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記憶の断片
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女の子に連れてこられた場所は、4階にある空き教室だった。
空き教室と言っても、机と椅子がちゃんと並べられているし、掃除をしている痕跡もあった。
空き教室に入った時には、すでに佑香は泣き止んでいたが、少し目を赤く腫らしていた。
「あの、転校生の方ですよね……?」
なんだ、佑香の知り合いじゃなかったのか。
「そうだよ、今日からこの学校に転校してきた比屋定香織だよー」
比屋定夏織はそう言って微笑んだ。
比屋定夏織、愛梨が言ってた重要人物だ。そういえば、佑香と同じクラスだったのを俺は思い出した。
「本題ね、なんで2人して喧嘩してたの?」
「あれは喧嘩じゃなくて……」
「あれは喧嘩だよ。多分あのクラスにいた人たち、みんな喧嘩だって思ってるよ」
少しだけ、比屋定さんは厳しい表情でそう言った。
確かに、そう映っていても正直違和感は無かった。
「ごめん、俺が全部悪いんだよ。俺が無神経すぎたんだ」
素直に謝った。これは本当に俺が悪い。
「心愛って人の名前が出てたけど、その人に関しての喧嘩なの?」
比屋定さんが心愛の名前を出した時、分かりやすく佑香が狼狽えた。
「あの……心愛は、私と海人くんの昔の友達なんです……」
「昔のってことは、今は違うの?」
夏織がそう聞いたが、佑香はまた少しだけ黙り込んだ。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「佑香は中学2年の夏に、家族で旅行をしている最中、交通事故にあって死んだんです……」
佑香がその話を口に出した瞬間、俺の頭の中で謎のフラッシュバックが起きた。
幼稚園くらいの頃、海人と佑香と心愛の3人は小さい公園で遊んでいた。
俺は、その映像を俯瞰から眺めている……
3人はとても楽しそうだった。
やがて時が経って、小学、中学に3人で進学した。
中学では、海人はテニス部に入った。
部活で忙しくて、佑香と心愛と遊ぶ時間はだんだんと減ってきた。
それでも、学校ではいつも3人で話していて、それが中学2年の夏まで続いた。
8月7日 夏休み。
心愛は、家族と2泊3日の旅行に行くことになった。
海人と佑香はそれを見送ったのを最後に、もう二度と心愛と出会うことはなくなった。
8月8日。心愛は死亡した。
死因は、突然道に突っ込んできた大型自動車との衝突。
運転手の居眠り運転が原因だったらしい。
その事を、自分の両親から聞かされていた。
海人と佑香は、心愛の葬式には参加しなかった。心愛が死んだという事実を受け入れられなかったからだ。
それから、海人と佑香は会話をしなくなった。
心愛1人をのけ者にして、2人だけで仲良くするのは耐えられなかったからだ。
それでも、高校1年の時は何度か会話をして、そして2年に上がった。
俺は、そんな経緯を知らずに、無神経に佑香の心の傷を抉ったのだ。
気付いたら教室の机の上に手を置いて、倒れそうな身体を支えていた。
「大丈夫?海人くん……?」
佑香は、そんな無神経な俺に対して気遣ってくれていた。
「うん、もう大丈夫……悪い佑香、色々と……」
「もう気にしなくていいよ。久しぶりに話しかけてくれたの、本当は嬉しかったから……」
そう言って、佑香は少し顔が赤くなった。
記憶の奔流は終わりを告げて、俺は現実の世界に引き戻された。
いや、この世界は現実なのだろうか。
もう俺の中では、ここが現実なのかそうでないのか、区別が曖昧になっていた。
空き教室と言っても、机と椅子がちゃんと並べられているし、掃除をしている痕跡もあった。
空き教室に入った時には、すでに佑香は泣き止んでいたが、少し目を赤く腫らしていた。
「あの、転校生の方ですよね……?」
なんだ、佑香の知り合いじゃなかったのか。
「そうだよ、今日からこの学校に転校してきた比屋定香織だよー」
比屋定夏織はそう言って微笑んだ。
比屋定夏織、愛梨が言ってた重要人物だ。そういえば、佑香と同じクラスだったのを俺は思い出した。
「本題ね、なんで2人して喧嘩してたの?」
「あれは喧嘩じゃなくて……」
「あれは喧嘩だよ。多分あのクラスにいた人たち、みんな喧嘩だって思ってるよ」
少しだけ、比屋定さんは厳しい表情でそう言った。
確かに、そう映っていても正直違和感は無かった。
「ごめん、俺が全部悪いんだよ。俺が無神経すぎたんだ」
素直に謝った。これは本当に俺が悪い。
「心愛って人の名前が出てたけど、その人に関しての喧嘩なの?」
比屋定さんが心愛の名前を出した時、分かりやすく佑香が狼狽えた。
「あの……心愛は、私と海人くんの昔の友達なんです……」
「昔のってことは、今は違うの?」
夏織がそう聞いたが、佑香はまた少しだけ黙り込んだ。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「佑香は中学2年の夏に、家族で旅行をしている最中、交通事故にあって死んだんです……」
佑香がその話を口に出した瞬間、俺の頭の中で謎のフラッシュバックが起きた。
幼稚園くらいの頃、海人と佑香と心愛の3人は小さい公園で遊んでいた。
俺は、その映像を俯瞰から眺めている……
3人はとても楽しそうだった。
やがて時が経って、小学、中学に3人で進学した。
中学では、海人はテニス部に入った。
部活で忙しくて、佑香と心愛と遊ぶ時間はだんだんと減ってきた。
それでも、学校ではいつも3人で話していて、それが中学2年の夏まで続いた。
8月7日 夏休み。
心愛は、家族と2泊3日の旅行に行くことになった。
海人と佑香はそれを見送ったのを最後に、もう二度と心愛と出会うことはなくなった。
8月8日。心愛は死亡した。
死因は、突然道に突っ込んできた大型自動車との衝突。
運転手の居眠り運転が原因だったらしい。
その事を、自分の両親から聞かされていた。
海人と佑香は、心愛の葬式には参加しなかった。心愛が死んだという事実を受け入れられなかったからだ。
それから、海人と佑香は会話をしなくなった。
心愛1人をのけ者にして、2人だけで仲良くするのは耐えられなかったからだ。
それでも、高校1年の時は何度か会話をして、そして2年に上がった。
俺は、そんな経緯を知らずに、無神経に佑香の心の傷を抉ったのだ。
気付いたら教室の机の上に手を置いて、倒れそうな身体を支えていた。
「大丈夫?海人くん……?」
佑香は、そんな無神経な俺に対して気遣ってくれていた。
「うん、もう大丈夫……悪い佑香、色々と……」
「もう気にしなくていいよ。久しぶりに話しかけてくれたの、本当は嬉しかったから……」
そう言って、佑香は少し顔が赤くなった。
記憶の奔流は終わりを告げて、俺は現実の世界に引き戻された。
いや、この世界は現実なのだろうか。
もう俺の中では、ここが現実なのかそうでないのか、区別が曖昧になっていた。
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