しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第七章

干ばつの村攻略作戦⑦

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「なんだこれ、びっしゃびっしゃだで!
 日照りどころか、台風でも来ただか?」
 
 翌朝、村の状況が一変していた事に、アルも村人達もざわついて村長の家の前で固まっていた。

 地割れは何とか昨晩中に修復したものの、水捌けまでは気力がもたなかった。
 身も魔力もボロボロの私はしゃがみ込んだまま村長に提言した。

「村長、この土地が潤ってるのは一時的な事です。
 畑のかくはんを早急に進めて下さい。
 作業時間が大幅に短く済むでしょう。
 そして水脈ですが、この井戸からは遠いですが、あちらの山の麓から、あのか細い木々に向かって、太いものがあるはず。
 直線上に新たなる井戸掘りを提案します。
 今なら地盤も緩く、人力でも幾つか掘れるはずです。
 等間隔で小ぶりで深い井戸掘りを。
 そして、最後に….あそこです。」
「何だべな!
 間欠泉じゃないだすか!
 この村に、温泉源なんてあっただすか?
 こりゃ、たまげただす。」
「あの温泉を使えば、サツキ菜と合わせて、この村の名物になります。
 大改革出来ますよ。
 国指導で人員を募ります。
 温泉を観光地化させましょう。」
「スゲェな。
 オラがいなくても良かったみてぇだ。」
「!」

 グイッと私はアルの耳を引っ張った。

「いて痛ぃ!痛いべ!」
「こらこら、全ての指揮権はあなたが持ってるんですよ。
 他人事みたいな言い方しないで下さい。
 財務大臣にここの温泉の情報、及びサツキ菜の専売、そしてサツキ菜の他国への輸出に関わる財政支出を提案しなければなりません。
 あなたがやらねばならない仕事です。」
「あ。うん。
 そだな。
 オラがやんねえとなんなぇんだべ。
 ごめん。
 ナナシにばっか世話かけて。
 これじゃ昔と変わんね。
 よっしゃー!
 やるべな!」
「助けがいる時は、側にいますから。
 自信を持って下さい。
 アルバ国、国王。
 まぶし…っ。」

 日光の強さに目をつむった瞬間、目の前が真っ白になった。

 バサッ。

「ナナシ!?」

 どうやら、私はその場に倒れ込んでしまったらしい。



『黙って玉座に座ってればいいのに。
 魔王は頑張りすぎなんよ。
 おかげで、私らは好き勝手できるけどぉ。
 たまには、ゆっくりリラックス、リラックス!
 みんな魔王の可愛い寝顔大好きなんよ、昔みたいにまた、可愛い寝顔見せてよね。
 ね、魔王。』

 今なら、思う存分その期待に応えられただろうに。
 あの時はその、無駄な時間の大切さがわからなかった。
 
「…シ。
 ほっぺたピンクでお姫様みたいだべ。
 まつ毛長ぇなぁ。
 唇もイチゴみてぇで柔らかそうだべ。」
「はぅあ!」

 ボカっ!

「っつぅ!ドSだべ~!」

 思わず、私の顔を覗き込むアルの顔を、寝起き様にアッパーカットしてしまった。

 誰が姫だ!誰がイチゴだ!
 私は男だっつーの!
 身体はきゃしゃだが、持ってるモノは超一流だぞ!
 元魔王だけに、ご立派様だぞ!
 ここだけは大魔王健在なんだからな!
 まあ、見せぬがな!ふん!

 どうやら村人達が倒れた私をベッドまで運んでくれたらしい。
 久々に魔力を抑えきれなかったので、ちょいメンタル的にも凹み、昼間の日光の強さに疲れも溜まっていたようだ。
 
 ツノと名前封印しても、この魔力。
 我ながらもて余る力だ。
 使い方を考えなければ。

「ナナシはもちっと太った方がいいべな。
 そうすっと、そのほっぺたもっと触り心地良くなるべ!」
 
 どふっ!

 黙って、ボディーブロー!

「げふっ!
 オラを殺す気かー?
 冗談だっての。
 だからドSは困るべな!」

 腹を押さえて椅子から転げ落ちるアルを無言のまま引っ張って、馬小屋へ向かった。
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