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ハジマリの章
穏やかな幸せ
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あれよあれよと準備を終え、とうとう始業式の日がやってきてしまった。
フィフィは上品な制服を身にまとい、鏡の前でくるくると回っている。
制服には黒い刺繡が施されており、地味すぎず、派手すぎない清楚な出で立ちだ。
「…もえ。おかしいところはないかしら?」
自信満々の顔で振り向くフィフィにもえは力強く頷いた。
「今日もフィフィは世界一可愛いよ!!」
毎日のように可愛い可愛いと言われ続けているが、全く慣れることがないようで、彼女は途端に顔を真っ赤にした。
「…!ま、まぁ当然のこと…です、わ。」
しどろもどろな返事にもえは更に頰を緩める。
あぁぁあぁ照れてる!可愛い!可愛い!
内心悶えているのが伝わったのかフィフィはこちらをじとーっとした目で見つめた。
「もえ…。もういいわ。行きましょう。」
頰を膨らませてプイッと顔を背けたフィフィの様子にもえは心をときめかせながらも謝った。
「ご、ごめん!フィフィが可愛すぎるのが悪いの!あっちょっと待って置いてかないで!?」
必死に謝るもえにフィフィは一つため息をこぼし、仕方がないと言いたげに許してみせた。
「まったく…もえは私のことを甘やかしすぎですわ…!」
文句を言いつつもその口は笑みを浮かべている。
馬車に乗り込もうとすればすかさず手が差し出され、小さな手をその上に乗せればぐいっと力強く引き上げられた
「さぁ、いざ初等科へ!私の才を見せつけて差し上げますわ!」
高らかに宣言するフィフィをもえは眩しげに見つめ、おー!と気の抜けた返事を返した。
長ったらしい学園長の話を終え、クラス発表が行われる。
事前に社交界などで知り合っていることも少なくないため一緒だ、一人だ、という声があちこちから聞こえた。
それはフィフィも例外ではなく。
「まぁまぁまぁ!フィフィリア様!同じクラスですわね!相変わらず見事なお洋服ですわね…」
軽やかな足取りで二人に突っ込んできたのはレモシエルである。
超がつくマイペースな服ヲタガール。
フィフィの制服を隅々まで眺めた後うんうんとうめき声をあげている。
「そ、そうねレモシー…エ、ル。わ、私と同じクラスになれたことを光栄に思っていいわよ!」
一方見られているフィフィは友人とのやりとりに緊張したのか目をそらしながらふふんと鼻をならした。
レモシエルはフィフィにとってのはじめての友人であり、唯一の友人である。
人と深く関わることのなかった彼女には距離感がわからないのか、愛称を呼びかけたりチラチラと視線を送ったりと小動物のような行動を繰り返していた。
その様子にもえはぐぅとうめき声を上げ、胸を押さえた。
「…はぁぁぁ、本当にこの刺繍なんて素晴らしいなんてもんじゃ…ってひぃちゃん様!?」
呆れたような視線を送っているフィフィとは相対的にレモシエルは驚きの声を上げる。
「う、うぅ…今日もフィフィが尊いぃぃ…」
絞り出された言葉の意味を察したレモシエルはそっともえから視線を外した。
担任となったのはケトン・ハルルーズという男爵家の三男だ。
子供達を見下すことも、貴族の子息令嬢たちにへりくだることもない姿は多くの者に好意的に捉えられた。
フィフィやレモシエル、もえを含め、である。
そんなこんなで大きなアクシデントもなく、彼女たちの学園生活は穏やかに始まった。
フィフィは上品な制服を身にまとい、鏡の前でくるくると回っている。
制服には黒い刺繡が施されており、地味すぎず、派手すぎない清楚な出で立ちだ。
「…もえ。おかしいところはないかしら?」
自信満々の顔で振り向くフィフィにもえは力強く頷いた。
「今日もフィフィは世界一可愛いよ!!」
毎日のように可愛い可愛いと言われ続けているが、全く慣れることがないようで、彼女は途端に顔を真っ赤にした。
「…!ま、まぁ当然のこと…です、わ。」
しどろもどろな返事にもえは更に頰を緩める。
あぁぁあぁ照れてる!可愛い!可愛い!
内心悶えているのが伝わったのかフィフィはこちらをじとーっとした目で見つめた。
「もえ…。もういいわ。行きましょう。」
頰を膨らませてプイッと顔を背けたフィフィの様子にもえは心をときめかせながらも謝った。
「ご、ごめん!フィフィが可愛すぎるのが悪いの!あっちょっと待って置いてかないで!?」
必死に謝るもえにフィフィは一つため息をこぼし、仕方がないと言いたげに許してみせた。
「まったく…もえは私のことを甘やかしすぎですわ…!」
文句を言いつつもその口は笑みを浮かべている。
馬車に乗り込もうとすればすかさず手が差し出され、小さな手をその上に乗せればぐいっと力強く引き上げられた
「さぁ、いざ初等科へ!私の才を見せつけて差し上げますわ!」
高らかに宣言するフィフィをもえは眩しげに見つめ、おー!と気の抜けた返事を返した。
長ったらしい学園長の話を終え、クラス発表が行われる。
事前に社交界などで知り合っていることも少なくないため一緒だ、一人だ、という声があちこちから聞こえた。
それはフィフィも例外ではなく。
「まぁまぁまぁ!フィフィリア様!同じクラスですわね!相変わらず見事なお洋服ですわね…」
軽やかな足取りで二人に突っ込んできたのはレモシエルである。
超がつくマイペースな服ヲタガール。
フィフィの制服を隅々まで眺めた後うんうんとうめき声をあげている。
「そ、そうねレモシー…エ、ル。わ、私と同じクラスになれたことを光栄に思っていいわよ!」
一方見られているフィフィは友人とのやりとりに緊張したのか目をそらしながらふふんと鼻をならした。
レモシエルはフィフィにとってのはじめての友人であり、唯一の友人である。
人と深く関わることのなかった彼女には距離感がわからないのか、愛称を呼びかけたりチラチラと視線を送ったりと小動物のような行動を繰り返していた。
その様子にもえはぐぅとうめき声を上げ、胸を押さえた。
「…はぁぁぁ、本当にこの刺繍なんて素晴らしいなんてもんじゃ…ってひぃちゃん様!?」
呆れたような視線を送っているフィフィとは相対的にレモシエルは驚きの声を上げる。
「う、うぅ…今日もフィフィが尊いぃぃ…」
絞り出された言葉の意味を察したレモシエルはそっともえから視線を外した。
担任となったのはケトン・ハルルーズという男爵家の三男だ。
子供達を見下すことも、貴族の子息令嬢たちにへりくだることもない姿は多くの者に好意的に捉えられた。
フィフィやレモシエル、もえを含め、である。
そんなこんなで大きなアクシデントもなく、彼女たちの学園生活は穏やかに始まった。
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