断食の聖

alecksmody@gmail.com

文字の大きさ
18 / 19

開眼

しおりを挟む
100日間断食修業の95日目の朝、アレン達が宿泊から外に出ると、目の前に少し大きめの器を持った少女が立っていた。
彼女は薄衣をまとい、器には優しい黄色のスープのようなものが入っており、器を差し出す様な形でアレンの前に歩み寄って来ました。
「アレン様、100日間断食修業のご成功おめでとうございます! こちらは開祖エフリート様も101日目に召し上がられたと言われる果実のスープです。どうぞ記念の証としてお召し上がり下さい」
これは全てゼルベットに言うようですか命じられた言葉でした。
アレンは少女を見つめてこう言いました。
「君をどこかで見たことがある」
少女はそれ以上の事を何も教わっていなかったので、ただ黙って器を差し出しました。
アレンは成り行きに吸い込まれるようにして器を受け取り、それを口に運びました。
「アレンさん、いけません! 今日は96日目です、まだ5日残っています。先ほどそれを確認して出てきたばかりではありませんか?」
カミルはそう言ってアレンから器をもぎ取ろうとしましたが、アレンはそれを信じられない力で掴んでいて、怪力のカミルでも奪い取ることが出来ませんでした。
いよいよ器が傾けられて、アレンの口にそれが含まれようとする瞬間、器と口を遮る手が差し込まれたのです。
それは半透明で実体を持っていませんでしたが、アレンは訝しんで顔をあげました。
するとそこには亡くなった筈のアレンの母の姿がありました。
半透明の母が語りはじめました。
「私の息子にして偉大なる聖者アレン、いよいよ私があなたに償える日がやって来たのです。この世と冥界の間に閉じ込められているあなたの妻サンドラーチェ女神様が、力を振り絞って私に伝えに来てくれたのです。
悪い者の企みを。
この娘はあなたとは何の関係もありません、そして果実の話も嘘なのです。
見ているのはとても辛いのですが、せっかくここまできたのです、最後の力を振り絞ってあと5日乗り越えて欲しいのです。
お願いよ、アレン」
アレンは母の言葉で我に返ると、
「ああ」と弱々しく呟き、器を投げ捨てて歩きはじめました。
カミルもエンゲメネーも固く拳を握りしめて泣いていました。
エンゲメネーがこの事件をメノンに報告したので、ゼルベットとその一見は破門となりました。
そしてまたこのような企みにアレンが晒される事のないよう、残り5日間、2名の護衛が付けられる事になりました。
大聖の計らいもあってか、残り5日間を無事に終了したアレンはその夜、開眼して王子だったことやサンドラーチェとの恋、龍神となって様々な命を守っていた事その他全てを思い出したのでした。
その瞬間世界中の人々の心の中で、まるで張り詰めたものが弾けるような音が聞こえたと伝えられています。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...