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第43話 再決戦
しおりを挟む「グワーッ!!!」
オズとハムがバハムートの元へ到着した。
「な、なんなんだ、この状況は……」
オズは、戦いの場を目の当たりにして、言葉を失っている。
その場は、騒がしい訳ではなく、ただ数人の声が聞こえるだけであった。
「次だ! 早く攻撃準備を! 早く来いよ!」
「隊長、もう戦える人がいません!」
「な、なんだと!?」
上級生や兵士達が戦っていたようだが、全くダメージが入っていなかった。
そうして、周りを見渡してみると、負傷した人たちがたくさん倒れこんでいた。
いくら相手がバハムートとは言え、ある程度ダメージを与えることは可能である。
しかし、この様子から見ると、1人もまともに戦えていない様だ。
「どうしてだ。そして、こいつは何者なんだ?」
「お、ず……」
「誰だ⁉」
オズが、戦場を見て立ち尽くしていると、近くからオズを呼ぶ声が聞こえた。
オズは、急いで声のする場所へと向かった。
すると、そこにはダリアが倒れこんでいた。
周りには、他のSクラスのみんなも倒れていた。
「おい、ダリア! 大丈夫なのか⁉」
「あれは、君のハムではないだろう?(キラ、)」
「そうだ。でも、どうしてそれを?」
「あいつ、何度攻撃しても回復するんだ。それに心臓がない(き、キラーン)」
「それって⁉」
ダリアは、かすれた声でオズに話しかける。
ダリアは、バハムートがハムではないことに気が付いていた。
そうして、ダリアは普通では理解できないようなことを言い出した。
しかし、この世の魔法を網羅しているオズは、すぐに原因を理解した様だ。
「複製か……」
『複製』は、この世に存在するものであれば、どれでも全く同じものを作り出すことができるという無属性魔法の1つである。
複製の利点は、生命を持たないことにある。
その為、存在ごと消し去らなければ、永遠に復元し生き続けるのだ。
しかし、複製するには、その本体よりも数十倍の魔力が必要とされる。
その為、ハムを複製するとなると、オズでも難しい程の魔力が必要となる。
さらに、このバハムートは何者かによって操られており、魔力によって強化されている。
それを可能にする者が誰なのかは、想像がつかない。
「僕ができるのは、これだけだよ。後は、任せたよ(キラーン)」
ダリアは、最後にキメ顔をすると意識を失った。
「ダリア、ありがとな」
「オズ君!」
オズが、ダリアを静かに壁際に置いた時、後ろからジークの声が聞こえた。
「ジーク、みんなの避難を頼む」
「僕も戦いますよ!」
「あの時のハムと、いい勝負をしてたお前じゃあ歯が立たない」
「せめて援護くらいなら……」
「それも邪魔だ。さっさとみんなを安全なところに連れて行け」
「わ、わかりました」
ジークが、オズの援護をすると言ったが、オズは認めなかった。
そうして、ジークは10人ずつ魔法で治療しながら安全な場所へと運んでいく。
「ハム、装備だ」
「かしこまりました!」
オズは、ハムを装備した。
装備したということは、初めから本気で戦うということだ。
この時の力は、元の倍の力を出すことができる。
学校内だと、この時のオズに勝てる者は居ないだろう。
「グワァァー!!!」
ビュウゥゥン!!!
バハムートが吠えただけで、突風が吹く。
「ハムと戦おうとしていた時みたいな気持ちだ。再決戦だな」
「そうですね」
オズは、ハムと戦う時を思い出していた。
今のオズは、あの時のように覚悟を決めた強い顔をしていた。
魔王が人間に転生し、人間の為に戦う。
オズは、そのことに喜びを感じていたのだ。
オズは、1回だけ大きく深呼吸をして、力強く踏み出した。
「いくぞ!」
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