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本編
第028話 逆鱗に触れた者の末路④
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5年前といえど、世界一にまで上り詰めた男の放つストレートは、プロボクサーを凌ぐ威力と破壊力を持つ。
だが、ツグナは敢えて前に出て攻撃を放つ九条に迫り、頬の上数ミリの距離で拳を躱す。
「――っ! そこだあああぁぁぁッ!」
そして前に出した脚を軸に、ツグナの掌底が九条の腹に叩き込まれた。
「グハッ!?」
ツグナの掌底をモロに受けた九条は、身体をくの字に折れ曲げながら吹っ飛び、コンクリートの壁に打ち付けられた。
「こんなモンで終わりか? ハッ! 意外と呆気ないもんだな」
「クソがああああぁぁぁぁッ!」
ツグナの言葉に弾かれるように壁から身体を引き剥がした九条は、即座に彼我の距離を詰め、その左右の拳を幾度も放った。
周りの空気を切り裂くように、轟音を纏って放たれる九条の連撃。並の人間ならばその圧倒的なまでの力を前に、足がすくんで身動きすらできないであろう。
だが――ツグナは違う。
転生した先の世界で、日常的に魔物と戦ってきた彼にとっては、この程度の攻撃などでダメージを負う事態にはなり得ない。
転生先の世界では、一歩間違えればそれが即、死につながる。生と死がまるで背中合わせのように隣り合う、日本人からすれば異常とも呼べる世界だ。
加えて、ツグナの場合は黒髪黒眼の「忌み子」として、生家では惨憺たる扱いを受けた。
そうした極限の状況でも折れることなく、鍛錬を続けられた彼の「心」には、九条の言うような単純な強さでは測れない「何か」があった。
「クソッ! クソクソクソォォォッ!」
がむしゃらに攻撃を放つ九条に対し、ツグナはまるで踊るように地を蹴り、跳ねた身体が空中に綺麗な放物線を描く。
「――敵とはいえ、少々楽しませてもらったせめてもの礼だ」
宙に身を投げて伸身のままクルリと身を捻って軽やかに着地したツグナは、ポツリと呟いた言葉と共に地を駆ける。
――魔闘技・派生技能:夢幻燈火。
発動した瞬間、駆け出したツグナの周囲に次々と幻影が生み出される。
「――ッ!?」
迫りながら生み出される幻影に驚いた九条が、わずかにその攻撃の手を止めた。
ツグナはその間隙を逃さず、瞬時に相手の懐まで潜り込み、トンッ、とわずかな音を残して身を捻りながら飛び跳ねる。
そして、ツグナの鍛えた脚力と身を捻ったことで生まれた運動エネルギーを、右足の踵に乗せて九条の顎を下から掬い上げるように蹴り上げた。
脚の力は腕の力の2倍とも言われ、単純な攻撃力は脚技の方が高い。加えて実戦の中で磨かれたツグナの戦闘技術である。
如何に九条が元世界チャンピオンといえども、その直撃した彼の脚技に耐えることは出来なかった。
また、顎に受けた強打がテコの原理で脳を強烈に揺さぶり、彼の意識は強制的にブラックアウトする。ツグナの攻撃により吹っ飛ばされた九条は、仰向けに倒れたまま起き上がることはなかった。歯が砕け、顎の骨が折れてはいたものの、ギリギリのところで一命を取り留めているのは、一重にツグナが「それなりの」手心を加えたからに過ぎない。
何故なら――彼が「本気で」九条を倒したのなら、今頃はとうにその命は消え失せていたであろうからだ。
倒れた九条をそのままに、自然体で立つツグナは、その意識を周囲に向けて問いかける。
「さぁて……お前のボスは地に倒れた。気を失ってるからしばらくはそのままだろう。それじゃあ諸君……」
そこまで語った彼は、紡いでいた言葉を切って笑みを浮かべる。しかし、その見せた笑みは獲物を捕捉した猛獣さながらの凶悪さを孕んだものだ。
「――続きを始めようか」
ゾッと背筋が凍るほどの不気味な笑みを浮かべたツグナは、恐怖に慄き蜘蛛の子を散らすように逃げる「アリゲーターバイト」の構成員を一人二人と気絶させていく。
それはまるで製造工場にあるベルトコンベアーを見ているように、淡々と、素早くかつ正確に進められる作業のようでもあった。
だが、ツグナは敢えて前に出て攻撃を放つ九条に迫り、頬の上数ミリの距離で拳を躱す。
「――っ! そこだあああぁぁぁッ!」
そして前に出した脚を軸に、ツグナの掌底が九条の腹に叩き込まれた。
「グハッ!?」
ツグナの掌底をモロに受けた九条は、身体をくの字に折れ曲げながら吹っ飛び、コンクリートの壁に打ち付けられた。
「こんなモンで終わりか? ハッ! 意外と呆気ないもんだな」
「クソがああああぁぁぁぁッ!」
ツグナの言葉に弾かれるように壁から身体を引き剥がした九条は、即座に彼我の距離を詰め、その左右の拳を幾度も放った。
周りの空気を切り裂くように、轟音を纏って放たれる九条の連撃。並の人間ならばその圧倒的なまでの力を前に、足がすくんで身動きすらできないであろう。
だが――ツグナは違う。
転生した先の世界で、日常的に魔物と戦ってきた彼にとっては、この程度の攻撃などでダメージを負う事態にはなり得ない。
転生先の世界では、一歩間違えればそれが即、死につながる。生と死がまるで背中合わせのように隣り合う、日本人からすれば異常とも呼べる世界だ。
加えて、ツグナの場合は黒髪黒眼の「忌み子」として、生家では惨憺たる扱いを受けた。
そうした極限の状況でも折れることなく、鍛錬を続けられた彼の「心」には、九条の言うような単純な強さでは測れない「何か」があった。
「クソッ! クソクソクソォォォッ!」
がむしゃらに攻撃を放つ九条に対し、ツグナはまるで踊るように地を蹴り、跳ねた身体が空中に綺麗な放物線を描く。
「――敵とはいえ、少々楽しませてもらったせめてもの礼だ」
宙に身を投げて伸身のままクルリと身を捻って軽やかに着地したツグナは、ポツリと呟いた言葉と共に地を駆ける。
――魔闘技・派生技能:夢幻燈火。
発動した瞬間、駆け出したツグナの周囲に次々と幻影が生み出される。
「――ッ!?」
迫りながら生み出される幻影に驚いた九条が、わずかにその攻撃の手を止めた。
ツグナはその間隙を逃さず、瞬時に相手の懐まで潜り込み、トンッ、とわずかな音を残して身を捻りながら飛び跳ねる。
そして、ツグナの鍛えた脚力と身を捻ったことで生まれた運動エネルギーを、右足の踵に乗せて九条の顎を下から掬い上げるように蹴り上げた。
脚の力は腕の力の2倍とも言われ、単純な攻撃力は脚技の方が高い。加えて実戦の中で磨かれたツグナの戦闘技術である。
如何に九条が元世界チャンピオンといえども、その直撃した彼の脚技に耐えることは出来なかった。
また、顎に受けた強打がテコの原理で脳を強烈に揺さぶり、彼の意識は強制的にブラックアウトする。ツグナの攻撃により吹っ飛ばされた九条は、仰向けに倒れたまま起き上がることはなかった。歯が砕け、顎の骨が折れてはいたものの、ギリギリのところで一命を取り留めているのは、一重にツグナが「それなりの」手心を加えたからに過ぎない。
何故なら――彼が「本気で」九条を倒したのなら、今頃はとうにその命は消え失せていたであろうからだ。
倒れた九条をそのままに、自然体で立つツグナは、その意識を周囲に向けて問いかける。
「さぁて……お前のボスは地に倒れた。気を失ってるからしばらくはそのままだろう。それじゃあ諸君……」
そこまで語った彼は、紡いでいた言葉を切って笑みを浮かべる。しかし、その見せた笑みは獲物を捕捉した猛獣さながらの凶悪さを孕んだものだ。
「――続きを始めようか」
ゾッと背筋が凍るほどの不気味な笑みを浮かべたツグナは、恐怖に慄き蜘蛛の子を散らすように逃げる「アリゲーターバイト」の構成員を一人二人と気絶させていく。
それはまるで製造工場にあるベルトコンベアーを見ているように、淡々と、素早くかつ正確に進められる作業のようでもあった。
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