忘却の魔法

平塚冴子

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アナスタシアと鈴

第4話

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「これを着けて!」
背後から仁科加奈子が大きなヘッドホンを俺達に渡して来た。
「何だ?これ?」
俺が呟くと、仁科 加奈子は激怒して叫んだ
「早く!」
「梶!いう通りに!」
「おう…。」

背後から現れた仁科 加奈子はヘッドホンに大きな最新メカ搭載の機関銃の様な物を持っていた。
「下がって!」

ガンガン!ガッガッ!
バキッ!

ドーン!

ドアを壊し、2人が入って来た。
ホラー映画にあるシーンかよ!
2人共、白い作業着がドス黒い血液で汚れていた。

「仁科先生…!あははは。
何で教えてくれなかったのさ!
こんなに楽しい事!」
「陸が教えてくれたんだ!
こんなにも満たされるなんて!
僕等は支配者なんだよ!」

狂った表情で笑みを浮かべて近寄る2人に、仁科 加奈子はたじろぐどころか、前に進んで、銃口を
『近藤 海』の顔付近に充てた。
「さようなら。」
カチッ!
音はそれしか鳴らなかった。
デカいのに何の迫力もなかった。
「仁科先生、此の期に及んで、おもちゃ?
子供扱いばっかり。」

バシッ!
『近藤 海』が充てられてる機械を払う仕草をした瞬間!
事態が一変した。
「うぐっ!」
『近藤 海』の身体がガクガクと揺れ出した!
泡を吹き、大量の汗を流し、目は真っ赤に充血していた!
バタン!
と、いきなり倒れた。
外傷は無い…ただ…目、耳、鼻、口から大量の血液が流れ出した。
「なんだと!」
「梶!」
俺と金井は目の前の光景に驚きと衝撃を隠せないでいた。
あれは…まさか…!

「うわああ!」
「逃がさないわ!」
仁科 加奈子は『近藤 空』にも同じように彼の耳に銃口を充てた。
カチッ。
『近藤 空』も『近藤 海』同様に震え出して、いきなり倒れた。

『出た!仁科先生の殿下の宝刀!
まさか、『パンドラの箱』開放で殺人マシーン開発なんて!
戦争大国なんて喉から手が出るほど欲しいよねー。
死の商人にでもなれるんじゃないですか?』

館内放送で嘲笑う近藤 陸に仁科 加奈子がキレた。
「やめなさい!陸!
こんな物使わせるなんて…。
私はこんな物を使って儲けるつもりなんてないわ!
不可抗力よ!
これは…天外博士の遺産だもの…。」
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