婚約破棄がお望みならどうぞ。

和泉 凪紗

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5.

「こちらは国王陛下からの書簡です。殿下にお渡しするように言われております」

 そう言って学園長は元婚約者に国王陛下からの書簡を渡した。書簡の内容を確認すると元婚約者は顔色を変える。

「な、なんなんだこれは。何かの間違いだ!」
「間違いではございません。我々は殿下が何事もなくこの学園を卒業されることを祈っておりました。この書簡もお渡しするような事態になってほしくなかったのです」
「レオン様、書簡には何が書かれているのですか?」

 ここでようやくリズベットが口を開いた。少し焦っているようにみえる。

「…………」
「レオン様?」
「学園を退学すること、そして、王位継承権を剥奪すると……」
「そ、そんな……嘘ですよね」
「正式な書簡だ。間違いない」

 元婚約者の声は震えている。リズベットさんの口からは「そんなの嘘よ」と言葉が漏れていた。
 周囲の取り巻きたちは「退学?」「王位継承権剥奪?」と皆動揺している。

「どうしてだ。どうしてこのようなことに」
「それは殿下の振る舞いが全てですよ。詳しくは国王陛下からお聞きください。さて、リズベット嬢と殿下のご学友ですが……」

 学園長に自分たちのことを言われ、リズベットさんと取り巻きたちはビクッとする。先ほどまで勢いが良かったのに、今ではすっかりおとなしい。それどころか「自分たちは関係ない」と弁明を始めた。
 先ほどまでわたくしを悪役令嬢に仕立て上げようとしていたというのに。

「処分は追ってお伝えします。それぞれ罪の重さが違いますからしっかり事実を確認してからになりますね。ちゃんと皆さんのお話も聞きますから安心してください」

 学園長は笑顔で言ったけれど、言われた方は震えている。
 全ての行いが明らかになるのだから、どうやってごまかすか、そして、今後の身の振り方を必死に考えているのでしょうね。

「エステラ様、このようなことになってしまい申し訳ありませんでした。我々、教師陣の指導力不足です」
「そのようなことはありません。大半の学生は問題無く、最高の指導を受け、成長しております。わたくしもここで学ぶことはたくさんありました。わたくしに至らない点があったためにこのような事態になってしまい、こちらこそ申し訳ありません。わたくしがもっと婚約者としてしっかりしていればよかったのです」
「やはり、エステラ様のような方がこの学園を去るのは残念ですね」

 学園長はわたくしのことを過大評価しているわ。
 元婚約者には直接会うことはもうなさそうなので最後に言っておきましょう。

「殿下。殿下からの婚約破棄でわたくしたちの婚約は無かったことになりました。賠償については改めて」
「あぁ、おまえも覚悟しておけ」
「? 何をでしょうか?」
「当然だろ。私と婚約解消になったのだ。多くの代償が必要だろうな。さすがのおまえの家も揺らぐかもしれないぞ」

 え? わたくしが賠償する側? わたくしは一方的に破棄された方で落ち度はないのですが。

「あの……わたくしが賠償するのですか?」
「当たり前だろ。おまえは馬鹿なのか」

 馬鹿なのは貴方の方では……。

「殿下、残念ながら賠償するのは殿下の方ですよ。まだおわかりになっていないのですか。エステラ様に落ち度な無いのにもかかわらず、悪事をでっち上げ、糾弾し、婚約破棄を言い渡したのです。エステラ様は賠償を受け取る側です」
「何を……」
「殿下はもうこの学園の学生ではありませんから、出て行っていただきます。あぁ、丁度、城から向かえが来たようですね。残りの生徒は一旦謹慎です」

 元婚約者とその取り巻きたちは城から来た兵士に取り囲まれ学園を出て行った。

 ここまで愚かな人だったなんて……。 
 さすがに王位継承権の剥奪は可哀想かと思いましたが、仕方がないようです。

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