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本編
第087話 魔煌石を巡る攻防(南の陣) B part②
「甘ぇよ、バーカ……」
「かふ――っ!?」
本能が警告を発した直後、ツグナの右側から強烈な一撃が叩き込まれ、なす術なく吹っ飛ばされる。真横に飛び、生い茂る木々に強かに打ち据えられたツグナは、頭から流れる血を拭うこともせずに相手を見つめる。
「ガハッ! はぁ……はぁ……い、今のは――」
一体何が、とその原因を探ろうとしたツグナの目がそれを捉えるのは同時だった。
「ハッハアアッ! どうだ、強烈だろ? 俺の左腕はヨォ!」
茂みの奥から彼の目に映し出されたのは、己の左腕を巨大な竜の尻尾へと変化させた九条の姿であった。
(なん、だ……ありゃ。あんなモン、反則過ぎだろうが)
ザクッと刀の先を地面に突き立て、刺した刀を杖代わりに身を起こしたツグナは、高笑いをする九条を視界に捉えつつ胸中にそっと吐露する。
右腕のそれと同様、ドス黒い血を押し固めたような巨大な竜の尻尾。もちろんこれも骨のみで形成されたものだが、その威力は「災害」そのものと言える。
振り下ろし・振り上げ・薙ぎ払い――そのどれもが驚異的な破壊力を持つ。
(変化するのは右腕と左腕みたいだな。見てくれは骨だけの竜だが、メチャクチャ硬い……何せサクヅキの攻撃を受けても傷一つ付かないようだしな。おまけにあの巨体を利用した間合いの広さ……一気に距離を詰めて九条に攻撃できないと、またあの薙ぎ払いで吹っ飛ばされる。あれは何度も食らって耐えられるってもんでもない。早々にケリをつけないと、全身砕かれて死ぬな……)
アイテムボックスから回復薬を取り出して一気飲みしたツグナは、痛みが引いてクリアになった頭で九条の攻略法を考える。
(見た感じは死霊系ってトコだな。全身が強固な骨でできていることを考えると、「メイスで砕く」・「火系統魔法」・回復という癒しを与える「補助系統魔法」なんかが攻略の定石だろうな。だが……)
魔法適性が無く、刀をメインの武器とするツグナは、そのいずれの選択もとることはできない。
「ふぅ……」
気を抜けば次々と湧いてくる「敗北」のイメージ。いや、それよりも、勝つ・負ける以前に「無理だ」という諦めの言葉が脳裏を掠める。
自らの心に生まれた「恐怖」。
あれほどまでの異常な妄執に駆られた九条ならば、ツグナの息の根を止めることに何の躊躇いもないだろうとは簡単に想像できる。
死神がその鎌で屠る瞬間を、今か今かと手ぐすね引いて待っている。
「負けるから、どうせ勝てっこないから逃げる? ハッ……上等だよ」
だが、その感覚はツグナが「懐かしい」とすら思える、彼にとっては身に覚えのある日常的な感情だった。
死にたくない。
なら、どうすればいい?
(欄顎樟刀だと一撃の威力はあるが、モーションの隙も生じやすい。敵の懐に飛び込まないと倒せない以上、インファイトは必至。なら――)
「カチリ」とスイッチが入ったように思考を巡らせたツグナは、地面に刺していた黒刀を引き抜き、ゆっくりと納刀する。そしてそれを鞘ごとアイテムボックスの中にそれを仕舞い込み、代わりに後ろの腰に吊った双短剣――三錬琥魄を鞘から引き抜いた。
――圧倒的な数の攻撃で切り刻むっ!
回復薬により痛みが緩和し、ある程度動けるまでに状態が戻ったツグナは、茂みから飛び出し、一直線に九条のもとへと疾駆する。
「アハハハハッ! あの強烈な一撃を食らってなお向かってくるとは。いい度胸だ! いいぜぇ……今度こそブチ殺してやるッ!」
「くっ!? そうそう同じ手は食うか……よぉ!」
ツグナの姿を捉えた九条は、嬉々としてその左腕を右から左に薙いだ。横から迫る尻尾に、タイミングを見計らって飛び上がり、その身を回転させながら滑るように回避する。
「お返しだ! 食らえっ! ――双頭崩牙!」
身を捻り、回転しながら攻撃を回避する最中、ツグナは両手に握り締めた双短剣を目の前の赤黒い竜骨に向けて突き刺した。
「かふ――っ!?」
本能が警告を発した直後、ツグナの右側から強烈な一撃が叩き込まれ、なす術なく吹っ飛ばされる。真横に飛び、生い茂る木々に強かに打ち据えられたツグナは、頭から流れる血を拭うこともせずに相手を見つめる。
「ガハッ! はぁ……はぁ……い、今のは――」
一体何が、とその原因を探ろうとしたツグナの目がそれを捉えるのは同時だった。
「ハッハアアッ! どうだ、強烈だろ? 俺の左腕はヨォ!」
茂みの奥から彼の目に映し出されたのは、己の左腕を巨大な竜の尻尾へと変化させた九条の姿であった。
(なん、だ……ありゃ。あんなモン、反則過ぎだろうが)
ザクッと刀の先を地面に突き立て、刺した刀を杖代わりに身を起こしたツグナは、高笑いをする九条を視界に捉えつつ胸中にそっと吐露する。
右腕のそれと同様、ドス黒い血を押し固めたような巨大な竜の尻尾。もちろんこれも骨のみで形成されたものだが、その威力は「災害」そのものと言える。
振り下ろし・振り上げ・薙ぎ払い――そのどれもが驚異的な破壊力を持つ。
(変化するのは右腕と左腕みたいだな。見てくれは骨だけの竜だが、メチャクチャ硬い……何せサクヅキの攻撃を受けても傷一つ付かないようだしな。おまけにあの巨体を利用した間合いの広さ……一気に距離を詰めて九条に攻撃できないと、またあの薙ぎ払いで吹っ飛ばされる。あれは何度も食らって耐えられるってもんでもない。早々にケリをつけないと、全身砕かれて死ぬな……)
アイテムボックスから回復薬を取り出して一気飲みしたツグナは、痛みが引いてクリアになった頭で九条の攻略法を考える。
(見た感じは死霊系ってトコだな。全身が強固な骨でできていることを考えると、「メイスで砕く」・「火系統魔法」・回復という癒しを与える「補助系統魔法」なんかが攻略の定石だろうな。だが……)
魔法適性が無く、刀をメインの武器とするツグナは、そのいずれの選択もとることはできない。
「ふぅ……」
気を抜けば次々と湧いてくる「敗北」のイメージ。いや、それよりも、勝つ・負ける以前に「無理だ」という諦めの言葉が脳裏を掠める。
自らの心に生まれた「恐怖」。
あれほどまでの異常な妄執に駆られた九条ならば、ツグナの息の根を止めることに何の躊躇いもないだろうとは簡単に想像できる。
死神がその鎌で屠る瞬間を、今か今かと手ぐすね引いて待っている。
「負けるから、どうせ勝てっこないから逃げる? ハッ……上等だよ」
だが、その感覚はツグナが「懐かしい」とすら思える、彼にとっては身に覚えのある日常的な感情だった。
死にたくない。
なら、どうすればいい?
(欄顎樟刀だと一撃の威力はあるが、モーションの隙も生じやすい。敵の懐に飛び込まないと倒せない以上、インファイトは必至。なら――)
「カチリ」とスイッチが入ったように思考を巡らせたツグナは、地面に刺していた黒刀を引き抜き、ゆっくりと納刀する。そしてそれを鞘ごとアイテムボックスの中にそれを仕舞い込み、代わりに後ろの腰に吊った双短剣――三錬琥魄を鞘から引き抜いた。
――圧倒的な数の攻撃で切り刻むっ!
回復薬により痛みが緩和し、ある程度動けるまでに状態が戻ったツグナは、茂みから飛び出し、一直線に九条のもとへと疾駆する。
「アハハハハッ! あの強烈な一撃を食らってなお向かってくるとは。いい度胸だ! いいぜぇ……今度こそブチ殺してやるッ!」
「くっ!? そうそう同じ手は食うか……よぉ!」
ツグナの姿を捉えた九条は、嬉々としてその左腕を右から左に薙いだ。横から迫る尻尾に、タイミングを見計らって飛び上がり、その身を回転させながら滑るように回避する。
「お返しだ! 食らえっ! ――双頭崩牙!」
身を捻り、回転しながら攻撃を回避する最中、ツグナは両手に握り締めた双短剣を目の前の赤黒い竜骨に向けて突き刺した。
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