痛覚操作でみんなの痛みを軽減して敵を瞬殺できるようにしていたのに、パーティーから追放されました~痛いのが嫌だと泣かれても戻る気はありません~

大石理蔵

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第一章

凱旋パレード

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 俺とヨリアは小さい頃、とある物語の主人公に憧れていた。



 俺達が育った村には『タロス』という冒険者の昔話が代々語り継がれていた。



 大人たちが祭りのたびに語ってくれるタロスの英雄譚を聞くうちに、俺達はいつか王都に行ってタロスみたいな冒険者になりたいという夢を抱いた。



 そして今、俺達は魔王を倒した。



 でも、タロスみたいな英雄になるにはまだまだである。



 俺達は討伐隊のリーダーに魔王を倒したということをテレパシー魔法で伝えた。



 しばらくするとリーダーから『ワイバーンを停めた地点に戻れ』という命令が下った。



 俺達は魔王の角と魔剣をもってワイバーンを停めた地点にまで戻ることにした。








「よくやった!君たちは英雄だ!」



 討伐隊のリーダーがそう言いながら俺たちの肩を何度もたたく。



「なあ、胴上げしてもいいか?」



 メンバーの一人が胴上げを提案する。



「俺はいいけどヨリアはどう?」



「私もOKだよ。胴上げ賛成!」



ヨリアの同意とともに、俺達の身体は宙へ投げ出された。



 そして、何度も浮かび上がった。



「「「バンザーイ!カノスバンザーイ!ヨリアバンザーイ!」」」



 メンバーたちが俺達をたたえる声をきき、少し恥ずかしくなった。



 どうやらヨリアもそうらしく、顔を赤らめていた。









 王都に帰ってから、凱旋パレードの計画が急ピッチで考えられ始めた。



 俺達は凱旋パレードまでは王国一番の宿屋に泊まらせてもらうことになった。



 なお、もちろん別々の部屋である。



 帰ってから数日が経った頃、凱旋パレードの台本が俺たちの部屋に届いた。



 どうやら、上に人が立てるタイプの山車の上に乗り、手を振るだけでいいらしい。



 それでもいろいろと不安だった俺は、部屋の鏡越しに何度も手を振る練習をした。







 そして、ついに凱旋当日になった。



 これまで18年ほど生きてきたが、おそらく今日ほど緊張する日は二度とないだろう。



 俺とヨリアは朝食をとるために来た食堂で顔を見合わせた。



「ついにこの日が来たね」



「そうだな」



「私、今すごくドキドキしているんだ。きっとこんな感覚はもう二度と味わえない。だから、今日はめいっぱい楽しまないとね!」



 ヨリアはいつも前向きだ。



 今日という大舞台を全力で楽しもうとしている。



 そういうところが本当に好きだ。



 朝食を食べ終えたとたん、俺たちは凱旋を主催している王国騎士団の方々に、山車があるところまで連れていかれた。



 俺は山車を見て言葉を失った。



 その山車は金銀で飾られており、まさに芸術品と呼ぶべきものであった。



「こちらの山車は、屋敷が一つ建つくらいの予算をかけて作られたものです」



 騎士団の方が説明する。



 さあ、我らが英雄達よ。お乗りください」



 騎士団の方がそう言ったので、俺たちはハシゴを使って上に乗った。



 よく見ると周りにはオーケストラ部隊が控えていた。



 そして、民衆もいた。



 俺とヨリア手を振ってみんなの視線に答えた。



 やがて、山車が雄大なオーケストラと共に発信し始めた。



 それと共に人々が俺とヨリア二人の身体だけでは受け止めきれないほどの歓声を送る。



 俺は歓声に押されないようにしつつ、笑顔で手を振った。



「英雄コンビにバンザーイ!!!」



「英雄バディにバンザーイ!!!」



「英雄カップルにバンザーイ!!!」



 ん?今誰か俺たちのことをカップルって言ってた民衆いなかったか?



 念のため一瞬ヨリアの方を向いてみると、彼女はすごく顔を赤らめていた。



 まあ、本当は恋仲じゃないのに恋仲だとウワサされれば誰だって恥ずかしくなるだろう。



「よっ!新進気鋭の英雄!」



「これからも期待しているぞ!」



 各所から聞こえる俺達をたたえる声を聞き、俺はこれからの生活に思いをはせた。



 もし、この凱旋が終わったらヨリアと距離を縮めるためにもパーティー作ろうかな。







 凱旋終了後、俺は人気のない所にヨリアを呼んだ。



 そして、一緒にパーティーを組まないか相談した。



「うん。いいよ!私、一度カノス君と冒険したかったんだ~」



 返事は極めて良好であった。



「そっか、じゃあ早速パーティー名決めないとな」



「シードルズとかどう?今適当に考えてみたんだけど」



 俺は俺と



「いいじゃん!じゃあそれにしよう!」



 こうして、俺達のパーティー「シードルズ」が結成されたのであった。
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