断食の聖

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度重なる誓約

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しばらくぶりに、暖かい日差しがさしていた。
サンドラーチェが魔法で空の粉塵を吹き飛ばしたからだ。
「これで以前の様に作物が育つはずよ」
「ああ、ありがとう、サンディー」
二人は一時のお別れの抱擁をした、ヤントスは珍しく少しの不安を感じていた。
サンドラーチェの用意してくれた、俊足の馬車で従者達と出発した。
その日の午後、ガルバトスに到着して来た時と同じ様に渡り始めた。
中間に差し掛かると、一行は異音に気付き始めた。
ギシッ、ギシッ。
星の欠片がサンドラーチェによって拭われ、日の温もりが透明な石を水に戻し始めていたのだ。
バリバリバリ!
透明の石は砕け、ヤントス、馬、従者達はまだ凍てつく河の中に沈んだ。
ヤントスは薄れていく意識で河神ガルバトスに呼びかけた。
「河神ガルバトスよ!」
呼びかけに応じたガルバトスが姿を現した。
「どうした若者よ!」
「助けてくれ!」
「取引に応じるなら助けてやっても良い」
「どんな取引?」
「従者達は助けてやる、しかしお前の身体を私によこせ、代わりにお前はこの竜の身体に宿り、河神としてここで暮らすのだ」
「従者達は救い上げて家族の元へ帰れるんだな!」
「約束しよう」
ヤントスは怯んだ、自分の犠牲を惜しんだのではない、ここで竜として暮らすと言う事は、母との約束を破った上に、サンドラーチェとの結婚も出来なくなる。
迷っているヤントスに、ガルバトスがまくし立てた。
「琥珀の瞳の若者よ! 急がないと従者達が死んでしまうぞ!」
サンディーは解ってくれるに違いない!、ヤントスは決心した。
「分かった、取引をのむ」
すぐにヤントスは意識が飛んだ、次に目覚めた時、ヤントスは自分が竜になった事を知った。
琥珀の王子に成りすましたガルバトスは、何食わぬ顔で王宮に戻った。

「父上、サンドラーチェは願いを聞き入れてくれました」
「そうか、良くやった。母さんに顔を見せてやるがよい」
「はい、そういたします」

メリッサは息子の帰りを待ちわびていた。
「母上、戻りました」
「あゝ、ヤントス! 無事で安心したわ」
「はい」
「サンドラーチェ様はどんなお方でしたか?」
メリッサは普段と感じの違う息子を訝しんで尋ねた。
「サンドラーチェはいけ好かないお婆さんで、私を動物に変えてしまおうとしましたが、財宝を見せると機嫌を良くして願いを聞き入れたのです」
「そうだったの、疲れたでしょうからゆっくりお休みなさい」
「はい、そういたします」

メリッサは、自分の息子の身体が何者かによって乗っ取られた事を知った。
几帳面なヤントスは、サンドラーチェ女神の館を出立する時、母ヘ向けて文をしたためた鳥を飛ばしていた。
そこには美しいサンドラーチェ女神と結婚する事、一度だけ母の顔を見に帰る事が書かれていたからであった。
メリッサは、息子が旅の途中で罠にかかったに違いないと思い、偽物の息子に気付かないフリを通した。
暴く事によって、ヤントスが困る事になるかも知れないと感じたからである。



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