忘却の魔法

平塚冴子

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脳内記憶研究所

第13話

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一瞬、空気が凍りついたのを感じた。
「…そうですか。
どうやら、君には他の人に見えない物がハッキリと見えてしまうようですね。」
金井は、どこか淋しそうな顔で笑った。
こんな金井を見たのは初めてだった。

「金井…一体どう言う事だ?」
「うーん、梶にわかりやく言えば、感受性が強いかな。それもかなり繊細に。」
「感受性?このチンクシャが?」

「梶…簡単…わかりやすい。」
「!…お前なぁ!」
バカにしてんな!絶対、俺をバカにしてる!
俺は背中の鈴を引き剥がした。

「梶は鈴君の事を良く知ってるのかな?
相楽教授は鈴と言う名前以外は教えてくれなくてね。」
「俺も知らん!25歳って事しか。」
そうだ…何も知らない…。苗字さえも…。
なのに、何でこいつは懐くんだ?

「腹が減った。こってりしたのがいい。
…ラーメン。餃子付きの。いつもの場所。…。」
鈴が目をクルクルして、何かを読むかの様に俺の顔を覗いて呟いた。

「なっ…!えっ…?
エスパーか?これが感受性か?」
俺は驚いた。
確かに、ここに来る時にそう思った。

「来る!梶のお尻!」
鈴は俺のケツを指差した。
今度は何だよ!

ブルルルブルルル!
ケツのポケットに入れていたスマホがメールの着信を伝えた。
「これは…やった!新生院 桔梗からのメールだ!」
俺は思わず、メール画面を金井に見せた!
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