忘却の魔法

平塚冴子

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脳内記憶研究所

第9話

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警察の事情聴取は形式的な物だった。
別に殺人を疑われていた訳では無かったのだ。
狭い部屋に聴取の刑事と向き合って座り、後ろでもう1人の警察官が記録を取っている様だ。
「かなりの年寄りだ。
脳内出血以外の外傷は一切無し、毒物も一切無し。
現場は血の海で初めは、殺人を疑われたが、出血していたのが脳内からのみ。
目、鼻、口、耳、から出血多量だ。
ま、強いて言えば圧力がかかって爆発した感じかな。
血栓でも沢山あったんだろ。」
刑事さんは、ため息をついて俺を見た。
「はあ。じゃあ何で俺は呼ばれたんです?」
「形式的なモンだよ。
最近、あの爺さんに近寄った人間は、お前さん1人だ。
しかし、キチンとしたアリバイもある。」
確かに…昨夜は金井と話していたし、スマホでGPS機能を常にオンしてあったので、記録は自宅になっていた。
コンビニで缶チューハイも買っていて、防犯カメラにも映っていたらしい。
「俺以外に、あの家に出入りしていた人物はいなかったんですか?」
「近所の人も近寄らなかったし、滅多に客も来なかったそうだ。
お前こそ、何であの爺さんに近寄った?
金目当てか?」
「あのね~。
刑事ならちゃんと調べましょうよ。
公務員だからって手を抜きすぎだよ!
俺はフリーライター!
金じゃなく、ネタを仕入れに行ってんだよ!」
「ほう?どんなネタだよ。」
「記事にする前にバラすライターいないでしょ。
まったく、暇なんですか?刑事さんは。」
「ま、一応、聴取も取れたし帰っていいぞ!」
中年太りの腹を突き出して、刑事さんは両腕を伸ばした。

俺は山波東署を出ると、金井からの着信があった事に気が付いた。
多分、金井もすでにニュースで天外博士の死亡を知ったのだろう。
外は昨日から雨が降り続いていた。

「もしもし、金井か?
今、事情聴取が終わったんだ。」
もうすでに昼を回っていた。
「そうですか…実に残念です。
天外博士とは私も話して見たかったのに…。
それはそうと、すぐにこちらに来て欲しいんです。」
金井が珍しく、慌てた様な口調で言った。
「どうした?まさか…スナイパーとか刺客とかに狙われた!?」
「違いますよ。
でも、客人がいるのは当たりです。
とにかく、お昼はおごるので、急いで下さい。」
「はああ?」
何だか、わからないが…。
とにかく急げと言われたので、軽ワゴン車を飛ばして金井の会社に直行した。
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