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裏 婚約?
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フレイの意見は突拍子もないようで説得力がある。みんなもフレイの勢いに飲み込まれて納得し始めている、
だけど、根本的に間違えている気がする。
「いや、無理だろう、それ」
「なんで?奴隷だから?エレアがそんなこと気にすると思ってる?」
「いや、そうじゃなくて」
俺は今までのエレアとの付き合いを振り返ってみる。
うん、無理がある。
「そもそも、エレアは俺との結婚を死ぬほど嫌がると思う」
広場で毛虫を見るかの様に俺を見ていたエレアの目が忘れられない。
カルディアン家は全員キョトンとして、それからザワついた。
「そんなことあるか?(エル)」
「普通こんなイケメンとの結婚嫌がらないって(ノア)」
「いや、でも、奴隷との結婚は気にしないけど、イケメンとの結婚は嫌がる。エレアならありそうだ(父)」
「そういえば、エレアって広場でもユリアちゃんにしか興味持たなかったかも(フレイ)」
面白いほどザワついた後、クルトが急に立ち上がった。
「お父さん、ちょっとエレアに聞いてくる」
家具をガタつかせながら、勢いよく部屋を出ていく。
みんな唖然としたが、ノアが我に返り俺に向き直った。
「カイル、二人の会話聞ける?」
「俺は聞こえる」
「俺たちにも聞こえるようにできる?」
俺は首を横に振る。するとフレイが立ち上がり俺の後ろに立った。
「僕がやる」
俺の両耳に手を添える。
赤い魔力が動いたと思ったら、ソファーの中央に置かれたテーブルにフレイの火の魔力をまとった妖精に似た何かが現れた。
フレイが何をどうしたのか全くわからない。
その何かは口をパクパク動かし、俺の拾う声を喋りだす。
すごいな、コレ。
少し感動して妖精を見ていると、妖精の口からクルトの声が聞こえてきた。
「エレア、お前の結婚が決まったよ」
クルトはいきなりエレアに告げた。
いくらなんでもそれはないだろうとみんなが思った。
「相手はカイル君だ。二人仲が良いし、いいよね」
「…え?」
エレアの声が今まで聞いたことがないくらいに低い。
やっぱりなと思う俺の横でノアが頭を抱えた。
これはダメだろうと誰もが思ったとき、エレアの呟く声が聞こえた。
普段なら雑音に紛れて聞こえないエレアの呟きだが、フレイの妖精は俺の耳に聞こえる通りに話しだす。
「あれ?聖女が幼なじみを選ばずに終わったとき、幼なじみは他の幼友達と結婚しました。って、あれ?相手はユリアじゃないの?あれ?…ユリアってもう結婚してる。…もしかして、幼なじみの結婚相手って、…私だった?」
しばらくの沈黙の後、エレアは言った。
「まあ、いいか」
いや、いいのか?
俺が思った疑問を回りのみんなが持つことはなかった。
「おい、今のって女神の神託の一部なのか?(エル)」
「え、神託ってそんなことまで含まれてるの?(ノア)」
「エレアの知ってる神託って、ちょっとおかしいぞ(エル)」
再びザワめく部屋の中で、フレイはゆっくりと俺の耳から手を下ろした。
消えるかと思ったフレイの妖精は、なぜか顔を動かし俺を見た。そのまま口をパクパクさせながら聞いたことのない声で言った。
「よろしくな、未来の弟よ」
そんな芸の細かさはいらない。
俺は神託通りにエレアと結婚することになった。
だけど、根本的に間違えている気がする。
「いや、無理だろう、それ」
「なんで?奴隷だから?エレアがそんなこと気にすると思ってる?」
「いや、そうじゃなくて」
俺は今までのエレアとの付き合いを振り返ってみる。
うん、無理がある。
「そもそも、エレアは俺との結婚を死ぬほど嫌がると思う」
広場で毛虫を見るかの様に俺を見ていたエレアの目が忘れられない。
カルディアン家は全員キョトンとして、それからザワついた。
「そんなことあるか?(エル)」
「普通こんなイケメンとの結婚嫌がらないって(ノア)」
「いや、でも、奴隷との結婚は気にしないけど、イケメンとの結婚は嫌がる。エレアならありそうだ(父)」
「そういえば、エレアって広場でもユリアちゃんにしか興味持たなかったかも(フレイ)」
面白いほどザワついた後、クルトが急に立ち上がった。
「お父さん、ちょっとエレアに聞いてくる」
家具をガタつかせながら、勢いよく部屋を出ていく。
みんな唖然としたが、ノアが我に返り俺に向き直った。
「カイル、二人の会話聞ける?」
「俺は聞こえる」
「俺たちにも聞こえるようにできる?」
俺は首を横に振る。するとフレイが立ち上がり俺の後ろに立った。
「僕がやる」
俺の両耳に手を添える。
赤い魔力が動いたと思ったら、ソファーの中央に置かれたテーブルにフレイの火の魔力をまとった妖精に似た何かが現れた。
フレイが何をどうしたのか全くわからない。
その何かは口をパクパク動かし、俺の拾う声を喋りだす。
すごいな、コレ。
少し感動して妖精を見ていると、妖精の口からクルトの声が聞こえてきた。
「エレア、お前の結婚が決まったよ」
クルトはいきなりエレアに告げた。
いくらなんでもそれはないだろうとみんなが思った。
「相手はカイル君だ。二人仲が良いし、いいよね」
「…え?」
エレアの声が今まで聞いたことがないくらいに低い。
やっぱりなと思う俺の横でノアが頭を抱えた。
これはダメだろうと誰もが思ったとき、エレアの呟く声が聞こえた。
普段なら雑音に紛れて聞こえないエレアの呟きだが、フレイの妖精は俺の耳に聞こえる通りに話しだす。
「あれ?聖女が幼なじみを選ばずに終わったとき、幼なじみは他の幼友達と結婚しました。って、あれ?相手はユリアじゃないの?あれ?…ユリアってもう結婚してる。…もしかして、幼なじみの結婚相手って、…私だった?」
しばらくの沈黙の後、エレアは言った。
「まあ、いいか」
いや、いいのか?
俺が思った疑問を回りのみんなが持つことはなかった。
「おい、今のって女神の神託の一部なのか?(エル)」
「え、神託ってそんなことまで含まれてるの?(ノア)」
「エレアの知ってる神託って、ちょっとおかしいぞ(エル)」
再びザワめく部屋の中で、フレイはゆっくりと俺の耳から手を下ろした。
消えるかと思ったフレイの妖精は、なぜか顔を動かし俺を見た。そのまま口をパクパクさせながら聞いたことのない声で言った。
「よろしくな、未来の弟よ」
そんな芸の細かさはいらない。
俺は神託通りにエレアと結婚することになった。
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