黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第059話 夜空に紡がれる妹の願い④

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「……というわけで、俺とアリアは先行して現場に向かう! 到着次第、ジェスターの『道化門ゲート』をこの庭先につなげる! みんなはそのゲートを通って来てくれ!」
 コクヨウの翼がバサリと大きくはためき、ふわりとその身体が浮かぶ。ツグナはホバリングによる強風が巻き起こる中、リビングに集まっていた面々に大声で呼びかけた。

「うん、分かったよ!」
「了解したわ。それじゃあ現地で!」
「兄さん、アリア。どうか、道中気をつけて……」

 ソアラ、キリア、リーナがそれぞれにコクヨウの背に跨るツグナとアリアに声をかける。
 ツグナは縁側から身を乗り出す三人に、返事をする代わりにぐっと親指を立てて「了解」の合図を送る。

「さぁて、行くとするか! この世界での初飛行だ。コクヨウ、くれぐれもはしゃぎ過ぎない程度に・・・・・・・・・・・頼むぜ?」
「承知しました。 それでは――行きます!」
 ツグナの言葉に力強い返事をしたコクヨウは、両翼を大きくはばたかせて一気に上空へと舞い上がる。

「うおおおおおおぉぉぉっ! こ、この感覚……っ! あの時以来だね!」
「あ~、確か……アングレイトのいた『呪い島』に向かった時、だったっけか?」
 ツグナの後ろで腰に手を回してしがみつくアリアが興奮気味に零した言葉。無意識のうちに上がる歓声の後に彼女が漏らした発言に対し、ツグナは当時の事を思い返しながらしみじみと呟く。

「そうそう! あの時は陽が出ていた海の上だったけれどね。今回は月も出ていない夜で、しかも眼下に広がるのは海じゃなくて建物から漏れる灯りだけ。時間と場所が違うから何とも言えないけれどさぁ……やっぱり、どうしてもあの時に目にした光景と比較しちゃうんだよねぇ~」
「……まぁ分からんでもないさ。あの紺碧の海の上を飛ぶのは気持ち良かったのは確かだったしな」
 眼下に広がる景色を見ながら零すアリアのセリフに、ツグナは釣られるようにくすりと笑いながら言葉を返す。

「……ツグ兄、ありがと」
 気恥ずかしさからか、ツグナの背に顔をうずめたアリアが小さな声で感謝の言葉を呟く。

「何だ? どうしたんだよ、いきなり」
「だって……こうして一緒に連れてってくれたのは、私のことを心配してくれたからなんでしょ?」
 アリアは顔を埋めたまま、ポツリと自らの思いを言葉に乗せる。

「千陽は……私にとって、こっちの世界に来て初めて『友だち』と呼べる子なんだよ。クラスは違うけど、部活つながりで知り合ってさ。同じクラスにいる他の子たちとは違って、変に気を遣ってこなくて……対等に接してくれてさ。出会ってまだ日は短いけど……本当にイイ子なんだよ」
「……」
 前にいるツグナの腰に回された手が、ギュッと服を強く掴む。チラリとその手を見ると、わずかながらに震えていた。

「だから……だからさ。あの子が、あの子の大切な人が傷つくのはイヤなんだよ。ねぇ、お願い……ツグ兄――」
 背中越しに伝わる微かな振動。それを感じながら、彼はただ黙って妹の声に耳を傾ける。

「――助けて」

 地球こっちに来て結ぶことのできた、アリアとって初めての「人のつながり」。
 それは、転生したツグナがあの魔の森で出会った妖精族エルフのそれと同じ、彼女にとって大切で、かけがえのないものでもあった。
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