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第五章
国王の帰還④
しおりを挟む翌朝、ザゼッタさんに深々と御礼をし、『リンドウ』を後にして城下街テンバを目指した。
道すがら、城への戻り方についてアルに尋ねた。
「城へは正面から帰るんですか?
流石に門番はアルの顔くらい覚えているでしょうし。」
「そうだなぁ、別にもう隠れる気もないんでよ。
真正面からでも問題ない気もするが、うーむ。」
「側近の反乱で投獄もなくはないですが、敵が詐欺師となると、そう簡単に直球で来るとは思えないんです。
逆に裏から入って、偽物の不法侵入とかって事になれば、相手に有利に事が運ぶ可能性もあります。
私のオススメとしては…。」
私はアルの耳元で囁き、最後のアドバイスとして城の戻り方の方法で1番良いと思われるアイディアを授けた。
「えっ、マジだべか。
出来っかなあ。」
「城に入るまでは、その方が確実に問題になりにくい筈です。
私が側にいても、何一つ怪しまれませんよ。」
「そっか、理屈が合うべな。
よっしゃ、それで行くべな!」
素直に私の意見を聞き入れてくれたアルは意気揚々と進み、城下街テンバの中央広場まで意外と早く、昼過ぎには到着した。
「あれ、あのサーカステント、もしかしてクッキーサーカス団のだべか?
城に戻る前に見てみてえべなあ。
明日1日興行っだって言ってたども。」
「指を咥えないて下さい。
ダメですよ。
その間、国民はそれどころではない苦しみを味わっているんです。
貴方がやらなければならないのは、サーカス鑑賞ではありません。」
ああ!もう!タイミングの悪い!
団長の術がまだ解けてなかったらどうすんだよ!
私はあのおぞましい一夜を思い出して身震いした。
それにこれじゃ、まるで私が小舅でアルにお小言言ってるようじゃないか!
私はまだ若……くはないが、ジジイではないぞ!
確かに元魔王だけに、アルよりは流石に歳をくっている。
しかし、アルは歳より子供すぎる。
純粋と子供っぽさは一体だが、付き合う身にもなってくれ。
城までは後一歩。
私はアルを玉座へ座らせれば、お役御免だ。
頼むから、気持ちよく私をお前の前から去らせてくれアル。
別れが辛いのは…もう、沢山なんだよ。
アルを引っ張るようにして中央広場を抜けて城へと足を早めた。
「痛えだよ。
ナナシ、行くべさ。
ちゃんと行くから、安心してけろ。」
「本当にちゃんとしてください。
王とは名ばかりでは務まりませんよ。
その名には、国民の想いがのしかかっているのですから。」
「ナナシの方が王様みたいだべ。」
「……ご冗談。まっぴらですよ。」
何か王様だ。
そんなもの、2度となるものか。
豚に真珠、猫に小判なんだ。
この私は魔力はあっても、無能なのだから。
私は…誰よりも無能なのだから。
城下街を抜けた先の橋の向こうに、石造りの城が見えた。
確かに質素な造りで頑丈さが取り柄のようだ。
そして、あちこちに足場が組まれており、工事中を伺わせていた。
「アル、行きましょう。
覚悟を決めてください。」
「おう!王様だけに!おう!」
「……目潰し!」
「ふぎゃあ!ドSだべ!」
思わず、緊張感の無さに目潰しを食らわしてしまった。
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