上 下
236 / 280
保健室同盟(仮)と前期図書委員

第49話

しおりを挟む

 ガラガラ。

「おっと、やっと来た。
 様子を見に行こうかと、思っちゃったよ。」

 保健室のドアから頭を突き出して、僕の顔を見るなり、満面の笑みで神谷先輩は迎い入れてくれた。
 もう、待ちきれないって感じだ。
 
「早速、始めましょう!
 土屋先輩は中ですか?」
「うん、とっくにスタンバってるよ。」

 やる気満々の神谷先輩に、僕も胸を躍らせながら保健室に入った。

「有村、遅ーい!ダッシュしたの?」
「ダッシュしちゃダメですけどね、廊下は。」
「ま、座って、座って。
 忙しいよ。
 相関図は完成させなきゃならないし、重谷先輩対策に、藤谷さんへの質問をまとめたり、やる事いっぱい、時間は少ない!」
「ですね。
 まずは、相関図を完成させないと。」

 僕は腕まくりをしながら、パーテーションに貼られた相関図を見上げた。

「えっと、三谷先輩の次は…。
詳しい情報は後々として、事件発生時の第1発見者の藤谷さん。
 当時1年図書委員。
 時期は1月だね…。
 引き継ぎを重谷先輩から受け継いでいるって言ってたね。
 鍵の開け閉めなんかしていたって感じかな。
 どう思う?有村君。」
「重谷先輩に指導して貰ってたって、感じですかね。
 ただ、ドアを開けた時の図書室の状況に驚いて腰を抜かしてる事から、事件発生直前までは、全く怪人には関係ないんじゃないかな。
 もし、隠し事があれば、騒げば自らの首を絞める可能性は高いでしょうから。」
「あら、演技かもよ。
 女はみんな女優よ!」
「お?土屋さんにしては、意外な意見だね。
 けど、可能性を否定出来ないね。
 ま、でも、今回は深掘り無しでお願いするよ。
 冷静な判断の妨げになりそうだ。」
「では、情報としては、第1発見者、前期図書委員1年、鍵の開け閉めってところでしょうか。」
「だね…。次は…飛んで、早川さんにしよう。
 彼女は後から図書委員になったものの、今では深く関わってると思われる節がありそうだ。」
「はい。
 さり気なく、怪人事件の話題を変えようとしたり、宮地に何らかの作業をさせてます。
 しかも、図書室とは縁遠い感じの作業。
 手先も器用で、怪人の破かれた本の修復もしているはずですね。
 つまり、証拠品を彼女は直接見て、触れている。
 何らかの形跡に、気が付いてもおかしくない。」
「証拠品に触れてる点は大切だね。
 つまり、怪人を隠したい人物にしてみれば、敵に回すより味方にした方が得策だ。
 誰だって、証拠をばら撒かれるより、証拠隠滅出来る方を選ぶだろうからね。」
「敢えて、怪人の仲間に入れたって事かしら。
 でも、それって確証は無いわよね。
 書いちゃってもいいの?」

 付箋に書くのを戸惑っている土屋先輩に神谷先輩が頷いた。

「ここは、逆にキチンと書いて欲しい。
 確証は無いけど、逆に限られた図書委員にしか怪人の秘密が漏えいしていない状況を見ると、これしかあり得ないんだ。」
「つまり、情報のストッパー役がいないと…って事ですかね。」
しおりを挟む

処理中です...