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第二章
デルアビド王立蔵書図書館⓷
しおりを挟む「王とは言え、ここでの仕事に身分なんて全くの関係ナッシング!
まず、アルにピッタリの作業を与える。
半巨人のオーダムと一緒に返却された本を本棚に戻して貰いたい。
シルバ、いやナナシにはいつも通り蔵書の選別、新書の振り分けをデータ化して貰いたい。」
「半巨人?本棚に戻すだけだべな。簡単簡単!オラ一人でも出来そうだな、任せるべ!」
「甘く見てもらっては困りますアル。
ここの蔵書はとてつもなく多く、私ですら全てを把握出来ていない。
しかもここの本棚は巨大でオーダムですら背伸びをして本をしまう程だ。
まあ、アルには下段の本を中心にしまってもらう事になるけど。
この本の裏表紙を開いて見て。」
エリザは手前にあった薄い本をアルへと渡した。
「んっだば、頭文字と数字が連なってるべ。」
「本棚はジャンル別の頭文字に分かれていて、下段から上段、室内の奥の棚から扉前の棚まで番号が振ってある。
そして今度は背表紙を。
その本があるべき棚がわかったら、次に本を左から若い番号順にその背表紙番号を並べる事。
これで本は常に正確な位置に保管され、使用の際には速やかに取り出せる仕組みになっているのだよ。」
「けんど、ここじゃ魔法使いは使わね~んだか?
魔法使いならパパッと片付けてくれそうなもんだけんど。」
「ノンノン!
繊細で神経質な魔法使いにあった事はあるかい?
あいつらは魔法に依存しすぎる。
そのせいで、魔法以外の事は事のほか大雑把だ。
適当なのだよテキトー。
ここの書籍の扱いには魔法使いの様な適当な作業をする者は不必要なのだよ。
本とは繊細な扱いをしてこそ長くその存在意義を発揮できる。
分かるかね?」
確かに、そもそもきめ細やかな対応が出来る者に魔法そのものの意味は無い。
自ら行動した方が早いからだ。
呪文を唱える時間があったら自ら整理整頓するだろう。
つまりはそう言う事だ。
「なるほどな。
確かにオラにも心当たりがあるべな。
ま、頭文字と数字だけならオラも分かるべな。
よっしゃ、早速一仕事終えるべな。」
「終わったら、この国を出て帰国する事をお忘れなくアル。
…て、見張ってないと逃げそうですね。」
「何を他人事の様に言っておるのだ。
ナナシが送って行けば良かろう。
旅の金は多少の賃金割増と経費をプラス使用した物を渡そう。
何、デルアビド王に文句を言われれば、アルバ王国に利子を付けて請求すると伝えよう。
人手の足りぬ図書館を手伝ってもらう為だ。
安かろう。」
案の定、私の考えた通りエルザは好意的にアルについて行く私に資金提供を申し出た。
間接的に私が仕方なく送って行くという話しに持って行った事で引き出せたのだ。
何せ送り届けるとはいえ旅には金がかかる。
今のアルにも私にも大した手持ちの金がないだろうし。
資金提供のチャンスは逃せない。
効率よく短期間でアルを自国ヘ帰さなければ。
夕刻までの仕事の約束の為、アルは迎えに来たオーダムと一階へ、私はエリザと共にこの階の司書館室と対極に位置する書籍管理整理室へと向かって歩いていた。
「王のわりに、凄い身なりだったがアルバック王の人柄が噂通りという事が一眼で分かったな。
あれ程清い心で、あの歳まで成長出来る人物はそうそういまい。
それに人間特有の何故か助けたくなる様な抜け感もある。
人徳というものらしいが。」
徐に歩きながら、エリザが後ろを歩く私に話しかけてきた。
エリザとは素性の話は一切しないが、それなりの受け答えはしていて来ている仲だ。
「しかし、不思議ですね。
デルアビド王とアルは戦友であり仲間なのですよね。
魔王討伐の勇者一行の。
なのに顔も見ずに、自国ヘ帰国を促すなんて、ちょっとだけ変だと感じますが。」
私は少しだけ気に掛かっていた事を口に出した。
「いやいや、そうとは限らないんじゃないかな。
目的が一緒である時は仲間で親しく出来るが、いざ目的が無くなったり、あるいは互いに別の目的が出来たとするならば、それ程親しくする必要性を感じない。
特に行動に効率化を求める者ならば、不必要とあらば切り捨てる事もあり得るだろう。」
「デルアビド王がそうだと?」
「可能性を言ったまでだ。
本当だとしても私にはなんら無関係な話しだ。
現在、私はある禁書発見の知らせを受けていてそれどころじゃないのでね。
私の興味はその事で埋まっている。
物はまだこちらに届いてないものの、届いた際にはぜひナナシにも立ち合いをお願いしたいのだが。」
「禁書、ですか?
また、どこぞの黒魔道士やら赤魔道士が悪意を持って作った物でしょうか?
適切な処置をしないと危険かもしれませんね。
だとしたら、私など立ち合わない方がいいかと。
私は魔力も道具も大して使えません。
自分すら守れる自信がありません。」
「その点は安心しろ。
私が禁書の鑑定をするのは、本にかけられた術を全て取り除いた後だ。
万が一術が解かれなくても、その場合は厳重に機密保管庫に直行させる。
ま、だいぶ先の話しではあるのだが心に止めて置いて欲しい。」
「はぁ。
わかりました、一応。」
アルを自国ヘ帰したらトンズラしようとしてる私に言ってもなぁ。
だいたい、素性の知れぬ私への信頼度が高過ぎないか?
この国が平和すぎて平和ボケしてるのか?
エリザが人を差別しないのは有難いが、私に対しての信頼度は本人の私から見ても、不可思議だ。
人徳があるアルとは大違いなのだから。
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