青筋を浮かべて怒りをあらわにするツグナに、傍らで見ていたソアラの顔が「ヒィッ」と声にもならない短い悲鳴と共に盛大に引き攣らせる。
ソアラの若干青褪めた表情にハッと我を取り戻したツグナは、「こんなことしてる場合じゃない」とばかりに早速アイテムボックスからこれまでに稼いだ金をテーブルの上に広げ、大まかな残高を弾き出した。
その結果――
「ふっざけんなあああああああぁぁぁぁぁ! あんニャロウ……2割も減ってるじゃねぇか!」
ツグナはテーブルの上に広がる残高を前に、「うがあああぁぁ……」と頭を抱え、ガシガシと忙しなく掻きながら呻く事態に陥る。
円転(日本の通貨へ換金すること)によるレートや手数料の影響を仮に加味したとしても、それでもこの減少幅はツグナの許容範囲を超えている。
いや、むしろツグナだからこそこの程度の損失で済んだと見るべきだろうか。
――他の人間ならば、まず間違いなく破産への道まっしぐらであろう。
一般的な冒険者でさえ、その日の宿代に事欠くケースもあるほどなのだから。
「そりゃあ確かに使い途がなくて報酬を貯めっぱなしだったけどさぁ……でもよ、勝手に使われるって……しかもあのチャラい神様に……」
今にも血の涙を流しそうなほどに悔しさを滲ませるツグナの肩を、リリアが軽く叩きながら言葉をかける。
「勝手に使われたことは許せないだろうが、その金があったから私たちはここに家を持つことができた。依頼主としてあの神様には色々と言いたいこともあるだろうが、ここは矛を納めておけ」
「うぐっ……分かったよ」
リリアに諭され、ツグナは深く息を吐いて内に湧いた怒りを霧散させる。
「ここにいても時間が過ぎるだけだ。この家が私たちのホームであることは間違いないようだし、さっさと各自部屋を決めて荷物を運び入れるとしよう。ツグナ、アイテムボックスから各人の荷物を出しておいてくれ」
「了解。荷物はまとめてここに置いておくから、部屋割りが決まったら各々取りに来てくれ。俺は夕飯の準備をしておくから」
その言葉を皮切りに、ソアラたちは家の中を見回りながら部屋割りを決めていった。
(……この借りはいつか必ず倍にして返してやる)
ツグナは心の奥底にディエヴスへの復讐の念を一旦仕舞い込み、「とりあえず夕飯の献立をどうしようか……」と思考を巡らせたのだった。
リビングに設置された大人数用の木製テーブルの端。そこにさりげなく置かれた白い封筒の存在に気づいたリリアが、表に記載された宛名を確認すると、スッとツグナの前に差し出して手渡す。
「うん? 俺宛の手紙? もしかして……」
なんとなくではあるが、この封書の差出人に予想がついたツグナは、彼女から渡された封筒の口を切って中に入っていた手紙を徐に引き抜く。
そして、封筒から引き抜いた手紙を開くと、その差出人はツグナの予想通りの人物からのものであった。彼は内心「やっぱりか……」と思いつつも、その手紙に記された内容に目を通していく。
『――やぁ。この手紙を読んでいるということは、無事に目的地に着いたようだね。とりあえずは問題無さそうで一安心だよ。うん、ホントに。まぁ失敗してたら次元と次元の隙間に閉じ込められて、二度と戻っては来られないんだけどね!
さて、話を本筋に戻そう。既に分かってるとは思うけど、この手紙のある家がここでのキミたちの拠点となる。必要な家具や家電、その他の道具類は一通り揃えているはずだから念のため確認しておいてね。なお、食材は対象外なのであしからず。
併せて、もう気付いていると思うけど、ここに来る際に潜った門を起点に、キミたちの容姿及び年齢は変わっているはずだ。前もってステータスが減少することは説明しているけれど、その幅については個人差がある。もし気になるようであればその目で視てあげてね! 『異界の鑑定眼』は嘘をつかないから。
あと、これからキミたちが通うことになる学校についてだけれど、既に手続きは完了しているよ。キリよく1カ月後の4/7が登校開始日となるように調整しておいたから、よろしくね。通う先の学校については、別の紙に記してあるから、そちらを確認のこと。こっちにおけるキミの仲間の「経歴」も事前に話し合った内容を記載しているので、間違いがないか目を通しておいてね。
最後に。これから新しい環境で、新たなスタートを切ることになるけれど、いつも見守っているから。ではでは、月イチの報告を楽しみに待ってるよ。 誰も見ていなくてもソツのない仕事をする神様・ディエヴスより』
(……って、オイ。やっぱり、失敗する可能性があったのかよ! しかも失敗したら戻ることもできないってリスク高過ぎるだろ……神様だろうが何だろうが、仕事をするなら「ホウ・レン・ソウ」は基本じゃないのかよあんニャロウ……)
ディエヴスからの手紙を読み終えたツグナは、当人がその場にいたら小一時間ほど膝を突き合わせて問い詰めたい思いに駆られつつも、それをぐっと抑え込んで続く2枚目以降に目を移す。そこにはこれから通うこととなる学校名とその場所を記した地図やリリアたち仲間の地球での経歴などが併せて記載されていた。
「ふぅん……通う学校はそれほど離れてはいないみたいだな」
ツグナは手紙と併せて記載されていた地図を確認し、大まかな位置を把握する。電車と徒歩でおよそ4,50分ぐらいかかるらしく、「学校が始まるみんなで電車の乗り方教えとく必要があるな」と頭の片隅に入れておいた。
また、経歴の方はおおよそツグナとディエヴスが話し合った通りのことが記載されており、問題のない旨を確認する。
「へぇ~そうなの? まぁ、近いのはありがたいよね~……って、アレっ?」
「うん? どうした?」
スッと横から手紙の内容を見ていたソアラが、手紙の最後に小さく何かが記されていることに気づく。ツグナが訊ねると、ソアラは該当の箇所を指差しながら「ここ見て」と示す。
「なになに……」
『追伸。そうそう、この家だけど、名義はツグナになってるからね。ただし、この地球では未成年だから、勝手ながら後見人としてキミの師匠の名前を拝借させてもらったので、あしからず。
あと、この家や諸々の家具・家電・その他道具一式を購入した資金についてもツグナのサイフをちょろっと借りて購入したものだから。その辺りは気兼ねなく使ってね! いやぁ~、さすがSランク冒険者だね! 家とか備品類だけじゃなく、太陽光発電設備に蓄電池システム、外壁補強及び外断熱仕様など、諸々の設備投資にかかった費用を含めても余裕で賄えちゃったよ。
一応お金は日本の通貨に変換してあるから、後で残高を確認してね。それじゃあねぇ~』
記載された文面を読み終えた瞬間、ツグナの脳内にはにこやかな笑顔を湛えながら手を振るディエヴスの姿がチラつく。だが、彼の心情的にはそんな浮かんだ顔と同じ笑顔を向けるよりも、むしろ力強く握った拳をその顔面に叩きつけたい衝動に駆られていた。
「喧嘩売ってんのかあのヤロウ……」
珍しくビキビキと青筋を浮かべて怒りをあらわにするツグナに、傍らで見ていたソアラの顔が「ヒィッ」と声にもならない短い悲鳴と共に盛大に引き攣らせる。
ソアラの若干青褪めた表情にハッと我を取り戻したツグナは、「こんなことしてる場合じゃない」とばかりに早速アイテムボックスからこれまでに稼いだ金をテーブルの上に広げ、大まかな残高を弾き出した。
その結果――
「ふっざけんなあああああああぁぁぁぁぁ! あんニャロウ……2割も減ってるじゃねぇか!」
ツグナはテーブルの上に広がる残高を前に、「うがあああぁぁ……」と頭を抱え、ガシガシと忙しなく掻きながら呻く事態に陥る。
円転(日本の通貨へ換金すること)によるレートや手数料の影響を仮に加味したとしても、それでもこの減少幅はツグナの許容範囲を超えている。
いや、むしろツグナだからこそこの程度の損失で済んだと見るべきだろうか。
――他の人間ならば、まず間違いなく破産への道まっしぐらであろう。
一般的な冒険者でさえ、その日の宿代に事欠くケースもあるほどなのだから。
「そりゃあ確かに使い途がなくて報酬を貯めっぱなしだったけどさぁ……でもよ、勝手に使われるって……しかもあのチャラい神様に……」
今にも血の涙を流しそうなほどに悔しさを滲ませるツグナの肩を、リリアが軽く叩きながら言葉をかける。
「勝手に使われたことは許せないだろうが、その金があったから私たちはここに家を持つことができた。依頼主としてあの神様には色々と言いたいこともあるだろうが、ここは矛を納めておけ」
「うぐっ……分かったよ」
リリアに諭され、ツグナは深く息を吐いて内に湧いた怒りを霧散させる。
「ここにいても時間が過ぎるだけだ。この家が私たちのホームであることは間違いないようだし、さっさと各自部屋を決めて荷物を運び入れるとしよう。ツグナ、アイテムボックスから各人の荷物を出しておいてくれ」
「了解。荷物はまとめてここに置いておくから、部屋割りが決まったら各々取りに来てくれ。俺は夕飯の準備をしておくから」
その言葉を皮切りに、ソアラたちは家の中を見回りながら部屋割りを決めていった。
(……この借りはいつか必ず倍にして返してやる)
ツグナは心の奥底にディエヴスへの復讐の念を一旦仕舞い込み、「とりあえず夕飯の献立をどうしようか……」と思考を巡らせたのだった。
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