忘却の魔法

平塚冴子

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天外博士

第6話

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天外博士の邸宅から、俺は金井に会いに急遽、奴の会社に向かった。
博士の話した事を、自分1人で整理できる自信が無かった。
それと…鈴。
やはり、おかしい。
何故、軍手とタオルが必要な事がわかったんだ?
エスパーって訳じゃないだろ。
しかも、天外博士が気にした…軍手とタオル。
鈴が言わなければ絶対に持って行かなかった。
お掛けで話しは出来たが…。

ま、凡人の俺が考えたってたかが知れてる。
ここは、あえて心理カウンセラーの金井に素直に助けてもらうのが1番だ。
ハゲ爺さんの攻略法も教えてくれれば、一石二鳥だし。
俺は鼻歌交じりに車を走らせた。

金井の会社(株)スクール メンタルケアはいつ来ても電気が点いてるな。
デカいビルの最上階にある。
俺は草むしりでガタが来てる脚を引きずるようにして、エレベーターに乗り込んだ。
最上階に着いて、すぐ正面に(株)スクール メンタルケアがある。
ガラス扉を開けて中に入った。
何人かのスタッフがいた。
中々皆さんお若い。
20代の若者ばかりだな。
金井が老けない訳だ。
元がイケメンなんだから、サッサと老けりゃいいのに。
と、心で悪吹いてみた。

俺はスタッフに軽く手を振り、奥の事務所に向かって行った。
コンコン!
「はい。」
「梶だ!話しがある!飯おごってくれ!」
いつものセリフさながらに感情ゼロの棒読みで叫んだ。

ガチャ。
「そろそろ来ると思ってました。
財布の中身が寂しくなる頃かと。」
金井は相変わらず、涼しげに白衣を翻しながら振り返った。
草むしりなんて似合わない顔で俺に笑いかける。
「金はないが、面白い話しがある。
それで文句ないだろ。」
「そうですね。
僕の大好物ですからね。
君とのお話しは。」
「こっちは肉体労働で、腹がペコペコだ。
覚悟しておけよ!」
金井と俺の凸凹コンビは会社を出ると、近くのホテルのビュッフェに夕食を食べに行った。
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