しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第七章

干ばつの村攻略作戦⑥

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 月の輝きが私に繊細なエネルギーを与えてくる。
 私はどんどんと前へ歩みを進めた。
 村の中央部に止まり、月の引力を使って水脈を辿る。

 右手を真っ直ぐに伸ばして、神経を研ぎ澄ます。
 腕の周りに空気中の水分がまとわりつく。

『闇の帝王より命ずる。
 月光の輝きと大地流ゆる血脈よ
 互いに呼び寄せ、乱舞を踊れ!』

 ピシ、ピシピシピシ、ピシピシピシ。

 地面の隙間から青白い小さな光が、現れる。
 そして、逆さのオーラのように、次第に光の帯びが浮かび上がる。
 地下水に沿ってその光は、幾つもの線になり、水脈を指して行く。

 ザザ!ザザ!

「なんだ!この光は?
 聞いてないぞ!」

 ん?
 後方100メートルに見た事の無い、黒尽くめの男数人。
 刺客か?
 なるほど、条件をクリアされては困るという事か。
 
「魔法使ってる最中だ!
 逆にチャンスだ!
 行くぞ!」

 男達は剣や弓を持って私に向かって飛び掛かって来た。

 ザコが。
 私が同時に魔法を使えない、ソコら辺の魔道士とは訳が違うぞ!
 発動してるのは右手の魔力のみ。
 左手はいつでも使えるのだ。
 
 私は右手で水脈探査ながら左手を天に掲げた。

『闇の帝王を脅かす、愚かな黒羊共。
 死者の舞を踊れ!』

 ズゴゴゴ、ズゴゴゴ。
 
「死ねぇええ!」
「とりゃああ!」

 奴らが弓を放ち、剣で襲い掛かってきた。

 ズゴゴゴ!ボコッボコ。ボコボコボコボコ。

 私は右腕を気にしながら、弓をかわして、相手の剣を蹴り上げた。

「うぉあっ!」
「たーっ!」

 ズボッ!ズボッ!ズボボッ!

「舐めやがって!おい!一斉にアイツに飛びかか……!うわぁああ!」
「どうした…ひ、ひえぇ!」

 煌めく逆さオーロラの中、村の墓場から、死者が腐敗した姿で墓から這い出してきた。

 右手で水脈探査を、左手でゾンビを操るなんて曲芸に近いが、仕方あるまい。
 
「………。」
「…………。」
「………。」
「…………。」

 ゾロゾロとゾンビは現れて、刺客の周りを取り囲みだす。

「うわああ!」
「ひえええ!」
「クソ!刺しても切っても意味がない!」
 「うわぁ!に、逃げろ!
 コイツやばい!
 あんな魔道士見た事ねえ!」

 だから、魔道士じゃねえってんだよ。
 
 そんな、魔道士みたいな制約まみれの魔法なんざ、私は未だかつて使った事がない。
 生まれつきだし、魔法も湧き出る言葉を唱えるだけだ。
 特にこれといった決まりの呪文などない。
 血肉に刻まれし魔力と闇と月による影響、そしてそれを増大させる大角と代々受け継がれし名前、魔王とはそれらの総合した魔力が本来の力なのだ。

 死者たちは次々と腐った肢体を振りかざし、刺客たちに襲いかかった。
 頭にかぶりついたり、骨を喉奥に突き刺したり、自分の鎖骨で殴ったり。
 ある意味、恐ろしくもコミカルな絵面であった。

「……!」
「………!」

 死者たちは久しぶりの地上で、テンションも上がりまくりだった。
 刺客たちは混乱して逃げ回るばかりだ。
 
 ま、これでも、本来の力のごくわずかしか使ってないし、抑え気味なんだよ。
 
 そんな事を考えていると、悲劇が起こった。

 コツ!

「あ。」

 ゾンビが落とした骨につまづいた。

 げっ!バランスがっ!
 体制が!
 うぐっ!ふんぬぅ~!
 あ…まずい。

 思わず身体に力が入ってしまった。
 
 ピシピシ!ピシピシピシピシ!

 逆さオーロラがひび割れ、地割れを起こしてきた。

 プシュー!ブシュワー!

 地割れのあちらこちらから、大量の水柱が噴き上げた。

「うわぁ!今のうちに逃げろ!
 勝てるわけねー!」

 刺客達はゾンビ背負って、ずぶ濡れのまま逃げて行った。
 土壇場で力をセーブ出来ずに、ドジってしまった事に後悔して頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「やってしまった。
 マジか……ん?」
 
 水柱の中に何故か湯気の出ている水柱が東側に見える。
 これは、温泉…?
 
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