大人の女性の為の絵本『どうか、私を忘れてください。』

父の告白③

　父は母の形見のハンカチを握り締めながら、
私の顔を見つめてきました。

　その父の表情から、何かやんごとない話が始まるのだと思いました。

　そして、それは母の手紙の事だと思いました。

　母が亡くなってすぐに倒れ、憔悴しきった父を見ていると、
　本当に母を心から愛していたんだ…いや今でも愛しているんだなぁ…と。

　おばちゃんが言っていたように、
冗談ではなく、父が母のあとを追っていくのでは…？
という、危惧が心の片隅に沸いてきました。

「お母さんのことだが…」
父がおもむろに話し始めます。

「お母さんの左手の薬指に、指輪のあとがあったろう？」

「あ….うん」

「お母さんはお父さんと出会う前…一度結婚している」

「そして…２人の子供がいる」

　私は母の様子から、そうなのでは？とずっと思っていましたが、

実際、父の口から改めて言われると、ショックで何も言えませんでした。