とある1日の二人

sino

文字の大きさ
3 / 9

閑話 友人との邂逅

しおりを挟む
「それで、その後はどうだったんだ?」
缶コーヒー片手に彼はそう切り出した。
どうやらこの前の出来事が噂になって彼の耳に入ったようである。
「特にないさ。向こうの家まで送って、傘は翌日に返した。」
私がそう切り返すと彼は「当てが外れた」と言って顔をしかめた。
「それだけ?相合傘までしたんだろ?」
「ああ。」
彼はため息をついた。
「お前は相変わらずだ。中途半端な所で手を引いてしまう。少しは勇気を出してみたらどうだ?臆病者。」
「おいおい随分な言い方じゃないか。紳士と呼んでくれ。」
「紳士は告白の場面を忘れたりはしないと思うがな。」
その物言いに私は何も言い返せなかった。その様子を見てようやく満足したのか、彼は缶コーヒーを手に取り、自前のカップに注ぎ始めた。
彼、もとい私の友人は妙に拘りが強い。
「コーヒーは目で楽しむもの」とまで豪語する彼は、カップに入ってないコーヒーを一滴たりとも飲もうとしないのだ。
「どうした?俺の奢りだぞ。さっさと飲め。」
そう言って、彼はカップに口をつけた。それを見て私もまた缶コーヒーに手をつけた。
放課後の教室には誰もいない。時節、運動部の掛け声が店内BGMのように響き、夕焼けの優美さが私たちに至福の時をもたらす。喫茶店のものにも劣らない優雅な雰囲気に私は時を忘れて酔いしれた。

「まずいな、この缶コーヒー。」
台無しである。
「無粋な奴め。それは君が無糖を買ったからだろう。何故わざわざそっちを買った?」
「お前の惚れっ気が聞けると思ったんだがな。とんだ期待はずれだった。」
彼は相変わらず弱い所を的確についてきた。
「…次は善処するよ。」
臆病者は赤面した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...