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第四章
国境越え、いざアルバ国入国へ⑩
しおりを挟む無事に入国審査をかいくぐり、アルバ国に入る事が出来た。
「いやぁ、おみそれ致しました。
このまま、うちの団員として正式に加入しませんか?
旦那のためなら、高待遇で2人とも承りますよ。」
アルの剣舞が金になると踏んだ団長が揉み手をして近寄って来た。
あさましい商人魂だ。
金を払って早急に別れよう。
「いや、断る。
ほら、少ないが国境越えの報酬だ。」
「と、とんでもございません。
良いものを見せて頂きました。
それだけで充分です。
でも、別れのキスくらいなら…。」
バチコーン‼︎
「ふごぉ!」
「ナナシ~!」
思わずアルの持っていた模造刀で団長の頭をフルスイングしてしまった。
もう、反射的でアルもさすがに止められなかった。
私達は木陰で衣装を早急に元の服装に着替えて、近くの古井戸から水を汲んでメイクを落とした。
「ほら、衣装を返します。
もう、これでお別ですよ。」
鼻血を垂らす団長に2人分の衣装を手渡した。
「なんなら持っていってもらってもよろしいのに。
この出逢いの記念に。」
「いらん!記憶ごと突き返したいわ!」
「残念ですねー。
では、お別れの記しにこれを。
この先の西に位置する宿場町の『リンドウ』という宿屋の女将ザゼッタへの紹介状です。
下手な宿屋だと、ならず者も多い国ですし、ザゼッタはおしゃべり好きなので何かとお役に立てるはずですよ。
私どもは半日かけてこれから城下街テンバへ。
隣の城下街の中央広場にテントをはり、明後日だけ1日興行してこの国を立つ支度をしますので。」
「そうか、世話になります。
それではこれで。」
「団長!楽しかったべな。
余裕あったら興行見るからな!」
アルと私はサーカスの団長と団員に手を振りその場から離れた。
この先、進んで野宿でも良かったが、そのおしゃべりな店主の話しも聞きたかった為に宿場町へと足を向けた。
「ここら辺に来ればもう、アルは詳しいんじゃないですか?」
「どうだべか。
城を出る時通った気もするけんど、バタバタしてたもんで。
それに、城から抜け出す前まであまり街に出させて貰えなかったべ。
知りたくても街の状況がよくわからなかったべ。」
アルが切なそうな表情を浮かべた。
家臣に、問題ありか。
確かにアルならば騙しやすいし利用しやすい。
古だぬきどもが私腹を肥やすにはうってつけの国王だ。
この先のアルバ国に未来は見えそうもないな。
家臣…か。
私の側には過去、出来すぎるといってもいいくらいの家臣がいた。
知的で合理的で魔族にしては、倫理観を重んじる変わり者の年老いた側近。
口うるさい時もあったが、私が誰よりも尊敬していた者だ。
彼がもし、アルの側にいたら何というのであろう。
ああ、あの頃の私は幸せだったのだな。
いくら過去を望んでも、その願いが叶うことなどない。
私の過去は未来が進むにつれ美しく、また遠くでより一層光り輝いていた。
宿場町まではさほどかからなかった。
夕食に丁度いい時間で、町中の明かりも明るく、大柄な男達が町中を闊歩していた。
屈強な狩人や鉱夫が多いようだ。
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