しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第七章

干ばつの村攻略作戦⑨

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「アル、そろそろ行きましょう。
 私達にも時間が…。」

 私が身を翻すと、倒れていた団長がゆっくり起き上がり、アルに話しかけた。

「痛っ。
 ああ、そういえばあの剣舞、見事でした。
 あの剣舞の流派はもしや、ティンクル、リンクルから学んだものでは?」
「テン、リンを知ってるだか?」
「やはりそうでしたか、知ってるも何も。
 世の中狭いですなぁ。
 幼い頃、このサーカス団に一時的におりまして。
 アクロバティックな剣術を売りにしておりました。
 当時は貴方様ほど、磨き上げられた剣術ではございませんでしたが。
 懐かしくもあり、感動させて貰いました。」
「いゃ~、どっちかっていうとテン、リンはオラの剣術の師匠だよ。
 2人同時に鍛えてくるもんで、かなりのシゴキだったべな。」

 ふむ、話しの内容からすると、昔の仲間の武闘家がこのサーカスにいたという2人。
 アル、デルアビド、ゲンナイ、ラチェット、リンクル、ディンクルが昔の仲間?
 あれ、けど勇者+6人だった気が?
 えー、勇者、錬金術師、機械技工師、武闘家2人、賢者、ん?
 よくあるパターンだと魔法使い?僧侶は無さそうだし。
 頭を斜めにして、思い出そうとしても、当時の戦いにおいて、わざわざ勇者一行の名前やら顔なんて覚える必要性を感じなかったし、アルの歯の白さのインパクトでもう全然思い出せなかった。
 前衛のあたりに賢者らしき爺さんも、言われてみれば居たような気がするのみ。

「うー、んん?」
「どうした?ナナシ。
 何悩んでるだか?」
「ええっ!な、何でもないです。
 さあ、日が暮れてしまいます。
 戻りましょう。
 団長さん、では私達も先を急ぎますのでお元気で。」

 二度とその顔見せんなよぉ!

「旦那もお元気で。
 貴方のお姿は心のアルバムにそっとしまっておきますぅ。」

 ガッ!

「はぅあっ!」
「忘れさせてやろうか!
 今すぐに!完全消去に!」

 思わず団長の前頭葉を強打チョップしてしまった。

「ナナシ!抑えるだ!
 団長さんも冗談言い過ぎだべ!
 お元気で!
 またなー!」
「ま、まあ。
 では、今度こそ本当に。
 また、いずれ逢う日まで。」

 団長さんはおでこをさすりながら、
団員の元にかけていった。

「ナナシは冷静なんだか、感情的なんだか。
 団長さんは、良い人だべ。
 団長さんがいなかったら、ここにこうしてなかったかんもしんねーべ。
 感謝しなきゃ。」
「あ、ああ、そうですね。
 わかってますよ。
 ふう。
 さあ、馬に乗って行きましょう。」

 一呼吸して、精神を整えて馬にまたがった。

 団長がいい人なのは、わかってはいるつもりだ。
 半分は我が魔力というか、魅力的魔力が問題だ。
 簡単にいえば最強フェロモンなんだろうが、こう他人を遠ざけたい時にはかなり難義だ。
 何せ効力が切れるのに数日かかる。
 ありすぎる力というのは、本当にストレスになる。
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