しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

文字の大きさ
23 / 61
第四章

国境越え、いざアルバ国入国へ⑧

しおりを挟む

 正午過ぎまでアルに水浴びさせたりあちこちをブラブラとしながら時間を潰し、そろそろと頃合いを見てサーカス団のテントへ向かった。

「お待ちしてました。
 旦那ぁ!ささ、支度しましょう!支度!」
 
 サーカスのテントに手をかけた瞬間、団長が食い気味に頭を出してきた。

「ち、近い!近い!
 支度だと?別にこのままで…。」
「なーにをおっしゃいます!
 この格好のどこがサーカス団員?
 怪しまれますよ。
 衣装なら死ぬ程あります。
 ウチの子たちはメイクも一流!
 バッチリ仕上げます!
 安心して、その身を任せて~。」
「うっ。」

 確かに理にかなってる。
 その通りなのだが、身体が警報を鳴らしてるんだよ。
 身震いする私の後ろからアルが顔を出した。

「面白そうだべ!
 オラもメイクしてみてぇべ!」

 おい、コラ!
 余計な事おぉ!
 見ろ!団長だけじゃなくその後ろの女性団員の含み笑い!
 企んでるじゃねーか!
 あの手の女の目には悪意があるんだよ、私には覚えがあるぞ!

 団長の後ろでサーカスの女性団員が両手に化粧品やら、ドレスを持ってニヤニヤしていた。

「うわー、いろいろあるべ。
 お!これもええべな。
 あ、あれも!
 なんか、いっぱいで迷うべなぁ。」
「いゃ~ん、可愛い!
 純朴そうな坊ちゃん、創造意欲湧いちゃう!」
「団長!団長!
 アタシはそっちの細イケメンね!」

 アルは勝手にズンズンと奥へ入り込み、女どもと衣装をガサゴソと選び始めた。

 て、何一緒になって浮かれてんだよ!
 おもちゃだよねー!完全に目的違って、おもちゃにしてるよね!
 しかも、お前らそいつ、勇者だぞ、わかってるのか?いやわかってないか。
 嗚呼もう、どうにでもなれ!

「時間が残り少ないです。
 旦那、早く支度しましょう、ね、ね。」
「ええい!わかった、手短にな!」

 だから、顔近づけるなって。
 せっかく水浴びしたんだから。
 くそッ根負けだよ。

 私は力無く項垂れたまま、女性団員たちに引き摺られるようにテント内へ入った。
 
「いゃ~ん。
 お兄さん、肌が真珠のようだわあ。
 きめ細かくて艶やかで。
 羨ましいわ。
 切長の目も妖艶。
 化粧映えしそう。」

 ああ、そう。
 もう、まな板の上の鯉だよ。
 好きにしてくれ!

 1時間、テント内でたっぷりとおもちゃにされて、私とアルは仕上がった。

「で、コレはどういうことかなぁああ?」

 仕上がった私の姿は、髪を巻き上げ、銀に宝石の付いたティアラをつけ、純白のウェディングドレス風レース付きのミニスカートだった。

「きゃー素敵。
 銀の髪にはコレが1番!
 神々しいわ。」

 なんだよ!元魔王に向かって神々しいって、馬鹿にしてるのか?
 クロスペンダント付けてる元魔王って、笑わせ師かよ!
 血管切れそうだよぉお!
 
 頭の中でありとあらゆるツッコミがグルグルと駆け巡った。
 それとは反対に、アルは上機嫌だった。

「ボンボンまでついてるべ!
 玉乗りでもしてサービスするかなぁ。
 メイクも結構楽しいもんだべ。
 別人別人!」

 コ○プレイヤーか?
 はしゃぐなはしゃぐな!
 お前はいいよ、頭に大きなお団子くっつけた女の子ピエロだからお祭り仮装で別人感MAXだろうけど、コッチは創作側の下心あるパターンだからな!膝下素足だからな!
 しかもハイヒール!
 歩きづらいったらありゃしない!

「旦那ぁ!最高です。
 これなら、誰も不法侵入なんて思いません。
 ていうか、そんな事ぶっ飛んで見惚れてしまいますぅ。
 いっそ、うちに本気で入ってください花形として!」
「ここはサーカスだろうが!
 見世物小屋でもやろうってのかよ!
 死ねー!」
「いやん。」

 ガッツ!ギュウゥ。

 思わずハイヒールで団長を蹴飛ばした挙げ句に踏みつけてしまった。
 が、気持ちの悪い事に逆に悦びを与えてしまったようで、ウットリと団長はその場で昇天した。

「ナナシ、ダメだべ。
 団長さんをイジメるでねぇよ。
 せっかく協力して貰えるってのに。
 可哀想だべ。」
「いや、悦んでる!
 見ろこの恍惚の表情。
 私にその手のゲテモノ趣味はないがな!」
「ほー、ナナシはドSだったべなぁ。
 なんだか親しみ湧くべな。」
「?」

 なんだ?今の受け答えは。
 ドSで親しみ湧くってどういう事だ?
 てか、元魔王がドSじゃなかったら逆に変だろう。
 ドMの魔王なんて、存在意義が破綻してるからね、目も当てられないからね。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!  ↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓  ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...