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高潔な騎士は月光に沈む
しおりを挟むもうどれほど、あの月を見ているのか…
騎士は森の中を彷徨っていた。
黒々と続く森は深く、どこも同じに見える。もうどれ程の時が過ぎたのかすら定かでは無い。
身に纏う白銀の鎧は日に日に重く、歩む足を鈍くさせた。
それでも騎士はその高潔さ故に、頑なに重い鎧を纏い続けていた。
見上げれば絡み合う木々の枝の狭間から、白い月が後を追ってくるのが見える。
その月の光すら鎧の重さを増しているように感じて、騎士は耐え切れずに膝を折った。
急に目前に視界が開けたのは、誘いだったのか?
広場のようなそこは、幾本かの崩れた石の柱が月光に洗われて白く。
さながら巨大な生き物の骨の様にも見えた。
中心に落ちる影のように立つ姿は、いったい何者かと騎士は目を凝らす。
白くて黒い、何か。
鳥でもなく獣でもなく、女でもなく男でもない。
すらりとした肢体は月光に濡れ輝いて見えた。
ではこれが、森の奥に棲むという…
「悪魔なのか?」
『だとしたら?』
問う騎士に、悪魔は優美な微笑みを向ける。
「ならば倒さねばならん」
『何故?』
「それが騎士の使命だからだ」
『そんな重い鎧を纏っていては、身動きもままならないだろうに』
黒い羽根に縁取られた長いローブの裾がふわりと月光の中を舞い、月を隠す。
その陰の中。
騎士の鎧は音をたてて砕け散った。
『鎧など無いほうが自由に動けるだろう』
すい…と上がった長く綺麗な指には濃紫色の爪。
それが示す先には森は無かった。
鎧を失った騎士が目を戻した時。
悪魔の姿は何処にも無かった。
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