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第二章
デルアビド王立蔵書図書館②
しおりを挟む入館審査は案の定、半ば私の顔パスの様な状態で進んだ。
本来ならアルのこの身なりでは審査は厳しいものになっていただろう。
入館審査官から1日パスポートを渡されて館内は首からそれをかけるようにアルは命ぜられた。
「キチッとしてるべな。
さすがデルア王の管轄してる施設だべさ。」
「確かに、デルアビド王は神経質でこだわりがあると言う噂ですね。
ま、私がお会い出来る身分ではないので噂の域は出ませんが。
これから会うエリザ司書官長もなかなかのこだわりの人ですが、身なりで人の価値を決める方ではありません。
彼女はドワーフとエルフとノームそして人間の血が混ざる言わば…チャンポン種ですから。
人種差別という概念はないので、アルにも仕事をくれるでしょう。」
入館審査室を後にして、私とアルは司書館室を目指して図書館本館へと向かった。
図書館本館にはパスポートをかざすと両開きの扉が開放される仕組みになっている。
ギギギと音を立てて黄金色に輝く扉がゆっくりと開いた。
中央の大階段を登り3階を右手に曲がって、天使像のあるホールを抜けるとそこには古のドラゴンが彫られたドアをが現れる。
ドアのプレートには司書館長室、在室中と大きく書かれている。
コンコン。
私はドアをノックして一声掛けた。
「エリザ、少し遅くなったが蔵書整理に来ました。
それと、力仕事が出来そうな者を連れて来ました。」
2拍ほと置いてからドアが勝手に開いた。
扉の向こうには2メートル幅の事務机とその上の本の山々に囲まれた席に、赤いスエードのマントを羽織り、ベレー帽を被った小柄で巻毛の色白の娘が瓶底並みの片眼鏡を掛けて、こちらを上目遣いで睨んでいた。
「チャンポンではない!混合混血種だ。」
急にキレた口調で私を指差した。
「えっと、エリザあのどう言う…。」
「お前が珍しく他人を連れて来てると聞いてな。
どうせ私の事を説明書する件で、チャンポン種だと説明すると踏んだんだ。
お前の口調は丁寧ながらも、ちょくちょく小毒が入るからな!」
「んぐっ…。」
確かに言った。
紛れもなく言った。
相変わらずの洞察力だ。
「おお!大正解だべさ!
言った言っただよ!」
アルが両手を叩いて大喜びした瞬間、部屋中に警報が鳴り響いた。
ビィ~ンビィ~ン!
『手配中ノ人物発見!
デルアビド王ヨリ連絡アリ。
連合国一斉通達アリ!
アルバック王発見シダイ速ヤカ二自国ヘノ帰国ヲ促スヨウ指示アリ!』
一瞬、身を縮めて警戒したが、私ではなくアルに反応した様だ。
確かに一国の王がふらふらと自国を離れるのは、はなはだ問題だ。
大袈裟に捜索とは行かないまでも、側近達が野放しする訳はないか。
1分ほどで警報は鳴り止んだ。
「この警報システムはデルアビド王がこの図書館の為に自らの術にて作り出した物。
この館内全てがこのシステム下にあるのだが…。
ふむ。」
「おーや、アルバック王ですって~いゃ~ビックリしました。」
知っていたさ、知らない訳ないんだよ。
だから早急に離れたいんだよ。
そう思いながら、この場で驚かないと不信感を持たれてしまう。
白々しいとは思ったが、一応少しだけ大袈裟に驚いてる真似をした。
「ふむふむ。
アルバ王国のアルバック王かぁ。
これは初にお目にかかります。
私はエリザ。
エリザ.デポン.トラスト……。」
「長い!長いだよ!
オラ十文字以上の名前は覚えられないべさ!
エリザで頼むべな!
オラの事もアルでいいべさ。
けんど、こう見つかっちゃ皆んなに迷惑かけるべな。
戻らな行けないべかな。
はぁ。」
アルバックの前まで歩み寄って頭を下げて挨拶するエリザに、アルはバツが悪い感じで釣られて頭を下げた。
「…と、礼儀はこれまで。
確かに伝達は承ったが、そもそもここには二人共仕事に来たのであろう。
仕事は仕事としてキチンとこなして貰いたい。
シルバも知っての通り、ここの人手は職員審査のキツさもあって足りてはおらぬ。
アルを帰国させるのはその後でも充分であろう。」
「流石はエリザ、何より仕事優先の優良司書館長様。
デルアビド王が人一倍信頼を置いてるのが分かります。」
エリザと私のやり取りを見て、アルが首を傾げた。
「シルバ?
名前はなかったんじゃ…。
勝手にナナシと呼んじまったべ。」
「ナナシ…プッ!ナナシ!
シルバとは私が勝手に呼んでる名だ。
何せ名前が無いというのでその、小汚い銀髪からそう呼んでるだけだ。
なるほど、ナナシがいいな。
これからは私もナナシと呼ぶ事にしよう。
一国の王から賜った、有難い名前だな。
ナナシ!ははは!」
だから、指を刺して笑うな。
そして、それ程にツボにハマる事かよ。
もう、ナナシで諦めよう。
何せ新たなる問題もこの時点で発生しているのだ。
ここでエリザにアルが一国の王であるとバレた以上、ここに置き去りにして私が身を隠すと大きな問題となり、騒ぎが大きくなる事が、必須だ。
そんな事はごめん被る。
作戦変更を余儀なくされた。
ここはアルを自国まで速やかに帰国させてから、その場を立ち去るのが最善だ。
誰も疑ったり、文句を言う者などいないだろう。
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