泥酔魔王の過失転生～酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない！～

第47話 仲間思い

「オズが追放された⁉」
「おい、声がでかいって！」
「ごめん。でも、どうして……」

　オズが街を去ってから3日後に、アリアが遠征から帰ってきた。
　アリアはオズの一件について、クラスのみんなから話を聞いた。
　オズが何者かの襲撃から街を守ったことや、もう少しで街の人たちに命を奪われていたことなどすべてを聞いた。

「街を守ったオズが追放されるっておかしい。どうしてみんなはオズを助けなかったの⁉」
「できることは全部やった。でも、誰も聞く耳を持ってくれなかったんだよ」

　Sクラスのみんなは、オズになすりつけられた罪をどうにか消そうと色々と努力した。
　しかし、誰1人として聞く耳を持たず今に至っている。

「だから、私たちは決めたんだぁ」

　シェリーが笑顔で言った。
　その笑顔の中には、何か大きな覚悟が見られた。

「な、何を？」
「俺たちで街を襲った犯人を倒しに行くんだ！」
「それなら今すぐにでも行こうよ！」

　アリアは食い気味で言う。

「今すぐはだめだ」
「どうして？」
「実力が違い過ぎる。もっと作戦や修行が必要だ」

　アリアは実際の現場を見ていない為、相手の力量が分かっていない。
　しかし、それを知っている4人は、時間が必要だと考えている。
　今のままだとすぐに全滅してしまうだろう。
　そして、修行をする時間はかなり限られている。
　その為、強力な一撃をどのように与えるかが1番重要になってくるだろう。

「倒しに行くのはいつ？」
「4日後だ。相手は魔王城にいる」
「分かった。今すぐにでも始めよう」

　4日後にしたのには理由が2つある。
　1つ目が、オズが行動を始めるのが1週間後であると予想したこと。
　2つ目が、1週間を過ぎると相手の方からの攻撃が始まると予想したからである。
　相手のいる場所は、アウストヴァリリアの追跡によって判明した。
　そうして、オズを除いた5人での修行が始まった。

「私とジャックが相手の気を引く」
「そして、ダリアとシェリーは魔法で相手の動きを封じるようにしよう」
「そうだな」

　サーシャを中心に話が進んでいく。
　みんなは、サーシャの戦術を相槌を打ちながら、静かに聞く。

「最後に私たちが時間を稼いでいるうちに、アリアちゃんが全力の一撃を与える。これでどうかしら？」
「それしか無さそうだな。賛成だ」
「わ、私が⁉」

　アリアは自分がとどめを決めることに驚いている。
　他のみんなは賛成しているようだ。

「アリア君じゃあないと無理だよ（キラーン）」
「そうだな！　アリアちゃんが1番いいよ！」
「そうそう。アリアに託すよぉ」
「私もアリアに任せるよ」

　みんなはアリアに託すことが最善策と思っており、全員が頷いている。

「私、頑張ってみるよ！」

　アリアは笑顔で答えた。

「よし、それじゃあ練習しよう！」
「「「うん！」」」

　そうして1日中練習に取り組み、あっという間に4日が過ぎた。


　◆


　突撃の日の夜明けに5人は、街の噴水広場の前に集まった。

「よし、準備はいいですか！（キラーン）」
「任せろ！」
「おっけいだよぉ」
「大丈夫です」
「うん、大丈夫だよ！」

　5人はそれぞれが多様な表情で足を進めた。