黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第063話 魔煌石を巡る攻防(東の陣)③

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「うっらああああああああっ!」
 スパァン! と凄まじい音を奏でながらデルタは押し留めていた水豪鬼の組んだ手を真上に跳ね飛ばす。直後、ブチブチッと反対の左腕を拘束していた水蜘蛛の糸を力任せに引き千切り、両腕を拘束から逃れた彼女は、目の前でガラ空きとなった水豪鬼の腹目がけて自らの「力」を解き放つ。

「行くぜぇ……双天戟そうてんげきっ!」
「グコァッ!?」
 ぐっと両腕を引いてタメを作ったデルタは、握り締めた両拳をわずかに捻りながら眼前の的に叩き込む。螺旋を描くように打ち込まれた彼女の拳は、水豪鬼の腹を易々と貫通し、身体を上下に千切り飛ばす。

「せいやあっ!」
「ギピィッ!?」
 技を放った直後、その派手な最期を遂げた水式神に一瞬呆けた表情を見せる棗。デルタはその隙を逃さず、空いた両手で足を拘束する糸を千切り、一息に引っ張る。水蜘蛛の体格は水豪鬼には及ばないものの、その重さは棗の使役する水式神の中でも随一を誇る。吐き出した糸で相手を拘束し、その巨躯と重量で圧し潰す。
 まさにその様は「戦車」と表現できよう。

 だが――その戦車たる水蜘蛛が、空高く放り上げられていた。

「――んなっ!?」
 そのあまりにも予想外な事態に、棗は他の式神を呼び出すのも忘れ、ただただ呆然と天高く舞う水蜘蛛を眺めていた。デルタに力負けを喫し、空に放り出された水蜘蛛は、やがて重力に従い落下を始める。
「うらああああっ! 衝天砲槍しょうてんほうそうっ!」
 水蜘蛛の落下地点に立ったデルタは、真上から迫る水蜘蛛に対し、渾身の力を込めた拳を突き上げた。瞬間、その凄まじいまでの衝撃波がさながら天を衝く槍の如く垂直に伸び、相手を消し飛ばした。

「あっ……ああっ……」
 闇夜に散った三体もの式神に、棗は崩れるようにその場にへたり込んだ。
「ハハッ! どうだい私のこの力は! 身体に埋め込まれたのは『キュクロプス』って巨人の魔物から採れた魔煌石らしいんだが、この石とこれほどまでに高い適合を見せたのは私しかいないそうだ。まぁ私としてはこの石を取り込んだことで目覚めた『怪力』で相手をブチのめせればそれでいいんだけどね」

 ――敵わない。

 自身の持つ最強の水式神てふだをこうもあっさりと倒された棗は、燃え尽きたようにただ肩を落として俯く。
「オイオイ、もう戦意喪失かい? ご自慢の『水式神どうぐ』がなきゃ手も足も出ないってか? まぁいい。こっちはそこそこ楽しめたし、そろそろ仕事にも取り掛からないとマジで怒られるからな。ってことで……」
 棗の目の前まで歩み寄ったデルタは、手のひらをギュッと握り締めて振りかぶる。

「ここらで大人しく――死んどけや」

 フック気味に放たれたデルタの拳。明確な殺気を纏わせて迫るその拳は、当たれば最期、まるで高所から落としたスイカのように跡形も無く棗の頭を容易く爆散させるだろう。だが――

「っ――!? 消えた!?」

 デルタの放ったその拳は、標的を捉えることなく虚しく空を切る。即座に反応して周囲を見渡した彼女が見たのは――

「オイオイ、コイツは一体何の冗談だ?」

 竹林の陰から両者の間に割って入る形で姿を現したソアラと、身に起こった出来事を呑み込めずに呆然と彼女を仰ぎ見る棗の姿であった。
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