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第四章
国境越え、いざアルバ国入国へ⑧
しおりを挟む正午過ぎまでアルに水浴びさせたりあちこちをブラブラとしながら時間を潰し、そろそろと頃合いを見てサーカス団のテントへ向かった。
「お待ちしてました。
旦那ぁ!ささ、支度しましょう!支度!」
サーカスのテントに手をかけた瞬間、団長が食い気味に頭を出してきた。
「ち、近い!近い!
支度だと?別にこのままで…。」
「なーにをおっしゃいます!
この格好のどこがサーカス団員?
怪しまれますよ。
衣装なら死ぬ程あります。
ウチの子たちはメイクも一流!
バッチリ仕上げます!
安心して、その身を任せて~。」
「うっ。」
確かに理にかなってる。
その通りなのだが、身体が警報を鳴らしてるんだよ。
身震いする私の後ろからアルが顔を出した。
「面白そうだべ!
オラもメイクしてみてぇべ!」
おい、コラ!
余計な事おぉ!
見ろ!団長だけじゃなくその後ろの女性団員の含み笑い!
企んでるじゃねーか!
あの手の女の目には悪意があるんだよ、私には覚えがあるぞ!
団長の後ろでサーカスの女性団員が両手に化粧品やら、ドレスを持ってニヤニヤしていた。
「うわー、いろいろあるべ。
お!これもええべな。
あ、あれも!
なんか、いっぱいで迷うべなぁ。」
「いゃ~ん、可愛い!
純朴そうな坊ちゃん、創造意欲湧いちゃう!」
「団長!団長!
アタシはそっちの細イケメンね!」
アルは勝手にズンズンと奥へ入り込み、女どもと衣装をガサゴソと選び始めた。
て、何一緒になって浮かれてんだよ!
おもちゃだよねー!完全に目的違って、おもちゃにしてるよね!
しかも、お前らそいつ、勇者だぞ、わかってるのか?いやわかってないか。
嗚呼もう、どうにでもなれ!
「時間が残り少ないです。
旦那、早く支度しましょう、ね、ね。」
「ええい!わかった、手短にな!」
だから、顔近づけるなって。
せっかく水浴びしたんだから。
くそッ根負けだよ。
私は力無く項垂れたまま、女性団員たちに引き摺られるようにテント内へ入った。
「いゃ~ん。
お兄さん、肌が真珠のようだわあ。
きめ細かくて艶やかで。
羨ましいわ。
切長の目も妖艶。
化粧映えしそう。」
ああ、そう。
もう、まな板の上の鯉だよ。
好きにしてくれ!
1時間、テント内でたっぷりとおもちゃにされて、私とアルは仕上がった。
「で、コレはどういうことかなぁああ?」
仕上がった私の姿は、髪を巻き上げ、銀に宝石の付いたティアラをつけ、純白のウェディングドレス風レース付きのミニスカートだった。
「きゃー素敵。
銀の髪にはコレが1番!
神々しいわ。」
なんだよ!元魔王に向かって神々しいって、馬鹿にしてるのか?
クロスペンダント付けてる元魔王って、笑わせ師かよ!
血管切れそうだよぉお!
頭の中でありとあらゆるツッコミがグルグルと駆け巡った。
それとは反対に、アルは上機嫌だった。
「ボンボンまでついてるべ!
玉乗りでもしてサービスするかなぁ。
メイクも結構楽しいもんだべ。
別人別人!」
コ○プレイヤーか?
はしゃぐなはしゃぐな!
お前はいいよ、頭に大きなお団子くっつけた女の子ピエロだからお祭り仮装で別人感MAXだろうけど、コッチは創作側の下心あるパターンだからな!膝下素足だからな!
しかもハイヒール!
歩きづらいったらありゃしない!
「旦那ぁ!最高です。
これなら、誰も不法侵入なんて思いません。
ていうか、そんな事ぶっ飛んで見惚れてしまいますぅ。
いっそ、うちに本気で入ってください花形として!」
「ここはサーカスだろうが!
見世物小屋でもやろうってのかよ!
死ねー!」
「いやん。」
ガッツ!ギュウゥ。
思わずハイヒールで団長を蹴飛ばした挙げ句に踏みつけてしまった。
が、気持ちの悪い事に逆に悦びを与えてしまったようで、ウットリと団長はその場で昇天した。
「ナナシ、ダメだべ。
団長さんをイジメるでねぇよ。
せっかく協力して貰えるってのに。
可哀想だべ。」
「いや、悦んでる!
見ろこの恍惚の表情。
私にその手のゲテモノ趣味はないがな!」
「ほー、ナナシはドSだったべなぁ。
なんだか親しみ湧くべな。」
「?」
なんだ?今の受け答えは。
ドSで親しみ湧くってどういう事だ?
てか、元魔王がドSじゃなかったら逆に変だろう。
ドMの魔王なんて、存在意義が破綻してるからね、目も当てられないからね。
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