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本編
第073話 魔煌石を巡る攻防(北の陣)①
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神社の北側に位置する公園。普段は市民の憩いの場として楽しまれるその開けたスペースでは、御庭番の一人である柊木萩がゼータとの戦いを繰り広げていた。
「はあああああああっ!!」
「フフッ……氷の剣ですか。その切れ味は脅威です……が」
襲い来る鞭をスパッと斬り伏せた萩だったが、対峙するゼータの表情に焦燥の色は見られない。むしろ一見して優勢と思える萩の顔の方にわずかながらの焦りがあるように感じられる。
「うん? どうした? 先ほどよりも幾分スピードが落ちているようですよ? そんな速さじゃあ……私の愛の鞭からは到底逃げ切れませんよ」
「ぐっ!?」
既に「覚醒」を果たしたゼータは、嬉々としてしならせた木の鞭を萩に向けて放つ。ウネウネと意志を持つように動く木の鞭は、ゼータの覚醒後の姿である「喰人木」の特性による攻撃だ。
マンイーターと姿を変えたゼータは、根や枝を無数に伸ばし、それらを操作して攻撃を繰り出す。特徴的な攻撃は、太い枝をしならせて繰り出される木の鞭だ。
しかし、「たかが枝だから」と油断はできない。ゼータが「愛の鞭」と呼ぶその木鞭は、建築用の鉄骨を易々と折り曲げるほどの威力を有する。まともに食らえば、運良くて重傷、悪ければ死(往々にして後者になる確率が高い)……という代物だ。
また、繰り出される木鞭は何も一本とは限らない。その証拠に、萩に襲いかかる鞭は、その数優に二十を超えている。波濤の如く絶え間なく押し寄せる攻撃に、彼の身体には少なくない傷が刻まれていた。
「あははははっ! どうしたの? さっきから弾き防御してばかりだけれど。もしかして……その術式、いや貴方の身体かしら。制限時間があるのではない?」
「っ――!?」
襲い来る攻撃を剣を盾代わりにして辛うじて防いだ萩は、耳に届いたゼータの指摘に思わず歯を噛んで沈黙する。しかし、その態度が却って発言主に答えを提示していた。
「あははははっ! そうなの、そうなのね! フフッ……あぁ、何て哀しい、何て無情な仕打ちなのかしら。これほどまでの剣術ならば、既に一流として名を馳せていたでしょうに。タイムリミットという唯一のデメリットが貴方を縛っているのね……」
憂いと憐憫の混ざった瞳で萩を見つめるゼータは、誰に聞かせるわけもなく呟く。
(やめろ……やめてくれ――)
告げられた言葉、向けられる視線に、萩は剣の柄を強く握り締めながら心を鷲掴みする恐怖に抗う。
――制限付き天才児。これが柊木萩に冠された二つ名だ。
生来の持病により、萩は長時間の戦闘はできなかった。嵌められた持病を逃れ、全力で剣を振れるのはせいぜい10分が限界であった。
それ以上の戦闘に及ぶ場合、すぐに息が上がり、最終的には身体の自由がきかなくなる。
「彼の剣術は素晴らしい。同世代よりも数段抜きん出た実力がある」
「正に『天才』の名を贈るに相応しい技量の持ち主だ」
ただし――
「「あの弱点さえなければ、だが」」
柊木萩の持つ剣術の技量は、見る者を思わず唸らせるほどにレベルが高い。柊木家の持つ術式――「氷剣」との相性も良く、彼の持病が明らかになるまでは、「柊木家は安泰」とまで言われていたほどだ。
だが、彼の病がそうした評価を一変させた。
柊木家はどうにかして萩の病を取り除こうと手を尽くしたものの、結局その病名すら分からず、治療することはできなかった。
萩は自らの病を治そうと方々に奔走する両親の姿を見ながら、「これ以上の迷惑はかけないように」と幼い頃から勉学と剣術に打ち込んだ。その甲斐もあり、学業ではトップの成績で白桜大に進学を果たし、剣術においても優れた技量を持つまでに至った。
「はあああああああっ!!」
「フフッ……氷の剣ですか。その切れ味は脅威です……が」
襲い来る鞭をスパッと斬り伏せた萩だったが、対峙するゼータの表情に焦燥の色は見られない。むしろ一見して優勢と思える萩の顔の方にわずかながらの焦りがあるように感じられる。
「うん? どうした? 先ほどよりも幾分スピードが落ちているようですよ? そんな速さじゃあ……私の愛の鞭からは到底逃げ切れませんよ」
「ぐっ!?」
既に「覚醒」を果たしたゼータは、嬉々としてしならせた木の鞭を萩に向けて放つ。ウネウネと意志を持つように動く木の鞭は、ゼータの覚醒後の姿である「喰人木」の特性による攻撃だ。
マンイーターと姿を変えたゼータは、根や枝を無数に伸ばし、それらを操作して攻撃を繰り出す。特徴的な攻撃は、太い枝をしならせて繰り出される木の鞭だ。
しかし、「たかが枝だから」と油断はできない。ゼータが「愛の鞭」と呼ぶその木鞭は、建築用の鉄骨を易々と折り曲げるほどの威力を有する。まともに食らえば、運良くて重傷、悪ければ死(往々にして後者になる確率が高い)……という代物だ。
また、繰り出される木鞭は何も一本とは限らない。その証拠に、萩に襲いかかる鞭は、その数優に二十を超えている。波濤の如く絶え間なく押し寄せる攻撃に、彼の身体には少なくない傷が刻まれていた。
「あははははっ! どうしたの? さっきから弾き防御してばかりだけれど。もしかして……その術式、いや貴方の身体かしら。制限時間があるのではない?」
「っ――!?」
襲い来る攻撃を剣を盾代わりにして辛うじて防いだ萩は、耳に届いたゼータの指摘に思わず歯を噛んで沈黙する。しかし、その態度が却って発言主に答えを提示していた。
「あははははっ! そうなの、そうなのね! フフッ……あぁ、何て哀しい、何て無情な仕打ちなのかしら。これほどまでの剣術ならば、既に一流として名を馳せていたでしょうに。タイムリミットという唯一のデメリットが貴方を縛っているのね……」
憂いと憐憫の混ざった瞳で萩を見つめるゼータは、誰に聞かせるわけもなく呟く。
(やめろ……やめてくれ――)
告げられた言葉、向けられる視線に、萩は剣の柄を強く握り締めながら心を鷲掴みする恐怖に抗う。
――制限付き天才児。これが柊木萩に冠された二つ名だ。
生来の持病により、萩は長時間の戦闘はできなかった。嵌められた持病を逃れ、全力で剣を振れるのはせいぜい10分が限界であった。
それ以上の戦闘に及ぶ場合、すぐに息が上がり、最終的には身体の自由がきかなくなる。
「彼の剣術は素晴らしい。同世代よりも数段抜きん出た実力がある」
「正に『天才』の名を贈るに相応しい技量の持ち主だ」
ただし――
「「あの弱点さえなければ、だが」」
柊木萩の持つ剣術の技量は、見る者を思わず唸らせるほどにレベルが高い。柊木家の持つ術式――「氷剣」との相性も良く、彼の持病が明らかになるまでは、「柊木家は安泰」とまで言われていたほどだ。
だが、彼の病がそうした評価を一変させた。
柊木家はどうにかして萩の病を取り除こうと手を尽くしたものの、結局その病名すら分からず、治療することはできなかった。
萩は自らの病を治そうと方々に奔走する両親の姿を見ながら、「これ以上の迷惑はかけないように」と幼い頃から勉学と剣術に打ち込んだ。その甲斐もあり、学業ではトップの成績で白桜大に進学を果たし、剣術においても優れた技量を持つまでに至った。
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