しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第四章

国境越え、いざアルバ国入国へ⑨

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 とにかくドタバタを繰り返して、何とか国境警備隊駐屯地の入国管理審査の順番がまわってきたか。
 入国審査は一定の料金と自国の商業許可証、同盟国の往来許可証の提示が求められる。
 代表者の雇い主証明書と雇用証明書に人数を明記して提出。
 そして検問通過するのだが、この作業を1人でやってるので役人はもう見るからにテンパっていた。
 書類は前もって提出して、その間数日待っての検問通過になったのもコレが原因だと納得した。
 問題は書類が先に提出されたという点だ。
 つまり、人数に相違が出るのだ。
 ここを団長の口八丁手八丁で乗り切らねばならない。

 猛獣を乗せた馬車は馬車ごと役人が周囲を一周見回っただけで通過できた。
 馬や羊などの動物も問題なくほぼ未検で数の確認だけで通過出来た。
 さて、いよいよ団員検問の順番が回って来た。

「おい、人数が合わないが?
 2人程多い様だが。」
「野暮ですね、見てわかりませんか?
 検問待ちの中見初めたんですよ。
 アルバ国内でとりあえずすぐに婚姻届を出したいんですよ。
 もう1人は彼女の妹です。
 ピエロの才能があるので雇い入れたんです。
 姉妹2人きり生きるのは大変ですしね。
 結婚の条件なんですよ、妹も一緒にと。ふふふ。」
「なるほど、確かに見まごうほどに美人だな。」

 誰と誰が結婚だよ!
 ドサクサに紛れてこのスケベジジイが!
 コッチの趣味が明らかに小太りジジイ趣味のマニアックってイメージつくだろうが!
 私がイタい女って事になってるよね!
 
 怒り心頭の私を後ろでアルが両脇を押さえていた。

「しかし、本当に芸が出来るのかい?
 そのお嬢さんに。」

 私ではなくアルに引っかかってしまった様で、役人はいぶかしげにアルに上下の目線を送った。

 アクロバットくらいなら出来るとは思うが、さて。

「おう!一芸だな!
 えーっと、この剣を借りるべな。」

 アルは小道具袋から模造の大剣を取り出した。
 軽く大剣を振り、感触を確認すると、少し広い場所まで移動した。
 次の瞬間、空気が一変した。

 それは瞬時に目を奪われるくらいの鮮やかな剣舞だった。
 柔軟性、迫力、空気との同調性、美しいとかのレベルではなかった。
 こんなに完成度の高い演舞は見た事が無かった。
 これが、勇者である剣士アルバックの本当の姿。

「久々だから、やっぱり訛っちまってるな。
 かさばると思って剣は置いてきちまっただからな。」

 役人どころか団長、団員もポカンと口を開けたまま数秒が経った。

「ほ、ほらあ!役人さん。
 素晴らしい逸材でしょう。
 この才能は手放せません。
 既に我がサーカス団のメインを任せられる腕ですから。
 ね、ね、私どもが嘘をついていない事が証明されましたよね。」
「あ、ああ。
 確かに、彼女を連れての興行はサーカス団として必要か。
 了解した。
 追加で入国を許可しよう。」

 アルの剣舞で役人を骨抜きにしてしまったようだ。
 確かに、アレを見て納得しない者などいないだろう。
 しかし、私は1つだけ気になった。
 彼は剣を置いて来たと。
 勇者で剣士の彼には剣は命だったのではなきのだろうか。
 やむを得ずではなく、自ら剣を置いて来たとなると、事情があったのか。
 それとも別の意図でもあったのだろうか。

 
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