黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

文字の大きさ
47 / 129
本編

第046話 交錯する思惑③

しおりを挟む
 アザエルたちが見下ろすその先。そこには灰色のツナギを身につけ、手首に枷を嵌められた男がポツンと立っている。
 部屋の大きさはおよそ半径50メートル。広い室内ではあるが、奇妙なことに家具や設備は一切なく、あるのは頭上の照明のみという質素を通り越してもはや殺風景としか言いようがない。
 そんな広い空間の中心に立つ男は、今いる場所がどこなのかを導き出そうとキョロキョロと顔を左右に振って辺りを見回している。

「っ――!?」

 湧き上がる不安を押し殺しつつ周囲の様子を窺っていた男の背後。その位置にある壁が不意に左右に分かれた。と同時に苛立ちを混ぜた男の声が耳に届く。

「チィッ……何だよ。折角暴れられると思って来てみればヨォ……いかにも不味そうな・・・・・男だなぁ、オイ。女だったらもうちっと楽しめるんだがな」

 舌打ちをして愚痴を零しながら入ってきたのは、かつて不良集団である「アリゲーターバイト」を纏めていた九条武治であった。

「な、なぁ! 頼むよ、俺をここから出してくれないか? もし出してくれるのなら、相応の謝礼はさせてもらう! 頼むよ!」

 手首に枷を嵌められた男は、現れた九条に縋り付き、幾度も頭を下げながら必死で懇願する。拘束とこの場所からの解放を願うこの男には、それなりの勝算があった。それが先ほど口から出た「謝礼」の言葉である。
 この男の正体。それは警察が手を焼いたほどの詐欺師ゴンベンであった。

 前科数犯の犯罪者であり、富裕層をターゲットに仕掛けた詐欺により、男のもとには数億にも上る金が集まっていた。ヘタを打って警察に捕まり、実刑判決を受けたものの、集めた金の大部分は未だに発見されずに残っていることはこれまでの取り調べから見当がついていた。

 そう。男はその隠した財産を手札カードに、九条に取引を持ちかけたのだ。この状況下であれば、持ちかけられた方が「自分に有利な条件で取引の主導権を握れる」だろうと推察するのは容易い。命乞いをする相手に「相応の」謝礼。これはかなりの額の金を手に入れられる――そのように誰もが思うだろう。

 それは九条に縋り付いたこの男も理解はできていた。

(大丈夫だ。8割くらい持っていかれるのは想定内。最低でも数千万あれば……数年のうちには回収できる)

 男は懇願する裏でそんな言葉を呟きながら頭の中で算盤を弾く。この男のターゲットは富裕層であるため、数百万などはまさに「端金」のレベルだ。
 もちろん相手を引っ掛けるには相応の資金が必要になるが、それは詐欺シゴトを数件こなせば収支は+に傾くハズ――と見込んでいた。

 見るからに相手が有利――だからこそ、自分が付け入る隙が存在する。この取引で相手の心証を悪くしなければ、光明は見えてくる。

 そんな考えから持ち出した取引――だったのだが

「あ゛ぁ? カネだと? 悪いが……」
 男から取引を持ちかけられた九条は、片眉を吊り上げると、少し間を置いてさらに言葉を続ける。

「俺が欲しいのはあのガキ・・・・をブチのめす絶対的な『力』だ。別にカネなんざ欲しいとは思ってねぇんだよ。ここにいれば大抵のことはできるからな」
「んなっ――!?」
 相手に有利な状況で持ちだした取引であるにもかかわらず、アッサリと「必要ない」と言われたことに男は驚愕の表情を露わにするとともに、よろよろと九条から数歩離れて床に腰を下してしまう。

「さぁて……そろそろお前の話はオシマイか? なら――今度はこっちの番だな」

 ニヤリと口の端を吊り上げた九条は、一歩男に近付くと、内から湧き上がる禍々しい空気を解放し、場を包み込んだ。
「あ、あぁ……い、嫌だ! た、助け――」
 九条の気に当てられた男は、涙を浮かべ身体を震わせつつも這って離れようと試みる。しかし、そんな努力の甲斐も虚しく壁際に追い込まれた男は、顔を青褪めさせながらチラリと九条の顔を仰ぎ見る。

 ――いや、見てしまった・・・・・・

「最近は『もっと喰わせろ』ってコイツが言う・・・・・・もんだからよぉ……こんな『食事』ももう慣れちまってなぁ……」

 ――ゴキッ、メキッ、バキッ、グジュッ……

 ふと零した九条の言葉に答えるように、彼の身体が鈍い音を伴なって「作り変えられ」ていく。そして耳に残る音が止んだ時、そこにいたのは――

「まぁ、とどのつまり……お前みたいに取引持ちかけて命乞いするようなヤツは見飽きたってワケさ。さてと――準備もできたし……喰っていいぞ」

 右腕を赤黒い骨だけの竜へと変貌を遂げた九条武治の姿があった。右手の部分は彼の身長ほどにも達する高さを持つ竜の頭蓋骨へと変わり、その眼窩には鬼火の如き青白い炎にもにた光が灯っていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...