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第五章
国王の帰還⓷
しおりを挟む2階の奥の小さな部屋に私達は案内された。
小さな足がはみ出そうなベッドが2つ。
嵌め込みの窓、壁は意外と厚く作られていて防音が効いている。
天井はそれ程高くないが、背伸びして手が届くくらいなのでさして問題はない。
ランプの柔らかなオレンジ色の光がユラユラと揺れている。
「アル、アルは国から逃げたのですか?
そうは思いたくないのですが。」
私はベッドに腰を下ろして顎下で手を組み、周りくどい事をするのをやめて単刀直入に聞いてみた。
そろそろアルも眠気が来てしまうのでその前に、とも考えたのだ。
「んー、逃げたようで、逃げてないような。
上手く説明できね~べ。
まず、言えるのはオラ半分軟禁状態だったべよ。
んで、とりあえず城の外さ出て様子を見ようと…。」
「軟禁状態ですって⁉︎。
国王がですか?
随分と強硬手段に出てますね。」
「いやいや、だから半分だって。
理由をつけては毎回出られないようにされてただよ。
やれ、書類の山にサインやらハンコ一日中押せだの、やれ一日中衣装合わせだの。」
そうか、そこは詐欺師うんぬんのあたり。
思うに、アルには国の状況を見せないようにしていた訳だ。
確かにアルの食堂での反応に一致するか。
「その、噂の商人…詐欺師ですか?
あ、えっとアルは面識あるんですよね。
名前は…意味ないか。」
おそらく偽名を名乗ってる筈だ。
国を騙し取ろうなんて大掛かりな事を考える奴が、本名名乗るなんてバカな事はしないだろう。
「ふくよかな、派手な服の男だったべ。
どこの国のファッションだかわからねーけど、鳥の羽の付いた大きな帽子に真っ赤な提灯ブルマに白タイツ履いて。
で、指には派手な宝石を持ってた。」
「……ぅうん。」
明らかに怪しい奴だよね!そんな奴!
私なら初見で蹴飛ばして追い出してるよ!
くそッ、どうしてこうも警戒心が薄いかね。
下唇を噛んで言葉を飲み込んだ。
ここで何を言っても変わらないし、私の目的はアルをとにかく帰す事だ。
アルがこれから大変なのはわかる、わかるけど、私は…。
「とにかく、城へ戻って行動しないと。
国民は貴方だけが頼りなんです。
わかっているとは思いますが、国の決断は側近ではなく貴方がするべきなのです。
よろしくお願いします。
私に言えるのは、それだけですから。」
「うん、わかっとるべな。
状況もわかった事だし。
仲間と約束したべ。
もう、頼らずにやってみるって。
それ!」
おや、アルの瞳は悩んでるそれではなかった。
まるで、勝負に勝つ時の自信満々の勇者。
ばうぅん!
ベッドにダイブして、布団にくるまるアルを見てホッとした。
ああ、そうさ。
アルならきっと、なんとかなる。
大丈夫だ。
きっと大丈夫。
アルにはアルで考えがありそうだ。
良かった。
思いの外かたがつくのが早く済みそうだ。
ここを出たら別の国に入らなきゃ。
デルア国にはもう戻れない。
そして、アルとももうすぐで、お別れだ…。
アルはもうぐっすり眠り込んでいた。
私は嵌め込みの窓辺まで歩み寄った。
三日月が優しく辺を照らしている。
アルと別れた後はなるべく、『封印の祠』には近づかない街に行かねばなるまい。
真魔力の根源を封印したとはいえ、この肉体に宿る闇魔力の残骸は角と我が名を求める。
今なお、月の光を浴びただけで、手足のオーラが輝き出す。
私には安住の地などないのだ。
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