上 下
5 / 20

始まりの日⑤

しおりを挟む
シーラは夢の中にいた。
いつの頃からか毎夜見る悪夢
黒く、狭い所でどこからともなくシーラを否定する声。

“おまえは呪われた娘”

“おまえは不幸を呼ぶ”


そして、繰り返し繰り返し囁かれる

“お前にはバーニーしかいない”

“他は敵だ。味方はバーニーだけだ”

黒いモヤモヤしたものがシーラの身体にまとわりつく。もうシーラは身動きが取れない。


ところが、

今日は違う。

遠くに光が見える。

シーラは微かに動く手を光に向かって伸ばした。

もう少し…あと少し…

指先が光に触れた。


その瞬間、目が覚めた。

外はもう夕暮れだった。


「夢…?」

シーラはベッドからソファにのそのそと移動して、ボーッとしていた。

しばらくすると、

コンコンとドアがノックされた。

「アレンだけど、シーラ、起きた?」

「…起きてるわ。どうぞ」

返事をすると、心配そうな顔をしたアレンが入ってきた。

「気分はどうだい?」

「なんだか不思議な夢をみたわ」

「どんな?」

「光が…」

そう言いかけ、ふとシーラはアレンを見た。

あの光…
温かさを感じた。

アレンと同じ…

「光?シーラ?」

シーラは意識を現実に戻した。

「え、えぇ。あぁ、ごめんなさい。」

「いや。あぁ、そうだ。ディアナがね、心配してお医者様を連れてきているんだ。一度診てもらわない?」

「ディアナったら…心配しすぎだわ。」

「そりゃあ、ディアナはシーラが大切だからね。もちろん俺もだよ。…うん、呼んでくるよ。」

アレンはディアナを呼びに行った。

アレンの頬が少し赤くなっていることにシーラは気付いてなかった。
しおりを挟む

処理中です...