ヲカカ童話集

ヲカカ

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月人

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むかしむかし、在る処の話であります。
まだ、日本人が髷をつけていた頃。かぐや姫という物語が流行りました。
「月というのはどんな処かな。」
茶屋の娘が常連さんに尋ねます。
「そら、勿論綺麗な所じゃねえかな―。」
月というのは、まだ私達には遠く遠い場所だったのです。
立派な髷をつけた、金持ちの町人が言いました。あまり良い噂を聞かない奴です。
「お前さんら、こんな話は言っているかい?月から着たつぅ話。」
常連さんは、顔をしかめ。
「かぐや姫だろぉう。知ってら~そんな事。」
町人は得意げな顔をしています。
「違う、違う。殿さまの話だい。」
「「お殿さま??」」
茶屋の娘と常連は、ピンとかない顔をしました。
「まあ、いい。夜に家に来な、聴かせてやろう。」
こんな些細な事が事の始まり、否、意外と重大な事が起こる前はこんなものかもしれません。

場所、時刻は変わって、夜の町人の家。集まった3人で話は進みます。
「そんでぇ、な~にを聞かせてくれるってぇ??」
「大したぁことじゃぁねぇがな。」
「はやくはやく。聞かせておくれよ。」
「仕方ぁ、ねぇなぁぁ。其れは―――」

―――殿さまの屋敷で起こった事。ある夜、殿様の屋敷に眩い光が落ちてきた。
そこから、殿様は人が変わっちまった。人使いの荒く、言葉使いの荒い殿さまとは、打って変わって優しく温厚な人に変わった。
そして、毎日月を肴に酒を飲むようになった。前までは遊女を肴にしていたのになぁ。
そしてその光は、殿様だけでなく、他の町人や農民、武士まで見たっていうんでぇ。かぐや姫なんて昔のが流行り出したのもその光が似ているからじゃねぇ勝手話で。

「なあ、何でそんなのが流行るんです?」
「その光に手軽に会えるからでぇ。方法を知っている奴が広めて、」
ピッカ
閃光が駆け抜けましたとでもいうのでしょうか。気付いた時には、遅し。


「お偉いサンは、見えないでぇ。変わらんのじゃ。」
殿さまは、今日も手のひらで踊る。殿さまの掌の上で、武士が踊る。武士の上で、町人は踊る。
月は今日も空高くから、見下ろしていたのぉでした。
人類には、まぁぁだ届きゃんせ。


~後書き~
童話の何かやってるじゃないですか。参加したかった。
今は、まだ気が抜けないのでまた今度。
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