あの夏

taisei

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2学期

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夏休みも終わり、体育祭ムードの日々がやってきた。みんなの推薦もあり、赤団の副団長をやることになった俺は、体育祭の応援合戦に向けて、練習を重ねていた。
「応援練習しよ!」
と同じ副団長の有村梨奈がみんなに声をかけた。俺と、梨奈の他に団長、応援団長、応援副団長、団リーダーと16人いた。毎年かっこいいダンス系の曲を入れるという伝統があって、女子の好きな三代目J soul brother'sの曲に決まった。
「みんなダンス覚えてきてるよね?」
団リーダーの藤咲真奈美がみんなに問いかけた。
「もちろん!」
「覚えてきてるよ!」
他の団リーダーが答えた。もちろん俺も覚えて来ている。というか他の人に迷惑かけたくないだけなのだ。
練習時間を学校から決められていたので、みんなは急いで練習を始めた。ダンス練習もひと段落ついて少し休憩していると、
「実は、団席と応援で使う道具も作らなくちゃいけないんだよね…。」
石井さとみが話しかけてきた。
「え?あれって学校側が決めるんじゃないの?あと去年先輩たちが使った道具は?」
俺がそう答えると、さとみは首を横に大きく振った。「生徒会が処分しちゃったみたい。自分たちのことばっかりはやれないね。」
「そうだな。」
団の状況を知った俺たちはすぐに団席作りと道具作りに取り掛かった。道具作りは団長の野尻颯太と、団リーダーの野田俊介、碓井美奈、横山茉優がやることになった。そして団席作りの俺はさとみと一緒に急いで団顧問の先生に1から3年生までの赤団の名簿を貰いに行った。
じゃあ私たち女子の分の団席決めるねとさとみが同じく団リーダーの山谷沙奈と、田村真子を連れてきた。
「ああ。じゃあ俺たち男子の分やるわ。」
そう答えて俺の方は、野村知永と、宮坂圭介と共に作業を取り掛かることにした。
「沙奈、名簿取ってくれないか?」
と知永が沙奈に話しかけた。いいよの返事が返ってくるまでそう長くはなかった。
「これ男子全員かよ~。めんどくせ~。」
と圭介が嘆いている。めんどくさくてもやらなけりゃいけない、そう言うって作業を開始した。
「団席は仲良い人固めた方が声出してくれるかな?」
「その方がいいと思う!」
などと意外にも順調に決まりそうであった。そして作業を始めて10分くらいたったであろうか。俺は一つのことに気がついた。
「夏祭りで見た内山舞ちゃんと同じ団だったんだ…。」
気付いた時にはそう呟いていた。
「大成知り合いなの?」
知永が俺に問いかけてきた。
「いや、そ、そんなんじゃないよ。」
少し動揺してしまった。しかしあまり気にも留めていない知永はそうかと軽く流した。
「さあ!急ごう!」
俺は無理やり作業に気を集中させようとした。30分くらいかかりやっと団席の席が決まった。
「ふ~。やっと終わったよ~。」
圭介が息をついた。単純で長い作業ほど疲れるものはない。しかしやらなければいけないことだったので仕方ない。
「お疲れ!女子はもう終わった?」
と俺が女子3人に聞くと
「結構前に終わったよ!」
とさとみが答えた。さすが女子だと俺は心の中で思った。
「道具作り大丈夫かな?」
さとみが少し心配していた。
「俺らは終わったことだし、手伝いに行こうよ!」
そう俺が言うと女子3人はすぐ了解を得たが、問題は圭介だった。
「めんどくさいよ。俺らは終わったんだし休んでいようぜ~」
「早く終わった方がダンスの練習とか出来て、応援合戦の練習ができるじゃない!」
と真子が反論した。俺もそう思う。なにせ時間がない。今は1分1秒も無駄にできないのだ。
「お前が道具作りをやっていたら、手伝って欲しいと思うだろう?きっとあいつらもそう思っているよ。だから手伝いに行こう。」
圭介もわかってくれたのか、渋々だが手伝うことに決まった。人数が倍以上に増え作業効率も上がり、道具を完成することができた。
「やった!終わった~。」
「疲れた~。」
みんなに作業での疲労を口出して吐き出している。俺もこんなに地味な作業を長くしたことがなく慣れない作業だったのでとても疲れた。
「お疲れ様!今日はこれで終わろう!明日の練習ではダンスやるので、出来るだけ疲労を取ってくるように!」
団長の颯太がその日の最後に声をかけ、みんなの返事と共に今日の団活動が終わった。 
  
家に帰るために自転車をこいでいる時、ふと内山舞ちゃんのことが頭に浮かんできた。あの夏祭りで見た浴衣姿が頭から離れない。
「どうしちゃったんだろ…。」
俺はこのどうしようもない心をどうすればいいのか1人で抱え込みながらひたすら家への道をこぎ続けた。そう考えているうちに家に着いた。ものを考えていると時間が経つのが早くなるとはこのことだと、俺は1人で感じていた。そして、ご飯や風呂を早めに済ませ、作業で疲れた体を楽にしようとすぐに布団へ入って眠りについた。
 次の日授業が終わってからすぐに団活動が始まった。
「今日はダンスをします。出来るだけ完成度を高めて明日から始まる全体練習に進みたいんでみんな頑張ろう!」
昨日と同様にみんなの返事と共に練習が始まった。ダンス練習をして、休憩していると梨奈と部活の話になった。
「大成、野球部大変だったから、こんな練習どうってことないでしょ?」
と笑って話題を出して来た。
「そうだね。特に後輩とかが少しめんどくさくてね~。」
俺も笑って話した。
「へえ~。後輩大変だったんだ。」
「うん。そうだよ。梨奈の部活はどうだった?後輩は。」
うーんと梨奈が悩んでいる。
「めんどくさい後輩はいなかったけど、いい後輩ならいたかな?」
と笑ってきた。俺が誰と聞き返すと梨奈は、
「舞っていう子だよ!」
「え?」
「内山舞っていう子!」
俺は驚いた。内山舞ちゃんがバスケ部なんて知らなかった。というか今知った。
「野球部の2年のマネージャーの子と仲良いんだって!」
「そうなんだ。」
俺が知らなかった情報がどんどん流れ込んでくる。少しでも舞ちゃんに近づいているのが嬉しいような気持ちもした。そんなことを話しているうちに、休憩が終わり、ダンス練習の続きをやることになった。気づけばまた、昨日の帰り道のように頭に舞ちゃんが浮かんでくる。ダンス練習が終わり、今日の団活動が終わった。どうしても、舞ちゃんと繋がりを持ちたくて、梨奈にLINEを聞くことにした。
「梨奈ちょっといい?」
「何?」
「梨奈にだけ言うけどさ、俺、内山舞ちゃんのことが気になっているんだ。」
すると梨奈の口からえ!?と驚きの言葉が俺の体を貫いた。
「だからさ…LINE貰えるか聞いといてもらえる…?」
「そうなんだ。今日聞いてみるね!」
「お願いします。」
俺はいい結果を期待して家に帰った。ご飯を食べて風呂に入り上がると梨奈からLINEが来ていた。
「LINEしていいってさ!ここに連絡先載せておくね。」
俺は嬉しかった。期待しつつも断られたらどうしようという不安もあった。その分だけ嬉しさがあったのかもしれない。俺はすぐ舞ちゃんにLINEを送った。
ーいきなりでごめんなさい。よろしくお願いします。
ーこちらこそよろしくお願いします。
ー内山さんってバスケ部なんだね!
そう送るとしばらくの時間が空いた。
ーそうです!佐藤さん団リーダーなんですよね?頑張ってください!
ーありがとう。
いきなり先輩にLINEを聞かれたわりにはとても落ち着いているように感じた。こういうことには慣れているのかなと思った。
ーそういえば、佐藤さんって同朋幼稚園なんですよね?同級生の子から聞きました。私も同朋なんですよ!
ーえ!?
俺は驚いた。こんな共通点があるなんて知らなかった。親近感が湧いてくるのが見えた。
ーそうなんだ!知らなかった。同朋の人って地元じゃ多いのかな?
ーですかね?よくわかんないです笑
言葉言葉がとても可愛らしい。この子と連絡を取るだけで時間がいくらあっても足りないそんな気分にさせられた。
ーねえ今度会って話せないかな?
気づいたらこんな言葉を発していた。いきなりなに言ってんだと自分を責めた。
ー時間あるときならいいですよ!
ーありがとう!
まさかの返答だった。なんて優しい子なんだろう。さらに引き込まれるようなものを感じた。このことなら一緒にいられたらどんだけ楽しいだろうか。そんなことばかり考えていた。
ー明日の応援練習頑張ろうね!
俺はそう言うと、はい!という返信が返ってきて、それを見て俺は布団にが入った。明日からも頑張ろうと思えた。



 

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