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プロローグ
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【サバイバルカメラマン】
<プロローグ>
ここは神戸。山と海に挟まれた素敵な街。
秋晴れの気持ちよい青空の下、
住宅街の真ん中で、鳴り響く銃声。
「ダダダダダダ。バン、バン、ダダダ。」
左手で顎髭をさわりながら右手に銃を持った男が心の中で叫んだ。
「俺から逃げれると思うなよ!」
「バン バン!」
「1人残らず撃ち殺してやる!」
「バン バン バン」
私は、走りまわる子どもを容赦なく撃ちまくる。
狙いを定め、一人残らず撃ち殺す。
「バン バン」
……
行け!行け!頑張れ~!(保護者の声援)
私は、「フリーカメラマン」木村BON。
カメラを銃に見立て、撮影現場を戦場に見立て、サバイバルゲームのように撮影を楽しむカメラマンだ。
頭の中ではシャッター音が銃声に聴こえている。
撃っても撃っても倒れないゾンビを相手にサバイバルゲームを楽しんでいる。
左目でファインダー越しにターゲット(被写体)をサイティング(狙い)し、右目で次のターゲットをサイティングする。
理想はターゲットの瞳に照準(ピント)を合わせたいが、今回のターゲットは小さく動きも予測不能だ。
なので、できるだけ絞り(F値)、顔又は胴体に照準を合わせ狙い撃つ。
喉の乾きを潤す間もなく、汗が目に染みてもファインダーを覗き続け、ターゲットに照準を合わせ、タイミングよく撃ち(シャッターを切る)ヒット(撮影する)させる。
今日のミッションは幼稚園の運動会だ。
なぜ夏の暑い日に運動会をするのだろう と 心の声が聞こえてきそうな顔で 前方から私を見ているのは今日のパートナー小森さん。
今日はツーマンセル(二人体制)だ。
幼稚園の規模(園児数)、依頼元の写真会社の考え方でカメラマンの人数はかわる。
このミッションでの最大の目標は、ターゲット全てを1人残らず確実にゲット(写真に収める)する。(写真に写っていない子がいるとだめだからだ。なぜだめかと言うと、写真販売で写っていない子や写ってる枚数が他の子より少なかったら親からクレームがくる。そして、なにより大切な想いでの瞬間を全員残してあげたいからだ)
次の演技は、年中さんの「かけっこ」だ。
かけっこも園や年齢で異なる。
ここの年中さんのリレーは4レーンの折り返しのようだ。
小森さんにハンドシグナル(手信号)で合図を送り、私は手前の2レーンを狙う。
掌を開いて閉じて開いて閉じてとウォーミングアップし、掌の汗をズボンで拭う。
そして、折り返し地点側からスタート位置に向かって射撃場所を確保する。
ターゲットは小さいので、できるだけニーリング(低い姿勢)でサイティングする。
園児の撮影は常に低い姿勢なので、次の日は足がパンパンになる。
走り出したら、2人同時に仕留めることは不可能なので、逃がさないようにスタート前に並んで立っているところをサイティングし確実にゲットしておく。
スタートした瞬間、先に出たターゲットをまず狙い撃ち、すぐ隣のターゲットに照準を合わせ狙い撃つ。
照準がちゃんと合っていない可能性を考え、すぐ広角側で最初のターゲットを狙い撃ち、すぐさま隣も撃つ。
照準が合っているか確認する間もなく、
次のターゲットが走り出す前に照準を合わせ狙い撃つ。これを繰り返し撃ちまくる。
次の年長さんのかけっこで今日のミッションは終了だ。
保護者がスマホで運動会を撮影する時のコツは、地面すれすれにスマホを構えて撮影すると、青空いっぱいの迫力ある写真が撮れる。
そのためには、最前列を確保する必要がある。
最前列を確保できなかった場合は、撮影は我々プロカメラマンに任せて、しっかり目に焼き付けて、大きな声で応援してあげよう。
余裕があれば動画撮影をすすめる。
動画はスマホで十分だと私は思う。
写真に比べて動画を見返すことは少ない。
少々画質が悪くても、スマホ動画は、共有、保存が容易だから、おじいちゃんおばあちゃんにも、すぐ送信して見せてあげれる。
私もだが、年をとるとハッキリ見えていないので、スマホ動画の画質で満足できる。
さて、ここの年長さんのかけっこは、二人ずつトラックを一周するタイプのようだ。
小森さんに、私がこっちを撮影する、とハンドシグナルを送り、2手にわかれる。
小森さんは最終コーナーでスタンバイし、私はスタート地点の前方にスタンバイする。
私の位置からはスタートとゴール、二回狙い撃つことができる。小森さんがいる場所の最終コーナー付近は、面白い絵が撮れることがあるが、私は1発でも多く撃ちたいので、このポジションが好きだ。
年中さん同様にスタート前に撃ち、早い方から順に狙い撃つ。
そしてゴールテープをきる瞬間を狙い撃つ。
すぐさま次のスタート前のターゲットを狙い撃つ。
汗を拭う間もなく最終走者まで撃ちまくり、
今回のミッションは無事終了した。
しかし、まだ油断はできない。
これから基地(自宅)に戻り、無駄撃ちしたデータを削除し、演技プログラム毎にフォルダ分けをして納品だ。
ちゃんと撮れてるか確認して納品するまでがミッションなのだ。
そしてカメラのメンテナンスもしっかり行う。
運動場は砂ぼこりが多い。
私の場合、運動会でのカメラの設定は、マニュアルモードでシャッター速度1/500以上の速さでf値は5.6以上でISOはオートで撮影することが多い。ストロボはできるだけ使用しない。
しかし、天候や日の角度などでカメラの設定は異なる。
データの確認と納品が完了したあと、私は冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出した。
【写真1】
<プロローグ>
ここは神戸。山と海に挟まれた素敵な街。
秋晴れの気持ちよい青空の下、
住宅街の真ん中で、鳴り響く銃声。
「ダダダダダダ。バン、バン、ダダダ。」
左手で顎髭をさわりながら右手に銃を持った男が心の中で叫んだ。
「俺から逃げれると思うなよ!」
「バン バン!」
「1人残らず撃ち殺してやる!」
「バン バン バン」
私は、走りまわる子どもを容赦なく撃ちまくる。
狙いを定め、一人残らず撃ち殺す。
「バン バン」
……
行け!行け!頑張れ~!(保護者の声援)
私は、「フリーカメラマン」木村BON。
カメラを銃に見立て、撮影現場を戦場に見立て、サバイバルゲームのように撮影を楽しむカメラマンだ。
頭の中ではシャッター音が銃声に聴こえている。
撃っても撃っても倒れないゾンビを相手にサバイバルゲームを楽しんでいる。
左目でファインダー越しにターゲット(被写体)をサイティング(狙い)し、右目で次のターゲットをサイティングする。
理想はターゲットの瞳に照準(ピント)を合わせたいが、今回のターゲットは小さく動きも予測不能だ。
なので、できるだけ絞り(F値)、顔又は胴体に照準を合わせ狙い撃つ。
喉の乾きを潤す間もなく、汗が目に染みてもファインダーを覗き続け、ターゲットに照準を合わせ、タイミングよく撃ち(シャッターを切る)ヒット(撮影する)させる。
今日のミッションは幼稚園の運動会だ。
なぜ夏の暑い日に運動会をするのだろう と 心の声が聞こえてきそうな顔で 前方から私を見ているのは今日のパートナー小森さん。
今日はツーマンセル(二人体制)だ。
幼稚園の規模(園児数)、依頼元の写真会社の考え方でカメラマンの人数はかわる。
このミッションでの最大の目標は、ターゲット全てを1人残らず確実にゲット(写真に収める)する。(写真に写っていない子がいるとだめだからだ。なぜだめかと言うと、写真販売で写っていない子や写ってる枚数が他の子より少なかったら親からクレームがくる。そして、なにより大切な想いでの瞬間を全員残してあげたいからだ)
次の演技は、年中さんの「かけっこ」だ。
かけっこも園や年齢で異なる。
ここの年中さんのリレーは4レーンの折り返しのようだ。
小森さんにハンドシグナル(手信号)で合図を送り、私は手前の2レーンを狙う。
掌を開いて閉じて開いて閉じてとウォーミングアップし、掌の汗をズボンで拭う。
そして、折り返し地点側からスタート位置に向かって射撃場所を確保する。
ターゲットは小さいので、できるだけニーリング(低い姿勢)でサイティングする。
園児の撮影は常に低い姿勢なので、次の日は足がパンパンになる。
走り出したら、2人同時に仕留めることは不可能なので、逃がさないようにスタート前に並んで立っているところをサイティングし確実にゲットしておく。
スタートした瞬間、先に出たターゲットをまず狙い撃ち、すぐ隣のターゲットに照準を合わせ狙い撃つ。
照準がちゃんと合っていない可能性を考え、すぐ広角側で最初のターゲットを狙い撃ち、すぐさま隣も撃つ。
照準が合っているか確認する間もなく、
次のターゲットが走り出す前に照準を合わせ狙い撃つ。これを繰り返し撃ちまくる。
次の年長さんのかけっこで今日のミッションは終了だ。
保護者がスマホで運動会を撮影する時のコツは、地面すれすれにスマホを構えて撮影すると、青空いっぱいの迫力ある写真が撮れる。
そのためには、最前列を確保する必要がある。
最前列を確保できなかった場合は、撮影は我々プロカメラマンに任せて、しっかり目に焼き付けて、大きな声で応援してあげよう。
余裕があれば動画撮影をすすめる。
動画はスマホで十分だと私は思う。
写真に比べて動画を見返すことは少ない。
少々画質が悪くても、スマホ動画は、共有、保存が容易だから、おじいちゃんおばあちゃんにも、すぐ送信して見せてあげれる。
私もだが、年をとるとハッキリ見えていないので、スマホ動画の画質で満足できる。
さて、ここの年長さんのかけっこは、二人ずつトラックを一周するタイプのようだ。
小森さんに、私がこっちを撮影する、とハンドシグナルを送り、2手にわかれる。
小森さんは最終コーナーでスタンバイし、私はスタート地点の前方にスタンバイする。
私の位置からはスタートとゴール、二回狙い撃つことができる。小森さんがいる場所の最終コーナー付近は、面白い絵が撮れることがあるが、私は1発でも多く撃ちたいので、このポジションが好きだ。
年中さん同様にスタート前に撃ち、早い方から順に狙い撃つ。
そしてゴールテープをきる瞬間を狙い撃つ。
すぐさま次のスタート前のターゲットを狙い撃つ。
汗を拭う間もなく最終走者まで撃ちまくり、
今回のミッションは無事終了した。
しかし、まだ油断はできない。
これから基地(自宅)に戻り、無駄撃ちしたデータを削除し、演技プログラム毎にフォルダ分けをして納品だ。
ちゃんと撮れてるか確認して納品するまでがミッションなのだ。
そしてカメラのメンテナンスもしっかり行う。
運動場は砂ぼこりが多い。
私の場合、運動会でのカメラの設定は、マニュアルモードでシャッター速度1/500以上の速さでf値は5.6以上でISOはオートで撮影することが多い。ストロボはできるだけ使用しない。
しかし、天候や日の角度などでカメラの設定は異なる。
データの確認と納品が完了したあと、私は冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出した。
【写真1】
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