しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第三章

国境の谷とセクシーキャッツ⑥

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「どうしますか?アル。
 犯罪ですし、この先も悪さをするでしょう。
 懲らしめた方がいいでしょうか?」
「んにゃ、必要ねぇべな。
 コイツらだって生きるのに必死だべ。
 良い悪いの判断は本人の良心に任せるべきだべ。
 けんど、一つだけ約束して欲しいんだべ。」

 切り落とした髪を集めて、大女に返すと、アルは優しく微笑んだ。

「追い剥ぎや寝込みを襲ったとしても、命だけは助けてやって欲しいんだべ。
 それだけあれば何とかなる。
 何とかならなかったら、そん時はそん時で運命を受け入れるしかなんねぇべ。
 みんな、生きるのに必死だべ。
 誰も悪くねぇべさ。きっと。」

 まったく、稀にアルは本物の王様らしい言葉を吐く。
 しかも、それは真理に他ならない。
 アホなんだか天才なんだか。
 しかし、私を討伐した者がこれ程の心根がある者であった事が私は嬉しかった。
 
「あと、気になったんだけんど。
 谷で強奪するのも山賊て言うんだな。
 確かに谷賊とかって聞いた事ねぇけんど。」
「アタシらが気にしてる事さりげなくツッコむな!
 こちとらそれを受け入れてやってんだクソガキ!」

 ミーヤがアルの方へ向かって一喝した。
 地雷踏んだってやつだな。
 確かに言葉に出さなかったけど、私もそこは引っかかっていた。
 けど、わからなくもない。
 女子供だけで賊だなんて、普通の場所ならすぐに力づくで男どもに潰されている。
 この地形を活かして、何とか生きてるんだろう。

「で、お兄さんこの谷に来たって事は向こう岸に渡りたいんだろ?
 私がなんなら案内してあげるよ。
 なんなら着いて行ってもいいよん。」

 魅了された目つきで、ミーヤは私に囁いた。
 近い!近い!ウザい!
 私は両手をでミーヤを押し返した。

「そうですね。
 確かに向こうのアルバ国領内に入りたいのですが。」
「よくいるのよ。
 アルバ国入国の通行許可証無しでこの道を通る欲深い商人がね。
 安心しなさい。
 向こうの崖にはこっちよりも多くの通行穴が開いてるのさ。
 川さえ渡れば上へ上がるのは簡単だよ。
 て、お兄さんも鉱石狙い?」
「鉱石?向こうは有名な鉱山でもあるのですか?」

 初耳だな。
 宝石などの石は別の産地が有名だが。

「鉱山は数える程しかないけど、宝が隠れてるのは向こうの絶壁。
 つまり崖の地層に、錬金術に適した鉱石が見つかってね。
 あさましい商人が鉱夫を雇って穴を開け始めたんだよ。」
「へぇ、けんどこっち側にはここしか道は見つかんなかったけんど。」
「こっちには全く無いのさ、その鉱石がね。
 だから川を渡った鉱石の値段は跳ね上がるんだよ。」
「だったら、こっち側にもっと穴を開けて、沢山持ってける様にすれば儲かるはずだべな。
 けんど、こっち側は穴一つ。」
 
 いや、これはデルア国側の商人の策略だろう。
 複数の商人が売買に参加すると価値が下がる。
 希少で取り扱う人間が少なければ少ないほど単価が上がり儲かる。
 取り引きする人間が少なければ鉱石を取るアルバ国側の鉱夫は、その人間に安価でしか鉱石を売る事が出来ず、数で勝負するしかなくなる。
 海老で鯛を釣る商売テクニックだが、国側がこれを把握してないのか?
 それに、よく考えてみたらコイツら山賊って…。

「まさかと思うが、君達はデルア国の商人に雇われて、自分以外の商人を追い払っているのでは?
 そして推測するに、上の橋もワザと壊してあるんでは?」
「!姐御やばいって、コイツら勘が良すぎる。
 政府の回し者かも!」

 私の足元でヘタレていたソバカス女のが叫んだ。
 政府の回し者てか、国王が1人紛れ込んでるんですけど、目の前に~!
 
「流石は兄さん、顔も良ければ頭も良し!その通りだよぉ~。
 私ら山賊家業だけじゃ食ってけないだろう。
 かと言って石の事に詳しい訳じゃないから、鉱石取っても売りようがない。
 鑑定も出来なきゃ価値がわからないからね。
 そこで商人と取り引きしたって訳。」

 だーかーらー!
 胸を押しつけるな!
 牛か?テメェは乳牛かぁ!
 ブチ切れそうなこめかみの血管を押さえつつ、私はアルに問いかけた。

「で、アルはここの鉱石の事は知っているのか?
 知っていたら政府で管理すればある程度の税収も見込めるし、国も少しは潤うんじゃないか?」
 「……?税しゅ?潤う?何が?」
「すまん、聞いた私が悪かった。
 もういい。」

 私は壁にもたれかかって溜息をついた。
 わかってるさ、嗚呼もう。
 私は既に世界征服どころか一国の王にさえ、なりたいなどという欲はないが、アルにはもう少しだけ王としての器を見せて貰いたいものだ。
 つい、私だったらと考えてしまう自分にも嫌気がさした。
 私にはそんな器などないのだから。
 私はもう二度と他人を導けない。
 
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