聖女の幼なじみ

裏 討伐終了

　聖女による魔素の浄化と魔王の討伐という地獄が終了した。
　事態は町で平穏に過ごしていた者たちが想像していたよりもかなり酷い被害をもたらしていた。

　無傷ですんだのは聖女ただ一人だという。
　
　同行者で軽い怪我ですんだものは少なく、死者、重傷者が大半を占めていた。
　俺の同級生たちのほとんどが帰ってこなかった。生き残った数人もかなりの怪我を負い騎士への復帰は不可能だという。

　もしも、もしも俺が聖女に囚われたままだったら、俺は聖女のもたらす多幸感に酔いしれながら聖女を守り、そのまま命を落としていただろう。最後の言葉が「メルを守れて幸せだった」という世迷い事だったかもしれないと思うとゾッとする。

　エレアの言っていたことは正しかった。聖女はドラゴン討伐を促し、魔素を浄化し流れを正す者だ。聖女に囚われた実力者は自ら望んでドラゴンを討伐し、聖女を守る。使命感と多幸感に酔いながら。なんの疑問を覚えることなどないまま。
　彼らは聖女のために命を捧げた。


　聖女たちが凱旋し、聖女と第１王子の婚約が発表された。
　討伐に参加した第２王子は討伐時に片目を失ったが、元聖女候補で婚約者でもある公爵令嬢の治癒魔法で奇跡的に全快したという。教会は公爵令嬢を新たな聖女と認めた。たぶん女神ではなく教会が与えた称号だろう。
　二人はそのまま結婚する。討伐を成功させた第２王子が次期国王となることに決まった。

　第１王子は聖女と共に教会に入り、国民の安寧を祈るという。

　メルが教会に入る。
　正直似合わない。
　メルは王族になり、王城に入るつもりだったと思う。