忘却の魔法

平塚冴子

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『加藤 星斗』と『近藤 陸』

第9話

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「ですから、それなりの対応を考えなければならないと考えます。」
「それなりの対応って…。」
「回を増すごとに、彼は僕等に接近して来ます。
まあ、彼の性格上、一気に襲うと言う事はないでしょう。
どちらかと言うと、真綿で首を絞めるような…ゆっくりと、相手が気が付かない程度の距離を少しづつ縮めて行くのです。」
「ホラー映画かよ…。」
背筋がゾワゾワして来やがった!

「ここから先は、鈴にもそれなりに自己防衛させなければならないと、僕は考えます。」
「自己防衛!?」
「いくら僕等が側に居ても、万が一という事も想定しておかなければなりません。
…とは言え、今から身体を鍛えたりとかは無理ですけどね。
いろんな策を講じておきたいんです。」
「どんな策だよ。」
「教えません。
ですが…その為にしばらく、鈴を僕の元に預けて下さい。
心配なら女性スタッフも付けます。」
「何だよ、俺にも教えて貰えないのかよ。」
「敵を騙すには、まず味方から…という訳ではありませんが、その方が効力を保てるはずです。」

確かに…俺の側にいても何をしてやれる訳じゃないし…けど…。
少しだけ…ほんの少しだけ寂しい気がした。

「そっか…そうだな。
俺も『18番』について天堂に調べて貰ってるから、そっちに力を注ぐよ。
後…仁科 加奈子とそのうち、もう1度話さなきゃならないと思ってる。
天外博士の死亡時のアリバイとかね。
あの場所にきっと、仁科 加奈子はいたはずだ。」

「天外博士の殺害の可能性があると?」
「わからないけど、あのメールは天外博士の送ったものじゃない。
だいたい、俺に情報を小出しにしてたんだ。
あんな大事な『18番』の手掛かりを、俺に残すとは考え難い。」

金井も頷いてくれた。
そして、同意するかのように笑みを浮かべた。

「『18番』を欲しがる仁科 加奈子。
彼女は『忘却魔法』が上手くいってる今のうちに、『18番』から欠陥の対策方法を引き出したいと考えたのかもしれませんね。
頭の良い女性なら尚の事。
欠陥が表に出てから策を講じても、意味が無いと考えてもおかしくない。
天外博士からその事を聞き出そうとするのは必然でしょうね。」

「そうだよな!なんか、お前にそう言われると、自分の意見に自信がついてきた!」
「あはは。単純ですねー。
まあ、そこが梶の魅力ですが…。」

クスクスと笑う金井を見て、『加藤 星斗』と会った時の不安が和らいだ。
親友ってのは、やっぱり心地いい。
側で笑ってくれるだけで、勇気や力が湧いてくる。
この、形のないエネルギーは『加藤 星斗』が用いえない物だ。
そして…、それそこそが俺の持つ最大の武器だ!

俺は一気にコーヒーを煽った。
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