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第三章
国境の谷とセクシーキャッツ⑤
しおりを挟む暗視スコープを付けた三人じわじわと間合いを詰め始めた。
「大人しくしなよ。
女だからって甘く見ないでよ~。
私ら生まれながらに山賊なんでね。」
アルの背後から半巨人であろうビキニスタイルの大女が襲い掛かる。
「アル!右後ろ斜め上から棍棒!」
「あふぇっ!」
「でぃやあぁあ!」
アルは振り下ろされた棍棒を避けて、本能的に宙に舞った。
左側から私を目がけてボウガンから矢が放たれた。
シユパッ!
ふぁさっ!
私は高速の動きと柔軟な体を仰け反らせ、右足で矢を蹴り上げた。
ガッ!
そしてそのままバク転とバク宙をして、ボウガンを持つ小柄なソバカス女の背後首を取った。
私の両手剣は見事にピタリとソバカス女の首に刃を付けていた。
「ミーヤ姐さん!コイツらヤバいっす~!」
ソバカス女の声が広間に響き渡る。
アルは宙に浮かんだ後に、そのまま大女の背後に落下し、感覚のみで手持ちのナイフを使い、大女のまとめ髪を切り落とした。
スパア~ン!
「いやああ!せっかく伸ばしたのに!3年かかったのよ~!」
大女は感情的に、暗視スコープをぶん投げて頭を掻きむしった。
「アイーナ!伏せな!」
ソバカス女の正面に、ダイナマイトボディのセクシーレディが、二丁拳銃の銃口をこちらに向けた。
「おイタが過ぎたよ。
坊や。」
ズドン、ズドン!
レディの銃口から同時に鉛玉が発射された。
黄金の瞳がそれらの軌道を、真っ向から捉えた。
『…闇の主が問う。
我に反するか従うか瞬時に答えよ、双頭の鷲よ!』
私を目がけて飛んできた鉛玉が2つは急ブレーキを掛けて宙で一旦止まった。
そして180度向きを変えて、飛んでいった。
ファサッ!カッ、カッ!ボワッッ!
2つの玉はレディの両頬をかすめ、物凄い速度で後ろの一度消えた松明に当たり、摩擦により発火した。
「あ、嗚呼あ。
アンタ一体…。」
レディはヘナヘナとその場にヘタレ込んだ。
他の二人も降参したらしく両手を上げてその場に座り込んだ。
「あんれ~、ナナシの眼がまた戻っただよ。
どういう事だべな。」
「あ、え~チャンポン、そう私もエリザと同じくチャンポン種なんですよ。
何処の何の血が混じってるか、もう何が何だかわからないくらいに。」
あ~、まごう事なき純血種なんだよ本当は。
一切混じりっ気なしのね。
松明の火が着いた事で明るさを取り戻した広間で、私の瞳は紫色に戻っていた。
とにかく、ここは大ボラで切り抜けるのが必須だ。
「いやあ、拳銃が暴発してくれて助かりました。
命拾いラッキー!みたいな。」
「おお!暴発で松明も着いたのがだか。
すっげえべ。」
んな訳あるかい。
いゃ~、アルが単純で良かった。
「暴発って、さっき…⁉︎」
私の足元でヘタレていたソバカス女が、あんぐりと口を開けた。
このバカ女!喋るなよ!
「アイーナ!…確かに、暴発?…だったんだよ。
そのお方の言う事が全てだよ。」
レディ、いやミーヤ姐さんと呼ばれていた女は私をしっかりと見据えながら答えた。
んん?なんだか…変な感じが…。
ミーヤは私の瞳を真っ直ぐ見ながら立ち上がった。
あれれ…この感じ、もう、久しく無かったが、アレか?
え、ちょい待て!そんな短時間で?確かに暗闇の中、銃口を挟んでしっかりと視線を合わせていたが…マジかぁ~。
「どなたか存じませんが、失礼致しました。
私達、親も家族も無く、片寄あってこの谷で生活のために已むなく、山賊をしているセクシーキャッツですわ。
私は族のリーダーのミーヤ。
大きなのはセルカ。
この小さいのがアイーナ。」
「そりゃ、どうも。」
私は顔を引き攣らせながら、躙り寄るミーヤに連動して後退りをした。
完全に魅了されてるじゃないかー!
やっちまった!
私の瞳は黄金になると魔力が増大する。
そしてその瞳を直視した者を、魅了する力があるのだ。
過去にはその力を利用した事もあったさ、確かに便利だと思っていたよ。
けど、今は違う!勘弁してくれ。
何とか理由を付けてコイツらと離れなければ。
アル一人でも厄介事を抱えてんだ、不可抗力とはいえ元魔王の力なんて使うんじゃなかった。
闇のバカヤロー!
叫び出しそうな声を押し殺して一呼吸置いてから、アルに問いかけた。
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