ヲカカ童話集

ヲカカ

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金の子供

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昔々、或る所に幸せな夫婦がいました。
喧嘩一つない村でも有名なおしどり夫婦です。
幸せな夫婦には、二つ不満がありました。お金が無いことと子供が出来ない事です。
妻と夫は、それでも今の暮らしがあるから良いと思っていました。そんな時、噂を聞きました。
村の近くに在る、願いの山の山頂から願い事を叫ぶとその願いがかなうというものでした。
夫婦は、子供とお金が欲しかったのでその山に行きました。行くまでが、なんとも大変だったのです。
(願い山:入口)と書かれた、立て札が何個もありました。妻と夫は、どちらに行くかで喧嘩になってしまいました。

「こっちの方が良いじゃない!!」
「いいや。こっちに行くぞ!!」

久し振りの喧嘩だったので、長く長く続いてしまいました。
仕舞いには、夫への不満や、妻への不満など、唯の喧嘩になってしまいました。

「貴方のいびきは、五月蠅いのよ。静かに寝られやしないわ!!」
「お前の口だって、臭いじゃないか。歯磨きしているのか。」
「貴方の足は、クサヤ好きだって嗅げやしないわ!!」
「お前の足だって、大根みたいに太いじゃないか。恥ずかしくて、妻だと紹介できないわ。」
「そんな酷い。もう良いわ。・・帰る。」
「・・・俺もだ。」

喧嘩は、ヒートアップして周りが暗くなるまでしていたので、山に入れなくなってしまいました。
家に帰っても夫婦は、一言もしゃべりませんでした。こんな事は、始めてです。
また次の日。
夫婦は、山へ行きました。
二人とも別々に歩いていきます。
でも、少しすると妻の事が恋しくなりました。
「大丈夫かなぁ。アイツ、昔から運動苦手だったものなぁ。」
妻の方も、
「あの人は、大丈夫かしら。心配になってきたわ。」

問題は、起きないまま二人とも頂上に着きました。
「貴方、大丈夫だったの?」
「お前こそ。昨日はごめんな。」
「私こそ。ごめんなさい。」

夫婦は、まだ自分たちは口に出していなかっただけで、不満がたくさんあった事に気が付きました。
金や子供以前に自分達は、我慢している事があるので、山には、こう願いました。
「夫婦の間で我慢はしない。」
山が願いをかなえたかどうかは知りませんが、今までの本音を言えない生活は消え去りました。前より喧嘩は多くなってしまったかもしれません、でも黙っているストレスから解放されました。

山の御蔭である事を知りました。
人間は、自分の欲望の前では、今まで取り繕っていたモノも崩れ去ると知りました。

ストレスが無くなったおかげか、子供にも恵まれ、仕事も順調に出来るようになり、お金も手に入りました。
その家族は、本音を言い過ぎるあまりケンカが絶えませんがお金持ちの家族は幸せに暮らしたとさ。
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