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本編
第045話 交錯する思惑②
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「えっ? こ、これは……?」
目の前に示された、鮮やかな血の色にも似た紅色の鉱石を捉視界にえた千陽が健介に逆に問いかける。
「この石は、千陽がここに担ぎ込まれる前、魔物と交戦した場所に落ちていた石だ。この石の傍には錆びた巨大な鉈も落ちていた」
「――っ!?」
健介の説明に、千陽は思わず息を呑んだ。目を見開いて驚く彼女に、問いかけた健介はさらに話を続ける。
「これほどの大きさと純度を誇る魔煌石を持つ魔物だ。そこいらのヤツとは一、ニランクは上だろう。コイツを仕留めるには、それなりの実力が伴う。誰がやったのか……知らないか?」
「う、うん……ごめんなさい。分からないよ。だって、気を失ってたんだよ? た、たとえ見たとしても……一瞬だろうし、すぐに忘れちゃうよ」
千陽は健介の身体から放たれる圧に言葉を詰まらせながらも、キッパリと「分からない」と告げる。
(でも、あの時見えた白髪と金色の瞳は……見間違いだったのかな……)
問われた瞬間、ふと千陽の脳裏に一人の男の子の後ろ姿がちらついた。彼女の意識が途切れる間際であったためか、チラリとこちらを見た時の顔はハッキリと思い出すことはできなかった。だが、妙に白い髪と金色の瞳が印象的であったのを覚えていた。
脳裏によぎったそのことを言った方がいいだろうか……と逡巡したものの、そのような曖昧な記憶を父である健介に告げて彼の捜査の邪魔をしたくはないとの思いから、結局千陽は「分からない」と返答するに留めたのだった。
しかし、それが単なる思い過ごしではなかったというのは、この時千陽は知る由もなかった。
「……そうか。そう言うのなら仕方がないな。引き続き、この魔物を倒した人物については、こっちの方で捜査を進めておこう。まずはゆっくりと休みなさい」
「うん、そうさせてもらうね」
再びベッドに横になった千陽は、程なくして静かに寝息を立て始める。
(さて……こちらもそろそろ動き始めるとするか)
席を立った健介は、どこか名残惜しそうに娘の頭を軽く撫でて病室を去っていった。
◆◇◆
同時刻、郊外にある地下施設にアザエルとズィーベンの姿があった。
「やぁゼクス。彼の調子はどうだい?」
軽く手を上げて両開きの自動ドアを抜けて入ってきたアザエルは、壁一面が強化ガラスに覆われた室内に一人佇むゼクスに呼びかける。
「これはこれはアザエル様。このような場所に御足労頂き、誠に有難うございます。数日前にアザエル様の助力もあって無事に施術が終わり、今は少しずつ身体を慣している段階です」
ゼクスは胸に手を当てながら深く腰を折り、状況を説明する。
「ふむ、なるほどね。侵食率は?」
「間もなく2割を超えるかと……」
打てば響くように返答するゼクスに、アザエルは頬を緩ませながらさらに問いかける。
「了解。いやぁ、順調そうで何よりだよ。それで、彼は今から食事なのかい?」
口の端を吊り上げ、三日月にも似た弧を描く笑みで訊ねるアザエルに、ゼクスは恭しく頭を下げながら「その通りでございます」と返答する。
「ふむ……なら、僕も一緒に見ていいかな? 施術した手前、一応経過な見ておきたくてさ」
「えぇ、是非!」
アザエルからの申し出に、ゼクスは面を上げ嬉々としてそれを承諾する。
「ありがとね~。ほら……折角だし、ズィーベンも一緒に見よ?」
「……かしこまりました」
相手から承諾の下りたアザエルは、まるで年相応の子どものように強化ガラス製の壁に張り付き、手招きして後方に控えていたズィーベンを呼び寄せる。
そしてアザエルはゼクスとズィーベンを挟まれた格好で、下に見える光景を食い入るように見つめた。
目の前に示された、鮮やかな血の色にも似た紅色の鉱石を捉視界にえた千陽が健介に逆に問いかける。
「この石は、千陽がここに担ぎ込まれる前、魔物と交戦した場所に落ちていた石だ。この石の傍には錆びた巨大な鉈も落ちていた」
「――っ!?」
健介の説明に、千陽は思わず息を呑んだ。目を見開いて驚く彼女に、問いかけた健介はさらに話を続ける。
「これほどの大きさと純度を誇る魔煌石を持つ魔物だ。そこいらのヤツとは一、ニランクは上だろう。コイツを仕留めるには、それなりの実力が伴う。誰がやったのか……知らないか?」
「う、うん……ごめんなさい。分からないよ。だって、気を失ってたんだよ? た、たとえ見たとしても……一瞬だろうし、すぐに忘れちゃうよ」
千陽は健介の身体から放たれる圧に言葉を詰まらせながらも、キッパリと「分からない」と告げる。
(でも、あの時見えた白髪と金色の瞳は……見間違いだったのかな……)
問われた瞬間、ふと千陽の脳裏に一人の男の子の後ろ姿がちらついた。彼女の意識が途切れる間際であったためか、チラリとこちらを見た時の顔はハッキリと思い出すことはできなかった。だが、妙に白い髪と金色の瞳が印象的であったのを覚えていた。
脳裏によぎったそのことを言った方がいいだろうか……と逡巡したものの、そのような曖昧な記憶を父である健介に告げて彼の捜査の邪魔をしたくはないとの思いから、結局千陽は「分からない」と返答するに留めたのだった。
しかし、それが単なる思い過ごしではなかったというのは、この時千陽は知る由もなかった。
「……そうか。そう言うのなら仕方がないな。引き続き、この魔物を倒した人物については、こっちの方で捜査を進めておこう。まずはゆっくりと休みなさい」
「うん、そうさせてもらうね」
再びベッドに横になった千陽は、程なくして静かに寝息を立て始める。
(さて……こちらもそろそろ動き始めるとするか)
席を立った健介は、どこか名残惜しそうに娘の頭を軽く撫でて病室を去っていった。
◆◇◆
同時刻、郊外にある地下施設にアザエルとズィーベンの姿があった。
「やぁゼクス。彼の調子はどうだい?」
軽く手を上げて両開きの自動ドアを抜けて入ってきたアザエルは、壁一面が強化ガラスに覆われた室内に一人佇むゼクスに呼びかける。
「これはこれはアザエル様。このような場所に御足労頂き、誠に有難うございます。数日前にアザエル様の助力もあって無事に施術が終わり、今は少しずつ身体を慣している段階です」
ゼクスは胸に手を当てながら深く腰を折り、状況を説明する。
「ふむ、なるほどね。侵食率は?」
「間もなく2割を超えるかと……」
打てば響くように返答するゼクスに、アザエルは頬を緩ませながらさらに問いかける。
「了解。いやぁ、順調そうで何よりだよ。それで、彼は今から食事なのかい?」
口の端を吊り上げ、三日月にも似た弧を描く笑みで訊ねるアザエルに、ゼクスは恭しく頭を下げながら「その通りでございます」と返答する。
「ふむ……なら、僕も一緒に見ていいかな? 施術した手前、一応経過な見ておきたくてさ」
「えぇ、是非!」
アザエルからの申し出に、ゼクスは面を上げ嬉々としてそれを承諾する。
「ありがとね~。ほら……折角だし、ズィーベンも一緒に見よ?」
「……かしこまりました」
相手から承諾の下りたアザエルは、まるで年相応の子どものように強化ガラス製の壁に張り付き、手招きして後方に控えていたズィーベンを呼び寄せる。
そしてアザエルはゼクスとズィーベンを挟まれた格好で、下に見える光景を食い入るように見つめた。
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