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情報とは最大の武器である

第2話

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 程なくして、奈落と樹さんがやって来た。

ピンポンピンポンピンポン。

 もう、鳴らし方で直ぐに奈落だってわかる。

 ガチャ。

「いらっしゃい。」
「うっす!ちゃんと快食快便か?」
「おはようございます。
 おじゃまします。」

 樹さんは相変わらず白衣姿で、奈落の腰に掴まって身体を脇の間からヒョッコリ出して挨拶した。

「おはようございます。
 狭いし、あまり綺麗な部屋じゃないけど、どうぞ。」

 僕は笑顔で2人を招き入れた。

 奈落は相変わらず、ソファにドカッと股を開いて座り、樹さんは申し訳なさそうに小さな体をますます小さくしてを抱えながら座った。
 僕は麦茶を2人に差し出していつも通り、正座して2人に向き合った。

「あ…あのっ!これ。預かってたやつ。」

 ガサゴソと紙袋からICレコーダーを取り出した。

 「えっと…マイクの耐性強化と集音の性能を上げておいた…。
 あと…おススメのグッズを…使わなかったら持って帰るけど…。」
「おススメ!?ぜひ見せて!
 どんなやつ?」
「へへっ。
 …防犯ブザーなんだけど…極小で、名札や生徒手帳に付けておいて欲しいんだ。
 かなり強烈な音…と超音波が5分間出る…。」
「ち…超音波!?」
「あの…逃げ出す時間を稼ぐのに…必要かなって…かと言って、相手を傷付けるのは良くないし…でも音だけじゃ、すぐに向かって来るかも知れないと…思って。」
「やっぱすげぇな!樹!
 状況が目に見えるようだ!」
「うん、うん。
 ありがとう。
 僕の事を1番に考えてくれたんだよね。
 一生懸命に考えてくれたのが、ちゃんと伝わったよ。」

 僕は緊張しながらも、懸命に僕の立場を考えてアイテムを選んでくれて、説明してくれる樹さんの気持ちが何より嬉しかった。
 そして、ちゃんと僕の状況を理解してくれてるのに感動していた。

「ど…ども。」
「樹は相手の事を思いやれる。
 それって、人として大切ですげぇ事だと思うんだ。
 相手にキチンと寄り添うなんて、出来るで中々出来るもんじゃない。」

 奈落は笑顔で、隣の樹さんの三つ編みをグルグルと回した。
 樹さんは、それを気にすることなく、自然に話してきた。

「えっと…僕の上司の天童さんから、提案があって…宮地君の中学時代の話しをしてくれる…人が、他校にいる。
 彼は現在、宮地君とは疎遠になっているので、話しを聞き易いんじゃないかって…。
 情報料とか仲介料は有料だけど…仲介して話しを聞けるようにも出来るけど…どうかなって…。」
「本当…!?」

 願ったり叶ったりじゃないか。
 宮地の情報を手に入れられる。
 過去にあった事、イジメは僕が初めてなのか、それとも中学時代からなのか…。
 そして…彼は何にイラつき、何に腹立ち、何がイジメを加速させるのか…。
 
 したり顔で奈落が顎に親指と人差し指を当てた。

「それはいい提案だぞ。
  いいか、情報ほど価値のあるものはない。
  元手がないのに高く売ることも出来る。
 そして、人を左右する事も可能だ。
 情報を制する者は、最も勝利に近くなる。
 しかしながら、情報は時を逃すと手に入れるのは相当難しくなる。
 チャンスとタイミングが大事だ。」
「あ…懐かしい!家訓の1つだね!
 新生院の受け売りとも言われてるけど。
 爺ちゃん達にずっと言われ続けた。
 初めはうるさいなぁとしか思わなかったけど…。
 その言葉のおかげで…僕は…女の子達に立ち向かう勇気を持てたんだ。
 本当に最高の武器だったんだ。」
「樹さんの武器は情報だったんですね。
 情報なら非力でも全然問題なく使えますね。
 なるほど…。
 経験者のアドバイスは大切にしたいと思います。
 ぜひ、よろしくお願いします。」

 僕は樹さんの提案に、すぐに飛び付いた。
 
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