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第23話 クラス決め(2)

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「次で最後だね」
「ああ、気を抜かずに頑張るか」
「そうだね。目指すはSクラス!」
「みんなは力を隠してるかもしれないしな」
「こいつら、何言ってるんだ? もう既にSクラスが決まっているみたいなものだろ」
「俺たちと大差ないと思ってるのか?」
「絶対にバカにしてるわ」
「なんか、みんながこっち見てないか?」
「友達になりたいとかかな? ねえ、友達になろうよ!」
「あいつと関わったら命はないぞ。行こうぜ」
「えー、なんで逃げるのー」

 オズとアリアのグループは、運動の検査場へと移動している。
 生徒たちは、徐々に打ち明けていっているが、オズとアリアの周りには誰もいない。
 それもそうだろう、あれだけ力の差を見せられたら話したくない。
 しかし、2人はこれまでの2つでSランクを取れたことに安堵している。

「この、運動の検査で最後だ。みんな、悔いがないように頑張るがいい」

 運動の検査では、身体能力が検査されるそうだ。
 内容は、俗にスポーツテストと言われるものと似ている。
 鉄球投げ、50メートル走、3000メートル走、長座体前屈、反復横跳びの5つである。
 魔法は禁止だが、身体強化魔法の使用は許可されている。

「まずは、鉄球投げからだね」
「これ、意外と重いな」
「身体強化しておいた方がよさそうだね」
「そうだな。やっとくか」
身体強化アビライズ

 2人は、油断をせずに全力で取り組む為に身体強化アビライズを使った。
 他の生徒も次々に使っていく。

「じゃあ、私いきまーす! おりゃぁ!」

 ピューン! ピカン!

「あれま、飛ばしすぎちゃった。先生、これってどうなるんですか?」
「え、Sランクでいいわよ」
「やったー!」
「あれは、飛ばし過ぎたのれべるじゃないぞ」
「すごいなー」
「不正であってほしいぜ。どうせ、そんなことは無いだろうがな」

 アリアは、鉄球を宇宙まで飛ばしてしまった。
 しかし、結果はSランクとなり、アリアは一安心している。
 他の人たちは、感覚が麻痺したのか、普通に結果を認めだしている。

「次はオズの番!」
「あいつもどうせ飛ばすんだろ?」
「いくぞー。よいしょ」

 ピューン! ピカン!

「ですよねー」
「しかも、さっきより早くなかった?」
「3番を目指すかー」

 生徒たちは、もう完全に1位を獲ることを諦めている。
 そして、3番を獲ったら、1番みたいなものだと思い始めているのだ。

「僕もSランク判定ですよね?」
「も、もちろんよ」
「オズ、やったね!」
「あと4つだな」
「そうだね。頑張ろう!」

 こんな調子で2人は、50メートル走、3000メートル走、反復横跳びもSランクを獲った。
 みんなは、2人がいないものだと考え始め、ついに無視されるようになった。
 オズは、村でも友達ができなかったので、理由は分からないが仕方がないと割り切っている。
 しかし、アリアの方は、

「なんで、なんでみんな無視するの⁉」
「わからねー」
「もしかして、真面目に取り組みすぎて、変な奴だと思われたのかな?」
「なるほど。それならありえるぞ。みんな、手を抜いていたのか」
「でも、残り1つだよー。ここで手を抜きたくないよ!」
「俺も同じだな。もう無視されているし、本気でやってもいいんじゃないか?」
「オズで我慢するか」
「どういう意味だよ!」

 2人とも、友達作りを諦めて、最後も全力ですることにした。

「じゃあ、オズから」
「おっけー。よいしょ」
「おおー! すごいね! 身体が半分だよ!」
「Sランクね」
「やったね! 全部S獲れたじゃん!」
「おう。じゃあ、アリアも獲れよ」
「うん、頑張る。せーの、んんんぅぅぅ!!!」
「えっ?」
「Eランクね」
「えええぇぇぇぇ!!!!!!」
「マジかよ、ここでついに」
「2人ともオールSは獲れなかったのか」
「お前、何やってるんだよ⁉」
「実は……、身体、硬いんだよ」

 アリアは、全く曲がらず、Eランクという結果になった。
 オズは、柔らかいものだと思っていたのか、普段よりも数倍大きい声を出して驚いた。
 他の人たちも、このことに関しては驚きが隠せていない。

「私、Sクラスいけるかな?」
「どうだろうな。厳しくなったな」

 アリアは、Sクラスに行けなくなる心配で、頭がいっぱいになっていた。
 そうして、全員が検査をし終えて、グループ内でクラスが発表された。

「Sクラスは、2人います」
「(2人か。僕も厳しいかもな)」
「(2人だったら、私は落ちてるよ!)」
「(どーせ、あの2人だろ)」

 オズとアリアだけがドキドキしながら、発表を聞く。
 他のみんなは、当然のように諦めている。

「オズとアリアだ」
「おおー」
「はぁー」
『やったー!!!』
「(そんなに喜ばなくても分かってただろ)」

 みんなは、心の中でそう思ったが、口に出すことは無かった。
 オズとアリアは、Sクラスに選ばれたことに安心し、喜んでいる。

「これからが楽しみだね」
「そうだな。ワクワクするよ」

 2人は、これからの学園生活に希望を輝かせている。
 もう既に、2人はこの学園の誰よりも強い。それは、2人以外の全員わかっている。
 そんな2人がここで何を学ぶのか、みんなはそれを不思議に思っている。

「今度こそ、友達作るよ!」
「はーい」

 学ぶことよりも、2人は友達作りを目標にしていた。
 友達100人、できるかな?
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