痛覚操作でみんなの痛みを軽減して敵を瞬殺できるようにしていたのに、パーティーから追放されました~痛いのが嫌だと泣かれても戻る気はありません~

大石理蔵

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第一章

鍛冶師の娘は賢者

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 シードルズを結成した翌日、俺達はとある鍛冶師に会うために王都を出発した。



 魔王戦で魔剣になってしまった聖剣の代わりとなる剣を作ってもらうためである。



 鍛冶師がいる村は王都から徒歩で西に向かって一日足らずで着くため、馬車を使わずに行くことにした。



「伝説の鍛冶師、ジルコニウス……かつて宮廷鍛冶師だったけど、諸事情あって追放されたらしいよ。」



 道中、ヨリアがこの後会う鍛冶師の話をし始めた。



 正直なところ、俺はジルコニウスについてあまり知らない。



 俺が知っている情報は彼がすごい人であることくらいだ。



「そういえば、カノス君は知っているかな。ジルコニウスって賢者ルミネの父親らしいよ」



 初耳である。



 俺は賢者ルミネについてはよく知っていた。



 なぜなら、一人で冒険していた時代に助けられたことがあったからである。



 昔、まだ十分に痛覚増幅魔法を使いこなせなかったせいで、モンスターに追い詰められなことがあった。



その時、やけにバイオレンスな魔法で俺を助けてくれたのがルミネだったのだ。



「俺、賢者ルミネに会ったことあるぞ」



「え?!ルミネに会ったことあるの!?うらやましいな~」 



 ルミネは今から二年前のある日、突然冒険者を引退した。



 当時、彼女はSランクの冒険者にしてまだ17歳であった。



「そういえば、どうしてルミネは引退したんだろうな。今の俺たちより若い年齢で」



「モンスターを倒すことにむなしさを感じたからってのが、世間の一般的な説らしいよ」



 その話を聞き、俺はルミネの人生に想いをはせる。



 わずか17歳にして周りから『賢者』と呼ばれていた天才少女は、きっと誰にもわからない悩みを抱えていたのだろう。







 太陽が沈む頃、俺たちはジルコニウスがいるエストウ村に着いた。



 そして、一泊した。



翌日、俺たちはジルコニウスの家へと向かった。



 俺たちがジルコニウスの家を訪ねると、疲れはてた顔の筋肉質なおじさんが出てきた。



「旅の者よ、オレはジルコニウスという者だ。もし、オレに依頼したくて来たのであれば、さっさと帰ってくれ。俺は二年前に色々あって鍛冶仕事に身が入らなくなったんだ」



 どうやら、目の前にいるおじさんがジルコニウスらしい。



 二年前……賢者ルミネが冒険者をやめたのと同じくらいの頃だ。



「あの……こんなこといきなり聞くのも失礼かもしれませんが、もしかして娘さんに色々あってジルコニウスさんも……」



 俺は思いきって聞いてみた。



 ジルコニウスはしばらく黙ってから静かに話し始めた。



「今から二年前、娘のルミネが魔王に呪いをかけられた。そのせいで、娘は激しい運動をしたり魔法を使ったりすると激痛が走る体になってしまった……」 



 ジルコニウスが目に涙を浮かべる。



「今までモンスターを倒すことが生き甲斐だった娘は呪いをかけられて以来、部屋にこもって泣き叫ぶようになった……そして、オレも鍛冶仕事に身が入らなくなって宮廷から追放された」



「でも、魔王はもう俺たちが倒したから呪いは解除されたはずですよ」



 呪いは基本的にかけた本人が死ぬと解除される。



 それ以外にも解呪魔法で解くという手もある。





「娘にかけられていたのはな……かなり強力な呪いで、どんなに解呪魔法をかけても、魔王が死んでも解除されなかったんだ!」



ジルコニウスが泣き叫びながらそう言った。



 俺たち3人はしばらく何も言わずに立ち止まっていた。



 やがて、ヨリアが沈黙を破った。



「ジルコニウスさん、確か娘さんの呪いって激痛が走るタイプですよね」



「そうだ」



 ジルコニウスの返事を聞いたヨリアが俺の方に顔を向ける。



 それを見て俺は自分が何を言うべきか気づいた。



「もしかしたら、娘さんの呪いは俺の力で克服できるかもしれません」










 俺たちは家の中へと案内され、とある扉の前まで来た。



「この扉の向こう側に娘がいる」



 確かに、扉の向こう側からは膨大な魔力を感じることができた。



ガチャン



突然、扉が開いた。



中からはうつろな表情のルミネが出てきた。



「この人が今から痛覚軽減魔法かけてお前の呪いを解決するそうだ」



「あっ、そう。頼んだわよ。まあ期待はしてないけど」



 そう言ってルミネは俺の前に立った。





 俺は、痛覚をほぼゼロにするくらい強力な痛覚軽減魔法をかけた。



「……規格外。こんな強い痛覚軽減魔法、聞いたことがない」



 そう言うとルミネはすぐ外に出ていった。



 外に出てみると、ルミネはいろんな魔法を痛そうな素振りを見せずに次々と発動していた。



「『火炎魔法』、『水流魔法』、『雷魔法』……すごい。また私が戦えるようになる日が来るなんて」



 ルミネがうっすらと笑みをうかべ一筋の涙をこぼした。



「ああ…奇跡だ!奇跡だ!ありがとうございます!」



ジルコニウスが泣きながら喜んだ。



 そして、俺たちはみんなで喜びを分かち合ったのであった。
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