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閑話2 公園にて
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「…という作戦なんだが、どうだろうか。」
放課後、いつかの公園にて私は友人にとある作戦の説明をしていた。
この作戦に私は相応の自信を持って話したが、彼は何故かひどく冷めた目で私を見ていた。
「…お前は馬鹿だ。どうしようもなく馬鹿だ。恋愛が人を堕落させるとはよく言うが、まさかこれ程とは。俺が女性不信になったらどうしてくれる。」
開口一番、この言い様である。
「さすがに言い過ぎではないか。親しき仲にも礼儀あり、というだろう。」
「生憎、俺の友人にお前のような脳内お花畑な奴はいない。」
彼のモノを言わせぬ言い様に私は思わず苦笑した。どうやら私の言い分は彼の耳に幾分も入らないらしい。
彼はさらに語気を荒げた。
「それにしてもこれはなんだ。本気でこんなこと考えているのか?小学生ですら羞恥のあまり口には出せない代物だぞ。」
そう言って彼は、彼が知る由も無いであろう2日の机上作業と半日のフィールドワークによって生まれた私の努力の末の一作を鼻であしらった。私はその場の勢いで彼との喧嘩の火蓋を切ってやろうかとも考えたが、私に残った人の英知たる理性がそれを良しとしなかった。
私は未だ憤る彼に向かって、冷静に言葉を投げかけた。
「命拾いしたな…。私の理性に感謝しておけ…。」
「何の話だ?」
私にだけ分かればいい。
「まあ、ともかくだ。」
彼は話を戻した。
「何らかの作戦を実行するのは良い。そこはお前の勝手だからな。一部手を貸してやるのもやぶさかではない。」
意外と情に厚い男である。
「だが、俺の家のリムジンを使うという点。これだけは許容できない。というか、リムジンを使うって何だ!高校生の色恋沙汰に出てきて良い単語じゃないだろう!」
彼の発言は次第にヒートアップしていった。
「良いじゃないか。別に減るものでもないだろうに。」
「減るんだよ!俺の父からの信用が!そもそもあれは俺のものじゃない!」
余程、頭に血が上ったのだろう。言い終えた後、彼は肩で息をしていた。
しかし、私は知っている。彼がリムジンを私用で使っていたことを。
「あれは小学生の頃だ。」
関係ない話を始めた私を彼は訝しんでいたが、構わず話を続ける。
「そう、遠足のお菓子を買いにスーパーへ行った時のことだった…。たしか小5だったかな。他2人の友達と一緒に行ったはずだ。一緒に行こうと誘ったら君は断ったなあ。」
「…!」
どうやら今更になって、自分の過ちに気付いたようだ。だが、もう遅い。
「そして私が目的地に着いた後だ。10分ほど経った後に、君は家から歩いて行ける距離にあった筈のスーパーに、わざわざリムジンで来た!歩いて行ける距離に!リムジンでだ!見栄を張りたかったのかは知らないが、これが私用でなくて何になるというのか、説明してもらおうじゃないか!」
「ぐっ…...!」
思いのほか熱くなっていたようだ。言い切った後、私は息を切らした。
一方で彼はその直後、右手で強く拳を握った。しかし、その後どこか遠くを見つめると、そのままゆっくりと拳を解いた。
「理性とは良いものだ…。」
「だろう…。」
お互いに冷静になった後、私たちは自販機でコーヒーを買い、小休憩を取ることにした。
近くにあったベンチに腰掛ける。すると相も変わらず自前のカップにコーヒーを移し替えている彼が、ふと言葉を漏らした。
「なあ、なぜ俺はわざわざリムジンを使わなきゃならないんだ?そこまでの義理があったとは思えんのだが。」
私は口に含んだコーヒーをゆっくりと味わってから答えた。
「それは君が重大な嘘をついたからだ。」
「ああ、やはりバレていたか。」
彼は声を出して笑った。
「あれさえなければ、私はこんな作戦をとる必要もなかったわけだ。尻拭いを自分でやるのは当然だろう。」
「俺が嘘をつかなきゃ、お前はあいつと親密な関係になることすらなかっただろうに。」
彼は嘲笑の視線とともに冷ややかな言葉を私に浴びせた。
「嘘をついた汚点を俺に拭わせるなら、俺の働きに対するお礼もあって然るべきじゃないか。」
「まあ、そうだな。」
そう言って、私は彼のそばに転がっていた空き缶を拾った。
「君の投げ捨てた空き缶をゴミ箱に捨ててきてあげよう。これでチャラだろう。」
「ぬかせ。」
彼の言い分を無視してゴミ箱に向かう。後ろで彼が騒いでいるが聞こえないふりをした。
そして私が手に持った缶を捨てようとしたその時である。
私はようやく二つの缶が同じものだということに気づいた。
「微糖、飲めるようになったんだな。」
彼は私の声に対して、面をあげた。
「ああ、誰かさんの話が甘いもんだから。いつのまにか…」
何かを言う途中で彼の口が止まった。考え事をしているのか眉間にシワがよっている。
しばらくして私がベンチに戻って来た時、彼は体を起こして私に目を向けた。
「分かった。リムジンの件、善処してやる。」
コーヒーを見つめながら、彼はそう言った。
「理由を聞いても?」
「聞くなよ。分かるだろ。」
あくまで自分の口から理由を言うつもりはないらしい。相変わらず素直じゃない奴だ。今度お礼にコーヒーでも奢ってやろうか。
そんなことを考えてながらベンチに座ると、隣でコーヒーを飲み終えた彼が吐いた息と共に独り言をこぼした。
「せめて、あんな計画じゃなければなあ。」
次の瞬間、今までの感謝の心が吹き飛んだ。
さらば、理性。また会おう、英知よ。
放課後、いつかの公園にて私は友人にとある作戦の説明をしていた。
この作戦に私は相応の自信を持って話したが、彼は何故かひどく冷めた目で私を見ていた。
「…お前は馬鹿だ。どうしようもなく馬鹿だ。恋愛が人を堕落させるとはよく言うが、まさかこれ程とは。俺が女性不信になったらどうしてくれる。」
開口一番、この言い様である。
「さすがに言い過ぎではないか。親しき仲にも礼儀あり、というだろう。」
「生憎、俺の友人にお前のような脳内お花畑な奴はいない。」
彼のモノを言わせぬ言い様に私は思わず苦笑した。どうやら私の言い分は彼の耳に幾分も入らないらしい。
彼はさらに語気を荒げた。
「それにしてもこれはなんだ。本気でこんなこと考えているのか?小学生ですら羞恥のあまり口には出せない代物だぞ。」
そう言って彼は、彼が知る由も無いであろう2日の机上作業と半日のフィールドワークによって生まれた私の努力の末の一作を鼻であしらった。私はその場の勢いで彼との喧嘩の火蓋を切ってやろうかとも考えたが、私に残った人の英知たる理性がそれを良しとしなかった。
私は未だ憤る彼に向かって、冷静に言葉を投げかけた。
「命拾いしたな…。私の理性に感謝しておけ…。」
「何の話だ?」
私にだけ分かればいい。
「まあ、ともかくだ。」
彼は話を戻した。
「何らかの作戦を実行するのは良い。そこはお前の勝手だからな。一部手を貸してやるのもやぶさかではない。」
意外と情に厚い男である。
「だが、俺の家のリムジンを使うという点。これだけは許容できない。というか、リムジンを使うって何だ!高校生の色恋沙汰に出てきて良い単語じゃないだろう!」
彼の発言は次第にヒートアップしていった。
「良いじゃないか。別に減るものでもないだろうに。」
「減るんだよ!俺の父からの信用が!そもそもあれは俺のものじゃない!」
余程、頭に血が上ったのだろう。言い終えた後、彼は肩で息をしていた。
しかし、私は知っている。彼がリムジンを私用で使っていたことを。
「あれは小学生の頃だ。」
関係ない話を始めた私を彼は訝しんでいたが、構わず話を続ける。
「そう、遠足のお菓子を買いにスーパーへ行った時のことだった…。たしか小5だったかな。他2人の友達と一緒に行ったはずだ。一緒に行こうと誘ったら君は断ったなあ。」
「…!」
どうやら今更になって、自分の過ちに気付いたようだ。だが、もう遅い。
「そして私が目的地に着いた後だ。10分ほど経った後に、君は家から歩いて行ける距離にあった筈のスーパーに、わざわざリムジンで来た!歩いて行ける距離に!リムジンでだ!見栄を張りたかったのかは知らないが、これが私用でなくて何になるというのか、説明してもらおうじゃないか!」
「ぐっ…...!」
思いのほか熱くなっていたようだ。言い切った後、私は息を切らした。
一方で彼はその直後、右手で強く拳を握った。しかし、その後どこか遠くを見つめると、そのままゆっくりと拳を解いた。
「理性とは良いものだ…。」
「だろう…。」
お互いに冷静になった後、私たちは自販機でコーヒーを買い、小休憩を取ることにした。
近くにあったベンチに腰掛ける。すると相も変わらず自前のカップにコーヒーを移し替えている彼が、ふと言葉を漏らした。
「なあ、なぜ俺はわざわざリムジンを使わなきゃならないんだ?そこまでの義理があったとは思えんのだが。」
私は口に含んだコーヒーをゆっくりと味わってから答えた。
「それは君が重大な嘘をついたからだ。」
「ああ、やはりバレていたか。」
彼は声を出して笑った。
「あれさえなければ、私はこんな作戦をとる必要もなかったわけだ。尻拭いを自分でやるのは当然だろう。」
「俺が嘘をつかなきゃ、お前はあいつと親密な関係になることすらなかっただろうに。」
彼は嘲笑の視線とともに冷ややかな言葉を私に浴びせた。
「嘘をついた汚点を俺に拭わせるなら、俺の働きに対するお礼もあって然るべきじゃないか。」
「まあ、そうだな。」
そう言って、私は彼のそばに転がっていた空き缶を拾った。
「君の投げ捨てた空き缶をゴミ箱に捨ててきてあげよう。これでチャラだろう。」
「ぬかせ。」
彼の言い分を無視してゴミ箱に向かう。後ろで彼が騒いでいるが聞こえないふりをした。
そして私が手に持った缶を捨てようとしたその時である。
私はようやく二つの缶が同じものだということに気づいた。
「微糖、飲めるようになったんだな。」
彼は私の声に対して、面をあげた。
「ああ、誰かさんの話が甘いもんだから。いつのまにか…」
何かを言う途中で彼の口が止まった。考え事をしているのか眉間にシワがよっている。
しばらくして私がベンチに戻って来た時、彼は体を起こして私に目を向けた。
「分かった。リムジンの件、善処してやる。」
コーヒーを見つめながら、彼はそう言った。
「理由を聞いても?」
「聞くなよ。分かるだろ。」
あくまで自分の口から理由を言うつもりはないらしい。相変わらず素直じゃない奴だ。今度お礼にコーヒーでも奢ってやろうか。
そんなことを考えてながらベンチに座ると、隣でコーヒーを飲み終えた彼が吐いた息と共に独り言をこぼした。
「せめて、あんな計画じゃなければなあ。」
次の瞬間、今までの感謝の心が吹き飛んだ。
さらば、理性。また会おう、英知よ。
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