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1章
16.王都の休日1
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「はー、楽しかった~!」
「まさかローリィさんまでファン女子だったとは驚いた。しかも闇属性とは……」
俺とメイリンは、夕日が差すカフェテラスで熱々のコーヒーを啜っていた。
そろそろこの店も昼のカフェタイムから、夜のバータイムに切り替わるだろう。
「いやぁ~。ローリィちゃんの闇語りやばかったね~」
「あぁ、どうして彼女は何かにつけて直ぐに監禁したがるんだろうな。あと、鎖で拘束するの大好き過ぎだろ……」
掃討作戦をこなした翌日、俺は『ダリ様&リュート様を見守る会』のお食事オフ会に付き合わされていた。
なんでも、メイリンが王都に来るのに合わせて王都住みの会のメンバーがオフ会を企画してくれたらしい。
何故、そんなコアな会に俺が参加したかと言えば「もしも、会のメンバーと解釈違いがあった時には私を止めてほしい」と言う、オフ会初参加のメイリンたっての願いにより、もしもの暴走を止める役目として俺も同行する事になったのだ。
しかし、オフ会は危惧していた様な解釈違いによる争い等は起こらず、終始和やかに終わった。
ただ俺へのダメージが予想外にデカかった。
「あの監禁からの陵辱のくだりとかイオりん涙目だったよね~」
「だって! ローリィさん俺から視線外さずに語るから常にセクハラを受けてる気分だったんだよ! って言うか、あれはセクハラだった!」
ローリィさんはメイリンの友達で、マーナムギルドのウェイトレスさんだ。
丸眼鏡をかけたおっとりした印象の可愛い鳥獣人の女性なのだが……
「まさか、闇のファン女子だったとは……」
「にゃははは~、ちょっと意外でしょ? バームクーヘンエンドを愛する私でも流石にローリィちゃんの闇はやべーなって思うくらいだから、ハピエン厨のイオりんにはハードが過ぎたよねぇ~ごめんごめん」
メイリンは笑って言うが、こちとら出された料理を咀嚼している間も視線を逸らされる事なく、監禁され後ろを開発され狂う某Dさんの話を延々と聞かされたのだ。そりゃ涙目にもなると言うものだ。
つーか、ホントこれご本人の耳に入ったら訴えられると思うぞ。なんか名誉棄損とかで。
「そう言えばローリィさん、このオフ会のためだけにマーナムから来たんだろ? フットワークの軽さは尊敬するよなぁ」
「解散した瞬間トンボ帰りしたもんね~、それだけイオりんとお話したかったんだよ~」
「へっ、俺と?」
何気なく言われた言葉に、思わずドキリとする。
「イオりんも来るよ~って、連絡入れたらローリィちゃん絶対参加するって」
「えっ? 俺、ローリィさんと話した事とか殆どないんだけど?」
たとえ闇のファン女子でも、可愛い女の子にそんな風に言ってもらえるのは素直に嬉しい。
「うん、ギルドでイオりんの顔を見かける度に監禁ネタが浮かんでたんだって~」
そんな俺の気持ちを裏切るようにメイリンは続けた。
「その情報聞きたくなかったー! マーナムに戻ってからローリィさんと顔合わせずらいわ!」
「そういえば私ね、ローリィちゃんに頼まれてイオりんの絵を描いてて、まだ途中なんだけどコレ~」
監禁ネタが浮かぶ顔ってどんなだよ! っと、なおも苦情を言い続ける俺を華麗にスルーして、メイリンは携帯端末を取り出し俺にある写真を見せる。
「へっ、俺の絵? メイって絵が描ける人だったんだ? どれど……あぁぁこれは、これは」
「中々よく描けてるでしょ~!」
確かによく描けてる。
むしろ、ちゃらんぽらんなメイリンが描いたのが意外過ぎるくらい、その絵は精緻でめちゃくちゃ上手かった。しかしーー
「……がっ、眼帯、包帯、そして傷だらけの翼」
どこの世界もヲタクって本当に変わらないんだな。
「なんで、なんでこの三つを揃えちゃうのかなぁぁぁ!」
「にゃはっー! 頂いたお題は監禁されてるイオりんです~!」
発作的に頭を抱える俺に、メイリンが陽気に笑う。
「です~。じゃないよ! 大体さぁ、お姉さんたち歳いくつだよ! こーゆうのは十四歳前後で卒業しとけよ!」
携帯端末に映し出された絵は、何故か牢屋の中で上半身裸の俺が眼帯を付け、包帯を腕に巻き、傷だらけの翼をバサァっとやっていた。
「この歳になって他人の黒歴史に巻き込まれるなんてビックリだよ!」
「ちなみにこちら、鎖も付く予定です!」
キリッとしたメイリンが嫌な情報を追加した。
「依頼主! 本っ当に鎖大好きだな!」
ツッコミながら、携帯端末の画像を拡大して俺は続ける。
「もぉ、何が嫌かって無駄に絵が上手いからモデルが俺だという事が分かるのがほんっとうに最悪! しかもこれ現物は結構でかいよな、何にどうやって描いてんの?」
「縦一メートルくらいの張りキャンバスに、油絵の具で」
「想像以上に本格的だな! ですが、モデル権限でこの絵の破棄を命じます!」
「えーやだやだやだ~! ここまで描くのに三ヶ月もかかったんだよ!」
ピシャリと絵の処分を命じると、メイリンは首をぶんぶんと横に振って拒絶の姿勢を取る。
しかし、ここは俺だって譲れない。
「俺の方が百万倍やだよ! 万が一この絵がツブヤイッター上とかに出回ったらお前ら全員訴えるからな!」
「えーん、イオりんのケチンボ~!」
「そういう問題じゃねーから!」
流石にコレは見過ごせず、俺は一歩も引かなかったのだがそこはメイリンも同じで、このままでは何時まで経っても平行線を辿ることが明白と判断した俺は、妥協案として顔の描き替えを条件に完成を許可し、完成した暁には俺にいの一番に見せる様に約束をさせた。こんなの最終チェックをしなければ安心して夜も眠れない。
しかし、今日のオフ会では十人ほどのファン女子の中に潜入してきたが、結構きわどいコラ画像等を作ってる人もいて、オフ会で見せ合うくらいならまだしも、オンライン上に流れたら取り返しがつかない事だってあるだろう。
今の所、皆さんそこら辺は配慮してくれてるけど今後もそうとは限らないし、このままではいつか裁判沙汰になってしまうかもしれない。
「やっぱり姉貴の言ってた通り、三次元ジャンルは慎重に扱うべきだよなぁ」
弟のテオも今回の掃討作戦で女性ハンターに沢山写真を撮られていたから、いつか破廉恥なコラージュをされてしまうかもしれない。今では性格に大きな問題のある厄介なイケメンに育ってしまったとはいえ、小さい頃は本当に天使のように可愛らしい子供で、毎晩絵本を読み聞かせて育てたものだ。そんな、可愛い弟が凌辱ネタになど……
「まぁ、あいつはその程度は屁でも無いんだろうが、俺の兄心的にNGだ。あと、昨日のキス現場をファン女子さんにもしも見られてたら俺まで一蓮托生も無いとも言えない。それはイケナイ、監禁陵辱破廉恥コラージュ駄目絶対」
そうだ駄目だ! 本人の意思に背くようなファンアートが生み出されるのは断じて良くない!
しかし、このままではそう言った実在するイケメン達の同人誌的なものが生み出されるのも時間の問題な気がする。
願わくばファン女子たちの目を他に向ける様な何か……何かがあれば――あっ、閃いた!
「イオりんってば、さっきから何をブツブツ言ってんの~?」
ぶつぶつと独り言を言いながら思考に耽っていた俺に、すっかり冷めたコーヒーを啜りながらメイリンは不思議そうに首を捻った。
「なぁ! メイってば、こんなに絵が上手いんだから漫画を描けよ!」
「漫画ってあの絵本の進化版みたいなやつ?」
「そう、それの更に進化したやつ。自分好みの登場人物を作って、大人も楽しめるもっとドラマチックな展開にしてさ」
この世界の漫画はまだ発展途上の為、娯楽性が低く、対象年齢も小さな子供向けだ。
しかし、だからこそやる価値があるのではないかと俺は考えたのだ。
「えー、めんどくさい」
「馬鹿だなー、その話がファン女子の間で流行れば、メイの作ったお話しからファンアートを描いてくれたり、新たな解釈で二次創作漫画を描いてくれるかもしれないんだぞ?」
「うーん、イマイチぴんと来ない。イオりんをモデルにファンアートはダメなの?」
「訴える」
イマイチぴんと来ないから分かりやすいモノをネタにしたいのだろう。が、そこはピシャリと切り捨てる。
「ひっ酷い! 私たちってば同胞であり仲間であり友達であるのに~!」
「同胞で仲間で友達の、性癖が疑われる様な変態半裸を描くやつに酷いなんて言われたくない」
「でも油絵で漫画って結構時間かかっちゃうよ?」
「いや、油絵はやめなさい。メイ、このペンでコレに俺を単純化して描いてみてくれないか?」
俺は自分の鞄の中からメモ帳とペンを取り出してメイリンに渡した。
「こんな感じ?」
「おっ流石に上手いな、もうちょっとこんな風にデフォルメして」
メイリンがサラサラと描いた妙に上手い俺の似顔絵の横に、俺もメイリンを漫画絵風にして描き込む。
ここで何で当然の如く俺も絵を描けるかと言えば、転生前に姉貴の原稿を手伝っていた際に身につけた昔とった杵柄と言うやつだ。
「おぉー! イオりんって面白い絵を描くのね! この耳の生えた可愛いの、これは私? 」
「そう、俺にはこれくらいしか描けないけど、こんな感じで人物を描いて行けば油絵より早く絵が描けるだろ?」
猫耳の生えた女性なんて前の世界なら萌の塊だったよなぁ。とか考えていたせいか、思いのほか可愛く描けてしまった猫娘のイラストに、メイリンが目に見えて喜んだ。
こういう素直な所は、メイリンの可愛いところである。
「コレに台詞をつければ良いの?」
「そう。最初から完璧を目指さないで、自分が描いてて楽しいモノを少しずつ描いてみたら案外嵌るんじゃないか?」
「にゃるほどね~、そう言われると何か挑戦してみたいような気持になって来た! んじゃ、イオりんはお話し考えるの手伝ってよ!」
「そうだな、一から考えるのは結構大変だから伝承とか実際にあるダンジョンであった事件とかを、お話のモデルにしてみるか?」
やる気になったメイリンが目をキラキラさせてこちらを見るので、ファン女子達の興味を生身から逸らす為に誘導している身として、ほんの少し罪悪感を感じてしまう。
しかし、それもこれも勝手に成人向け同人誌のモデルにされる被害者を出さない為だ!
「おっいいね~! イケメンいっぱい出るお話にしようね!」
「あぁ! イケメンいっぱい出そうな!」
こうして俺は、自らの保身の為にメイリンに漫画を描かせる事となった。
これがのちにファン女子界で一大ブームを引き起こすのだが、この時の俺が知る由も無い。
「まさかローリィさんまでファン女子だったとは驚いた。しかも闇属性とは……」
俺とメイリンは、夕日が差すカフェテラスで熱々のコーヒーを啜っていた。
そろそろこの店も昼のカフェタイムから、夜のバータイムに切り替わるだろう。
「いやぁ~。ローリィちゃんの闇語りやばかったね~」
「あぁ、どうして彼女は何かにつけて直ぐに監禁したがるんだろうな。あと、鎖で拘束するの大好き過ぎだろ……」
掃討作戦をこなした翌日、俺は『ダリ様&リュート様を見守る会』のお食事オフ会に付き合わされていた。
なんでも、メイリンが王都に来るのに合わせて王都住みの会のメンバーがオフ会を企画してくれたらしい。
何故、そんなコアな会に俺が参加したかと言えば「もしも、会のメンバーと解釈違いがあった時には私を止めてほしい」と言う、オフ会初参加のメイリンたっての願いにより、もしもの暴走を止める役目として俺も同行する事になったのだ。
しかし、オフ会は危惧していた様な解釈違いによる争い等は起こらず、終始和やかに終わった。
ただ俺へのダメージが予想外にデカかった。
「あの監禁からの陵辱のくだりとかイオりん涙目だったよね~」
「だって! ローリィさん俺から視線外さずに語るから常にセクハラを受けてる気分だったんだよ! って言うか、あれはセクハラだった!」
ローリィさんはメイリンの友達で、マーナムギルドのウェイトレスさんだ。
丸眼鏡をかけたおっとりした印象の可愛い鳥獣人の女性なのだが……
「まさか、闇のファン女子だったとは……」
「にゃははは~、ちょっと意外でしょ? バームクーヘンエンドを愛する私でも流石にローリィちゃんの闇はやべーなって思うくらいだから、ハピエン厨のイオりんにはハードが過ぎたよねぇ~ごめんごめん」
メイリンは笑って言うが、こちとら出された料理を咀嚼している間も視線を逸らされる事なく、監禁され後ろを開発され狂う某Dさんの話を延々と聞かされたのだ。そりゃ涙目にもなると言うものだ。
つーか、ホントこれご本人の耳に入ったら訴えられると思うぞ。なんか名誉棄損とかで。
「そう言えばローリィさん、このオフ会のためだけにマーナムから来たんだろ? フットワークの軽さは尊敬するよなぁ」
「解散した瞬間トンボ帰りしたもんね~、それだけイオりんとお話したかったんだよ~」
「へっ、俺と?」
何気なく言われた言葉に、思わずドキリとする。
「イオりんも来るよ~って、連絡入れたらローリィちゃん絶対参加するって」
「えっ? 俺、ローリィさんと話した事とか殆どないんだけど?」
たとえ闇のファン女子でも、可愛い女の子にそんな風に言ってもらえるのは素直に嬉しい。
「うん、ギルドでイオりんの顔を見かける度に監禁ネタが浮かんでたんだって~」
そんな俺の気持ちを裏切るようにメイリンは続けた。
「その情報聞きたくなかったー! マーナムに戻ってからローリィさんと顔合わせずらいわ!」
「そういえば私ね、ローリィちゃんに頼まれてイオりんの絵を描いてて、まだ途中なんだけどコレ~」
監禁ネタが浮かぶ顔ってどんなだよ! っと、なおも苦情を言い続ける俺を華麗にスルーして、メイリンは携帯端末を取り出し俺にある写真を見せる。
「へっ、俺の絵? メイって絵が描ける人だったんだ? どれど……あぁぁこれは、これは」
「中々よく描けてるでしょ~!」
確かによく描けてる。
むしろ、ちゃらんぽらんなメイリンが描いたのが意外過ぎるくらい、その絵は精緻でめちゃくちゃ上手かった。しかしーー
「……がっ、眼帯、包帯、そして傷だらけの翼」
どこの世界もヲタクって本当に変わらないんだな。
「なんで、なんでこの三つを揃えちゃうのかなぁぁぁ!」
「にゃはっー! 頂いたお題は監禁されてるイオりんです~!」
発作的に頭を抱える俺に、メイリンが陽気に笑う。
「です~。じゃないよ! 大体さぁ、お姉さんたち歳いくつだよ! こーゆうのは十四歳前後で卒業しとけよ!」
携帯端末に映し出された絵は、何故か牢屋の中で上半身裸の俺が眼帯を付け、包帯を腕に巻き、傷だらけの翼をバサァっとやっていた。
「この歳になって他人の黒歴史に巻き込まれるなんてビックリだよ!」
「ちなみにこちら、鎖も付く予定です!」
キリッとしたメイリンが嫌な情報を追加した。
「依頼主! 本っ当に鎖大好きだな!」
ツッコミながら、携帯端末の画像を拡大して俺は続ける。
「もぉ、何が嫌かって無駄に絵が上手いからモデルが俺だという事が分かるのがほんっとうに最悪! しかもこれ現物は結構でかいよな、何にどうやって描いてんの?」
「縦一メートルくらいの張りキャンバスに、油絵の具で」
「想像以上に本格的だな! ですが、モデル権限でこの絵の破棄を命じます!」
「えーやだやだやだ~! ここまで描くのに三ヶ月もかかったんだよ!」
ピシャリと絵の処分を命じると、メイリンは首をぶんぶんと横に振って拒絶の姿勢を取る。
しかし、ここは俺だって譲れない。
「俺の方が百万倍やだよ! 万が一この絵がツブヤイッター上とかに出回ったらお前ら全員訴えるからな!」
「えーん、イオりんのケチンボ~!」
「そういう問題じゃねーから!」
流石にコレは見過ごせず、俺は一歩も引かなかったのだがそこはメイリンも同じで、このままでは何時まで経っても平行線を辿ることが明白と判断した俺は、妥協案として顔の描き替えを条件に完成を許可し、完成した暁には俺にいの一番に見せる様に約束をさせた。こんなの最終チェックをしなければ安心して夜も眠れない。
しかし、今日のオフ会では十人ほどのファン女子の中に潜入してきたが、結構きわどいコラ画像等を作ってる人もいて、オフ会で見せ合うくらいならまだしも、オンライン上に流れたら取り返しがつかない事だってあるだろう。
今の所、皆さんそこら辺は配慮してくれてるけど今後もそうとは限らないし、このままではいつか裁判沙汰になってしまうかもしれない。
「やっぱり姉貴の言ってた通り、三次元ジャンルは慎重に扱うべきだよなぁ」
弟のテオも今回の掃討作戦で女性ハンターに沢山写真を撮られていたから、いつか破廉恥なコラージュをされてしまうかもしれない。今では性格に大きな問題のある厄介なイケメンに育ってしまったとはいえ、小さい頃は本当に天使のように可愛らしい子供で、毎晩絵本を読み聞かせて育てたものだ。そんな、可愛い弟が凌辱ネタになど……
「まぁ、あいつはその程度は屁でも無いんだろうが、俺の兄心的にNGだ。あと、昨日のキス現場をファン女子さんにもしも見られてたら俺まで一蓮托生も無いとも言えない。それはイケナイ、監禁陵辱破廉恥コラージュ駄目絶対」
そうだ駄目だ! 本人の意思に背くようなファンアートが生み出されるのは断じて良くない!
しかし、このままではそう言った実在するイケメン達の同人誌的なものが生み出されるのも時間の問題な気がする。
願わくばファン女子たちの目を他に向ける様な何か……何かがあれば――あっ、閃いた!
「イオりんってば、さっきから何をブツブツ言ってんの~?」
ぶつぶつと独り言を言いながら思考に耽っていた俺に、すっかり冷めたコーヒーを啜りながらメイリンは不思議そうに首を捻った。
「なぁ! メイってば、こんなに絵が上手いんだから漫画を描けよ!」
「漫画ってあの絵本の進化版みたいなやつ?」
「そう、それの更に進化したやつ。自分好みの登場人物を作って、大人も楽しめるもっとドラマチックな展開にしてさ」
この世界の漫画はまだ発展途上の為、娯楽性が低く、対象年齢も小さな子供向けだ。
しかし、だからこそやる価値があるのではないかと俺は考えたのだ。
「えー、めんどくさい」
「馬鹿だなー、その話がファン女子の間で流行れば、メイの作ったお話しからファンアートを描いてくれたり、新たな解釈で二次創作漫画を描いてくれるかもしれないんだぞ?」
「うーん、イマイチぴんと来ない。イオりんをモデルにファンアートはダメなの?」
「訴える」
イマイチぴんと来ないから分かりやすいモノをネタにしたいのだろう。が、そこはピシャリと切り捨てる。
「ひっ酷い! 私たちってば同胞であり仲間であり友達であるのに~!」
「同胞で仲間で友達の、性癖が疑われる様な変態半裸を描くやつに酷いなんて言われたくない」
「でも油絵で漫画って結構時間かかっちゃうよ?」
「いや、油絵はやめなさい。メイ、このペンでコレに俺を単純化して描いてみてくれないか?」
俺は自分の鞄の中からメモ帳とペンを取り出してメイリンに渡した。
「こんな感じ?」
「おっ流石に上手いな、もうちょっとこんな風にデフォルメして」
メイリンがサラサラと描いた妙に上手い俺の似顔絵の横に、俺もメイリンを漫画絵風にして描き込む。
ここで何で当然の如く俺も絵を描けるかと言えば、転生前に姉貴の原稿を手伝っていた際に身につけた昔とった杵柄と言うやつだ。
「おぉー! イオりんって面白い絵を描くのね! この耳の生えた可愛いの、これは私? 」
「そう、俺にはこれくらいしか描けないけど、こんな感じで人物を描いて行けば油絵より早く絵が描けるだろ?」
猫耳の生えた女性なんて前の世界なら萌の塊だったよなぁ。とか考えていたせいか、思いのほか可愛く描けてしまった猫娘のイラストに、メイリンが目に見えて喜んだ。
こういう素直な所は、メイリンの可愛いところである。
「コレに台詞をつければ良いの?」
「そう。最初から完璧を目指さないで、自分が描いてて楽しいモノを少しずつ描いてみたら案外嵌るんじゃないか?」
「にゃるほどね~、そう言われると何か挑戦してみたいような気持になって来た! んじゃ、イオりんはお話し考えるの手伝ってよ!」
「そうだな、一から考えるのは結構大変だから伝承とか実際にあるダンジョンであった事件とかを、お話のモデルにしてみるか?」
やる気になったメイリンが目をキラキラさせてこちらを見るので、ファン女子達の興味を生身から逸らす為に誘導している身として、ほんの少し罪悪感を感じてしまう。
しかし、それもこれも勝手に成人向け同人誌のモデルにされる被害者を出さない為だ!
「おっいいね~! イケメンいっぱい出るお話にしようね!」
「あぁ! イケメンいっぱい出そうな!」
こうして俺は、自らの保身の為にメイリンに漫画を描かせる事となった。
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