888マイルの奇跡

かふぇもか

文字の大きさ
11 / 12

水瀬佑香

しおりを挟む
 昼休み。

 俺はすぐに教室を出て、水瀬佑香に接触するために、隣の2年2組に向かった。

 2組の教室にはまだ人がたくさんいた。
 俺は、佑香がまだ教室を出ていないことを祈って、適当な女生徒を捕まえた。

「ごめん、水瀬さん教室にいる?」

「水瀬さんならあそこにいるよ」
 そう言って指差した場所は、1番廊下側の席の、後ろから2番目だった。

 そこには、髪がショートの女の子が座っていた。
 しかし、悠のように勝気な女の子の印象ではなく、なんとなく気の弱そうで静かな女の子の印象だった。
 顔も、優しそうな雰囲気を漂わせている。

 今回は、自分の記憶を探るために話しかけるため、一応メニュー画面を開いて教室の前でセーブした。

 4月5日 火曜 13時00分。

 俺は2組に入って、その女の子に近付いた。

「佑香、ちょっといいかな?」
 なるべくフレンドリーに、話しかけた。

「?!」

 何故か驚いた顔をしていた。何かまずかったのだろうか。

「ごめん、驚かせちゃって。2年は同じクラスになれなかったな」
 俺は、相手に好印象を持たれる話題を振って、話しやすい雰囲気にした。

「う、うん。1年の時も同じじゃなかったし、2年間同じクラスじゃないね」

「ちょっと残念だなー。幼馴染だし、3年は同じクラスになりたいよ」
 そう言って微笑んだ。

 実際、水瀬佑香とは初対面なのに、こんな風に佑香という女の子の心をもてあそんでしまって、本当に申し訳ない気持ちになった。

「海人くん、今日はどうしたの? 私は嬉しいけど……」

 最後のほうは声が小さくなり聞こえなかった。

「いや、ちょっと佑香に聞きたいことがあるんだよ」
「どうしたの?」

 そこで一度、間を置いてから佑香に質問した。

「種田心愛って人、知ってる?」
「っ?!」
 俺がそう言った時、明らかに佑香が動揺した。
 目は見開かれて、過呼吸気味になっていた。

「ごめん、佑香!大丈夫?!」
「どうしてっ?! どうして心愛の話をするの?!」
 俺は佑香が内気そうな女の子だと思っていたから、突然こんな大声を出してきて驚いた。

 佑香の瞳からは、大粒の涙が流れている。
「佑香、ちょっと落ち着いてくれ……」

「阿澄のやつ、水瀬さんのこと泣かしてるよ……」
「私、水瀬さんがあんな声出すの初めて見たよ……」

 教室の生徒の視線が俺たちに集中して、みんなが口々に俺たちのことを話し始めた。

 きっと、心愛という少女のことは、俺たち幼馴染の中では絶対に話題に上げちゃダメなことだったんだ。
 もう少し、注意を払うべきだった。

 佑香は今もなお、泣き続けている。

「ちょっとキミ、何水瀬さんのこと泣かせてるのよ」
 知らない女の子が話しかけてきた。
 髪は、鎖骨のあたりまで伸びていて、身長は165?あたり、目は割と大きく、顔は色白、すれ違えば、自然と目が行くくらいの可愛い女の子だった。

「ごめん、泣かせるつもりは本当に無かったんだ……」
「それは、あなたを見てれば分かるから」

 そう言い、その女の子は佑香に近付いた。
「水瀬さん、ちょっと一緒に来てくれる?」

 佑香は泣きながら戸惑っていたが、首を縦に振って席を立った。
 俺は、その場でじっとしていた。

「何してるの? あなたも来るのよ」
「あ、はい……」

 もう少し、気を使って動けば佑香を泣かせずにすんだのだろうか。
 そう思ったが、こればっかりは仕方の無いことだと、自分の中で言い聞かせて佑香とその女の子に着いていった。

 心の中で、佑香に謝りながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...